ISOマネジメントシステムに有効なマネージング手法 第9講座~問題の本質をひらくKJ法(1)~

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ISOプロ担当者

最終更新日: 2019年04月04日

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事故災害のように明確な結果があるものは、因果関係の糸口は比較的容易に判断ができますが、明確な結果があるわけではないが、何か問題がありそうで、その問題を浮かび上がらせたい時は、ラベル発想法(KJ法)という手法があります。例えば職場に問題がないとは言えないが、具体的な事件は発生していないので糸口が分からない、といった場合に事件に至る前に問題の所在と本質をKJ法で発見できます。この方法は川喜田二郎(KJ)文化人類学博士が、文化人類学の方法論として開発したものです。

川喜田二郎文化人類学博士は、例えばアマゾンの奥地に石器時代の生活を今も続けている種族がいれば、その村へ行きそこに住み、彼らの日々の生活を観察しながら、その生活を支えてきた彼らの文化の本質を見極め、その文化の構造を明らかにするという研究をしてこられた博士です。

この研究の方法論として開発されたのが、KJ法です。石器時代の生活の中の、観察した一つ一つの事実を記述しながら、この膨大な事実の裏にある生活を支えてきた彼らの文化の本質を、どのようにしたら明らかにできるかを熟考され、作りあげられたのがKJ法という方法論です。

現状の膨大な事実の渦はカオス=混沌です。カオスの中には、さまざまな小さな事実が混在しています。そのうちのどれが原因でどれが結果であるのか、それを見極めるために、ラベル発想法(KJ法)は開発されました。このさまざまな小さな事実を拾い出し、事実と事実の間にどんな関係があるかを見出して行く手法がKJ法です。事実を拾い出しラベルを使い、事実同士のお互いの関係を見出すために、ラベルをグループ化したり、並べ直したり、くくったり、矢線でつなげたりします。ラベルを使ってカオスの中にある問題の構造と本質を見出す手法です。

早く回答が欲しいがために、あるいは早く処理したいがために、とかく多くの事実の中からほんのわずかな事実だけを拾い出して、これが問題であるとか、これが原因であるとかしがちですが、そのようにしても本質には迫れないので、本当の問題解決にならないことが多いのです。ラベル発想法(KJ法)は可能な限りの多くの事実の中から、そこの裏にある問題の本質を見出し、真の原因を指し示し、問題の構造と本質を発見する手法なのです。
1枚のサイズがおよそ4センチ×6センチ程度のラベルと、黒色の細マーカーを用意します。

ラベル書き

ラベル発想法では、事実をラベルに書くのですが、まずテーマを決めます。だいたいこんなことについて解明したいというテーマでいいのです。悪い問題だけではありません。良い側面を探し出すテーマでもいいのです。
企業研修でラベル発想法を実施するときは、初回は「職場で見た良い風景」というテーマで、自分たちの職場の良い側面を見出すことから始めます。そして良い風景を作り出す原因となるものは、自分たちの何であったのかを解明します。
テーマを決めたらラベル書きです。参加者はそれぞれで今までに職場で見た良いと思われる風景、つまり自分以外の同僚の良いと思われる行為や行動を思い出して、その1シーンを5W1Hで1枚のラベルに記述します。できるだけそのシーンが見えてくるように、丁寧に記述します。例えば

  • 「○○さんは○○の時に○○さんに○○を○○のようにしていた。」
  • 「○○さんは○○のケースの時、必ず○○の対処を○○するまでしていた。」
  • 「○○さんは○○の状況で○○の状態を保つようにした。」
  • 「○○さんは○○の事態に直面して○○という発言をした。」

という具体的な事実としての良い行為や行動、選択、発言などです。ラベルの記述にあたっては、先入観や既成の観念を捨てて、心を虚しくし、事実だけをみてそのまま記述するようにします。「大きな声ではっきりと挨拶した。」のような一般的常識的な良い行動ではなく、具体的に目の前で起きた事実を、目で見た感じた事実として、まさに1シーンとして具体的に過去形の描写で書き取ることが重要です。他の人がそれを読んで、そこに描かれた情景がありありと思い浮かべられるような記述にすることに努めます。
したがって「○○されて嬉しかった。」のような自分の感情や主観を入れてはいけません。また、短くまとめようとしないことと、修飾語を使わないことも、事実の記述では重要です。先入観や既成観念があると、事実を見ずに目を曇らせてしまう結果になります。特に、自分に関わる事柄は見えないものです。見たくない心理が働くかららしいのですが、自分の置かれた問題の本質を見極めるために実施するのがラベル発想法なのですから。
己を虚しくし、事実だけを見ること、見たくない自分もちゃんと見て、それをラベルに記述すること、ここから始めないと、いくらラベルに書いても何も見えて来ないからです。この方法を実施するにあたっては、ここがポイントといっていいと思います。

ラベルの数は多いほどいいのですが、あまりに多いと全体に目が届かなくなりますので、せいぜい100枚程度までが目安です。ここまでの手順を整理します。

  1. テーマを決めます。
  2. テーマから気づいた小さな事実を思い出し、または見つけ出し、一つ一つ5W1Hでラベルに細マーカーで記述します。
  3. 記述は客観的に、先入観や既成観念に囚われずに、事実のみを淡々と書き取ります。
  4. 全体でおよそ100枚程度まで書きます。

ここまでが第一段階です。100枚程度のラベルが書けたら次の構造化の段階に進みます。構造化とは、事実同士のお互いの関係を見出すために、ラベルをグループ化したり、並べ直したり、くくったり、表札を書いたり、グループを色線で囲ったり、矢線でつなげたりする作業です。

構造化には模造紙とスティック糊、5色の太マーカー、さらにラベルと細マーカーが必要です。

ISO9001:2015規格4.1 組織及びその状況の理解には「組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。」とあります。内部の課題には組織風土の大きな課題があります。これに取り組む手法として、まず組織の風土そのものを明らかにしなければなりません。その方法として、ラベル発想法は極めて有効です。

この記事の著者
清水正敏(ISO マネジメントシステム構築運用コンサルタント /ISO 品質システム&食品安全システム審査員)
平成15年ISO品質システム審査員登録、平成20年からQMS 審査員としていくつかの審査機関の審査に従事。システム論と問題解決技法とを統合したマネジメント手法によるマネジメントシステム構築と運用の支援を標榜し、コンサルタント及び研修講師、審査員を勤める傍ら、取材・文筆など多方面で活躍。主な著書は『竹輪の頭はどっち?!』(メタブレーン)『ISO 審査革命』(オンブック)など。

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