目的展開の考え方と方法とは

ブレイクスルー思考の中で、最も重要な目的展開の考え方と方法を示します。目的展開を行なう時のスタートは、課題としている事柄全体の中で、最も単純なひとつの仕事・作業・所作・行為からスタートします。例えば、ある食品会社では「手を洗う」でした。またある病院では、「患者さんの話を聞く」、別の総合病院では「患者さんに挨拶をする」でした。要員全員が必ずすることからスタートするのです。

単純な仕事・作業・所作・行為はそれ自身もシステムです。システムである限り「目的」があります。そこでその「目的」を考えてみましょう。先の例から言うと「手を洗う目的」「患者さんの話を聞く目的」「患者さんに挨拶をする目的」ということです。ひとり一人は違う目的を考えますので、思いついた「目的」を、各自それぞれで「○○を◎◎するため」とカードに書いていきます。

目的展開は目的の階段をひとつずつ上るのです。システムを少しずつ大きくして行く感覚で考えるのです。しかし、デカルト的思考に慣れている我々は、どうしても落とし穴に陥ってしまいます。例えば、手順展開をしてしまう、なぜそれをするかという原因探しの穴を掘ってしまう、同じ所へ帰ってきて堂々巡りになってしまう、といった落とし穴です。

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システムのユニークな着眼目的

一応落とし穴に陥らずに、システムを少しずつ大きくしながらできたとします。ひとり十枚程度書けたら、グループごとにテーブルを囲んで全員のカードをテーブルに出します。五人のグループなら約五十枚のカードを、小さなシステムから順次ならべてみます。

小さなシステム→やや小さなシステム→中くらいのシステム→やや大きなシステム→大きなシステム→組織全体のシステム→社会全体のシステム

といった感じです。

ほとんどの場合、やや大きなシステムと大きなシステムのレベルに該当する目的のカードが書かれていません。意識がここを飛び越してしまい、中くらいの目的から組織全体の目的へと飛び越してしまっていることが多いのです。実はユニークな着眼目的とは、この「やや大きなシステム」と「大きなシステム」のレベルに相当する目的の中に隠されているのです。

グループ討論をしながらこのレベルに相当する目的を探します。なかなか気がつかないことが多く、出てこない時は、私がヒントを出して手助けをしました。

ユニークな着眼目的が見つからないということは、改革の手がかりが見つからないということです。改革のための未来が見えていないということなのです。

着眼目的とは、その目的実現のためならエネルギーを感じるという目的です。着眼目的が含まれると思われるカードをいくつか発見できたら、それらの目的のカードからキーワードを見つけ、それらを使っていくつかの文章を作ります。これらの文章を整理してあるべき姿のコンセプトを創出し、近未来の実現可能な姿を描きだす一つの文章を創出します。

こうしてキーワードから実現可能な近未来を描きだし、システムマトリックスでシステム全体を確定するのです。

全体を見るシステムマトリックス

システムマトリックスとは、まずシステムの目的があり、インプットされるものがあり、処理する方法・手順と、処理する環境があり、ヒト、モノ、情報の媒体によってアウトプットされるという、プロセスの8つの要素からなる縦軸と、基本・関連・将来・管理の4つの次元からなる横軸とを設定して、それぞれの交点のセルを埋めて組み立てるもの です。

インプット →処理プロセス→アウトプット は、プロセスアプローチと同じ考え方です。

システム思考の原則は、全体との関連性、連動性を意識して、ものごとを見きわめることを促すものと日比野は言います。全体を見るためのその方法論が、システムマトリックスという表を用いることであること、そしてその表を用いて、何らかの質問をして返ってくる回答を表で処理すれば、全体をとらえることができるとします。

その際、システムをこう定義しています。

相互関連を持つ複数の要素の集まりで、何かを行なうための目的と機能を持ったもの

システムのホッパーモデルが示されています。例えば溶鉱炉は、鉄を作るという「目的」を持っています。鉄鉱石が「インプット」され、鉄が「アウトプット」され廃棄物も出されます。溶鉱炉の中では、鉄にするための「処理」が行われ、「環境」は超高温で、処理に携わる「ヒト」がいて、また作業を行なうのに必要なさまざまな「モノ」があり、作業の手順や、管理温度が指示された「情報」が使われます。これが8つの要素です。

一つのシステムは他のシステムとの連動性や関連性をもっていますので「基的な本」となる次元のシステム、他のシステムと連動し「関連」する次元のシステム、時間「将来」の次元のシステム、そしてシステムを運営する「管理」の次元のシステムがあります。

4つの次元はそれぞれに8つの要素をもっており、合計で32のセルでシステム全体が表わされます。このようにしてシステム全体を構造として把握するためのマトリックスが、システムマトリックスなのです。

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システムマトリックスで考える

システムマトリックスで品質 マネジメントシステム を考えてみると、顧客重視、顧客満足のためのシステム化された仕組みが「基本システム」であり、製品の製造またはサービスの提供のための品質を作り込む仕組みが「関連システム」、リスク及び機会への取り組みと目的・方針のブレイクダウン、目標の達成及び顧客創造が「将来システム」、そのための設計・開発、教育・訓練、組織学習、改善が各次元にあり、さまざまな管理業務、監視・測定・是正が「管理システム」ということになります。

品質マネジメントシステムの現状をシステムマトリックスの考え方で処理すれば、組織全体の品質システムの構造を見渡すことができ、中身が書けないセルや具体的でないセルは弱点として認識できます。

また、監査の場で質問によってセルを埋めていけば、組織全体のシステムをより具体的に見渡せて、システムの実態を把握することができます。

こうして見ると品質マネジメントシステムの基本システムは顧客満足のためのシステムであり、そのために関連システムの「プロセスの結果である製品」または「サービスのプロセス」をインプットするのです。将来システムは追求し目指すもの、つまり品質方針 の枠組みでの 品質目標 であり、顧客創造であることが分かります。そしてこの3つの次元を管理システムでマネジメントする、という構造なのです。

品質システムのマトリックスで分かること

品質システムのマトリックスの、基本システムと将来システムには経営判断と決断が多く含まれます。状況の理解、達成すべき意図した結果、組織の能力についての内外の課題、利害関係者のニーズ及び期待、そして顧客は誰か、どんな価値を提供するのか、どんな満足を提供するのかを決めるマーケティングのプロセスと、組織の将来ビジョンを決める組織の目的定義、リスク及び機会への取り組みのプロセスがあるからです。ここが経営方針の軸であり、マネジメントシステムの心臓であるはずです。

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