マネジメントシステムとは? 第8講座~「知力経営」の知識論はより実践的で包括的~

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「知力経営」では情報と知識とは異なるもの

「知力経営」では「情報は人間の『知』のフローとしての形態」、「知識はストックとしての形態」と定義し、情報と知識とは異なるものであるとしています。いずれも寿命があり、知識のほうが情報よりはるかに長いのです。知識は環境を変革するための総合的・体系的な概念の集合体で、経営者が一番欲するものは、知識に裏づけされ意思決定の役に立つ決定的な情報、またはその知識そのものであるはずです。

実践を共有して初めて知識として伝わる

知識は情報として記述できますが、記述されマニュアル化されたノウハウはそれを読んでも実践が伴わなければ知識とはなりません。つまりノウハウはマニュアル化され、伝える側と伝えられる側がその実践を共有して初めて、知識として伝わったと言えるのです。人と人が体験を共有して伝える知識が最高のもので、知識は人の内にあり、情報は外にあるのです。

OJTにおいて、マニュアルを読ませ、やって見せ、やらせて見て、ノウハウの習熟を図るプロセスは、この意味で最高の伝え方なのです。規格で言う文書化した情報は、マニュアルのようにストックした形態になると知識になるということで、製品仕様書のような文書化した情報は、組織の蓄積し保有する知識であることが多いと言えます。

知識の二側面「暗黙知」と「形式知」

また、西欧の伝統的な知識論は二元論でありましたが、その知識二分法に対して彼らはより包括的に考えます。知識は主観性と客観性の二側面を持つものとしてとらえ、主観的な経験や信念、価値判断の基礎の上に、客観的な論理体系からなる知識が成り立ちます。この二側面の知識を、科学哲学者のマイケル・ポランニーの定義を援用して、主観的知識を暗黙知、形態化できる客観的知識を形式知と呼びます。

暗黙知と形式知について、知力経営に沿って知識論を確認しておこうと思います。

知識変換の場を作り、変換プロセス全体を促進するマネジメント力が、知力であるとし、それをエンジンとする経営を知力経営と定義します。この経営にとって重要なのは、資源である知識を体系化する知の分類です。知識の分類を「知識フィールド」として明示されることは、戦略的に意義があるとします。

その一般的分類の第一が暗黙知と形式知の分類です。


暗黙知
パタン、身体感覚、共通感覚、イメージ、パトス(情念)などの知

明示知(形式知)
言語、コード、ロゴス(理性)などの知

暗黙知は主観的であり言語化・形態化が困難であるが、形式知は客観的で言語または形態に結晶された知です。この両者の相互作用から知識変換レベルは起きるとします。そもそも組織とは、個人のそれぞれの持つ知を共有し、増幅し、製品やサービスといった形態化した知を形成するためのものであります。

その共有と増幅が知識の創造であるわけですが、それは暗黙知と形式知の相互互換・循環プロセスを通じた、知識の量と質の発展です。

暗黙知と形式知、二つの知識間の変換

ここで問題なのは、個人のそれぞれが経験を通じて暗黙のうちに体化し蓄積した知識を、どのように表現したら伝達可能な知識になるかということです。これは暗黙知と形式知、二つの知識間の変換によって行なわれうるとしています。

  1. 暗黙知は語られにくいが、それは個人・集団・組織の各レベルで個人的経験、イメージ、あるいは熟練的技能、組織文化、風土などの形で存在する。
  2. 形式知は、言葉や構造をもって存在する。製品仕様、ドキュメント、データベース、マニュアル、化学式などの公式、コンピュータプログラムなどの形に表現できる。

この相互作用は社会的なプロセスであり、集団の場での個人同士の相互の作用が前提となります。全人格的なコミットメントと、継続的な対話や議論とによって知は創造され、社会的構成物、組織内での中間生産物となります。

その知は個人の知として創造されるとともに、集団の知として共有され、新たな概念形成の母胎となっていきます。これが創造プロセスの促進であり、競争優位性を発揮してきた企業が巧みに行ってきたプロセスであるとするのです。

まだ言語化していない暗黙の了解組織

「知力経営」で説かれている「知識論」の骨格に沿って、生業とマネジメントシステムを知識論で整理してみましょう。

生業の成立を考えると、個人が自分の内部に蓄積された「知識」によって、何か社会が価値を認めてくれそうな品物またはサービスが提供できることを思い立ち、その提供を開始することが創業です。

例えば採取してきたきのこを売る生業は、売るに足るだけの量を安定的に採取しなければなりません。それは父親などから教えられ、共に採取して体化した、そのきのこが大量に採取できる場所と採取技術が知識として前提となります。 またお菓子を作って売る生業では、お菓子の作り方は母親などが教えてくれて、一緒に作って体化した知識で、形態化したものが売る商品のお菓子です。

採取の仕方、採取したきのこの管理の仕方には工夫がいります。採取場所の決定から、採取作業、商品になるような包装、売る場所、売価、販売、売上金の計算など、採取から売上金まで仕事の順序が知識となって体化し能力となります。

お菓子作りも、原料・材料の仕入れ、作る場所、作るための道具・設備、水や燃料、作り方、作る技術、包装、売る場所、売価、販売、売上金の計算など、同じように仕入れ・製造から売上金まで仕事の順序が知識となって体化し能力となります。横糸作りです。

採取してきて売る、作って売る、この単純な形態から、売上げが伸びて組織運営によって企業化すると、人々をどのように配置し、仕事を分配し、分配した仕事をどのように組み合わせるのか、創業者が中心となって組織運営の仕組みが作られ実施されて、従事する人々の内部に知識として形成されます。これが縦糸で経営の「経」ですが、まだ言語化していない暗黙の了解組織です。

プロセスアプローチでマネジメントシステムを導入

この組織にマネジメントシステムを導入することにしたとしましょう。通常その構築では、作って運営してきた暗黙の了解組織の、組み立てた仕事のやり方をプロセスアプローチで分析し、ISOマネジメントシステムの規格と照らし合わせて、足りない部分をどうやるか決め、規格に沿って基本的なマニュアルを作ることもあります。このマニュアルは決めたやり方の基本を言語化しただけで、運用して体化しないとマネジメントシステムは組織全体の知識とはなりません。決めたことを組織全体に周知し、それに沿って日々運用し、年に二回程度の内部監査を行い、欠落や欠陥を是正してシステムを完成させていきます。それらの記録の一部は知識として蓄積され、新たな知識創造のデータとなります。

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