ISO30414とは、人的資本に関する情報を国際的な基準で整理し、社内外へ報告・開示するための規格です。人的資本経営や情報開示への関心が高まる中で、ISO30414を参考に自社の人材情報をどのように整理し、どのような指標を開示すべきか悩む企業も増えています。

当記事では、ISO30414の基本的な意味や注目される背景、11項目の情報開示内容、導入によるメリット、実務での進め方まで分かりやすく解説します。

ISO30414とは

ISO30414は、2018年に初版が公表され、2025年8月に第2版が公表された、人的資本の報告・開示に関する国際規格です。人材マネジメントに関する国際的な指針として、従業員の構成、多様性、コスト、生産性など11の中核領域が示されています。企業が人に関する情報を社内外のステークホルダーへ分かりやすく説明する際の基準となるもので、人的資本経営への関心が高まる中、情報開示の整理や比較に役立つ枠組みとして注目されています。

出典:International Organization for Standardization「ISO 30414:2025」(外部リンク)

ISO30414に注目が集まっている背景

ISO30414に注目が集まっている背景には、ESG投資の拡大や人的資本経営への関心の高まりがあります。近年は、企業価値を財務情報だけで測ることが難しくなり、人材に関する情報を開示して成長力を示す重要性が増しています。

さらに、日本では人材版伊藤レポートの公表やコーポレートガバナンス・コードの改訂により、上場企業を中心に人的資本に関する説明責任が強まりました。人的資本開示の重要性が高まる中、ISO30414は人材情報を定量的に整理し、社内外のステークホルダーへ分かりやすく伝えるための国際的な指針として活用しやすく、実務に生かしやすい枠組みとして注目されています。

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ISO30414に記載されている情報開示の11項目

ISO30414:2025では、人的資本に関する報告・開示項目が11分野に整理されています。主な内容は次の通りです。

項目概要
従業員の構成従業員構成、雇用形態、FTEなど、組織の人員構成に関する情報
多様性性別、年齢、多様性など、人材の多様性に関する情報
コスト労働力コスト、採用コスト、人材関連投資などの費用情報
生産性売上高や利益との関係、人材投資対効果などの生産性情報
健康・安全・ウェルビーイング労働災害、安全衛生、健康保持・増進、福祉に関する情報
リーダーシップ・組織文化・エンゲージメント管理職の状況、組織文化、従業員エンゲージメントなどの情報
コンプライアンス・倫理・労使関係法令順守、倫理、苦情対応、懲戒、労使関係などの情報
採用活動採用活動、採用効率、採用結果などに関する情報
異動・後継者計画社内異動、昇進、後継者育成計画などに関する情報
人材流動・離職離職率、退職動向など、人材の流出入に関する情報
スキル・能力・育成研修、能力開発、スキル向上に関する情報

ISO30414の11項目により、採用、育成、配置、定着、安全などに関する人材情報を体系的に整理し、社内外のステークホルダーへ分かりやすく説明する際の枠組みとして活用できます。

ISO30414に基づいた情報開示のメリット

ISO30414に基づいて人的資本情報を整理・開示すると、社内の人材戦略を見直しやすくなるだけでなく、投資家や求職者など社外からの評価にもつながります。ここでは、ISO30414に基づいた情報開示によって得られる主なメリットを順に解説します。

経営戦略と人事戦略の連動性の可視化

ISO30414に基づいて人的資本への投資状況を数値化すると、採用、育成、配置などの人事施策が経営目標の達成にどのように役立っているかを客観的に把握しやすくなります。感覚では見えにくかった課題や強化すべき領域も整理しやすくなり、経営戦略と人事戦略が連動しているかを確認しながら、必要に応じて施策を見直せる点がメリットです。人材への投資の優先順位も検討しやすくなり、経営判断の精度向上にもつながります。

外部ステークホルダーからの信頼獲得

ISO30414に基づいて人的資本情報を開示すると、国際的な基準に沿って人材戦略や組織の状況を示せるため、投資家や金融機関、取引先などの外部ステークホルダーから信頼を得やすくなります。定性的な説明だけでは伝わりにくい人的資本の状況も、一定の基準で整理して示すことで透明性が高まり、企業の持続可能性や成長性を客観的に伝えやすくなる点がメリットです。比較可能性も高まり、説明責任を果たしやすくなります。

採用力の向上

ISO30414に基づいて労働環境や育成方針、離職率、研修状況などを具体的に開示すると、求職者は入社後の働き方や成長機会をイメージしやすくなります。企業側も、自社の魅力を感覚ではなくデータで示せるため、他社との差別化につながります。特に、成長環境や働きやすさを重視する求職者に対して訴求しやすくなり、応募意欲や志望度の向上を期待できる点がメリットです。

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ISO30414に基づいた情報開示の進め方

ISO30414に基づいた情報開示を進めるには、開示の目的を明確にした上で、自社に必要な指標を選び、継続的にデータを管理できる体制を整えることが重要です。ここでは、実務で進める際に押さえたい基本的な流れを順に解説します。

情報開示の目的整理と指標の選定

ISO30414に基づいた情報開示では、まず何のために開示するのかを明確にすることが重要です。投資家への説明、人材戦略の見直し、採用力向上など目的によって、優先して示すべき情報は変わります。その上で、自社の業種や規模、経営課題、関係者の関心を踏まえ、開示する指標を選定します。全項目を一律に開示する必要はなく、自社にとって重要性の高い指標から整理することで、分かりやすく実効性のある情報開示につなげやすくなります。

経営課題に直結する重要KPIの特定

選定した指標の中から、経営課題の解決や戦略目標の達成に特に関わる項目を重要KPIとして定めることが大切です。たとえば、離職率、育成投資、エンゲージメント、後継者準備率などは、企業の成長や持続性に直結しやすい指標です。すべてを同じ重みで扱うのではなく、経営への影響が大きい項目に絞って重点管理することで、意思決定に活用しやすくなります。あわせて、指標同士の関係や推移も確認し、改善の優先順位を整理することが重要です。

部門横断的な連携によるデータ収集

ISO30414に基づく情報開示では、人事部門だけでなく、財務、経営企画、総務、ITなど関係部署と連携しながらデータを集めることが重要です。人的資本に関する指標は、人員構成や離職率だけでなく、労務費、研修費、安全衛生、配置など幅広い情報に関わるため、単独部署だけで正確に把握することは困難です。あらかじめ役割分担や収集方法、管理ルールを整理し、部門横断で協力できる体制を整えることで、数値の精度を高めながら効率的に情報を集約しやすくなります。

継続的にデータへアクセスできる体制の整備

ISO30414に基づく情報開示を継続するには、収集したデータを一元管理し、必要なときに最新の数値を確認できる体制を整えることが重要です。人事、財務、労務などに分散した情報を管理しやすくすることで、開示作業の効率化だけでなく、経営判断にも活用しやすくなります。あわせて、更新ルールや確認手順、アクセス権限を明確にし、定期的に数値を見直せる仕組みを整えることで、情報の正確性と継続性を保ちやすくなります。

まとめ

ISO30414は、人的資本に関する情報を国際的な基準で整理・報告・開示するための規格です。11の中核領域を通じて、人材に関する課題や強みを体系的に整理し、経営戦略と人事戦略の関係を把握しやすくなります。また、投資家や金融機関、求職者など外部ステークホルダーに対して、人的資本に関する情報を一定の枠組みで説明しやすくなります。

実務では、開示目的の整理、重要KPIの特定、部門横断でのデータ収集、継続的に活用できる管理体制の整備が重要です。人的資本経営を進める基盤として、自社に合った形で活用しましょう。

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