ファイナンシャル・リスクマネジメント 第15講座~資本コスト~

投稿日:

ISOプロ担当者

最終更新日: 2019年04月04日

iso-pro-course_34-1

カネの現在価値と将来価値

資本コストを考えるために、カネの現在価値と将来価値を考えてみましょう。「今日の10万円」と「明日の10万円」とでは、どちらの価値が高いでしょうか。金額は同じであっても、どちらかを選ぶとなると、だれでも「今日の10万円」を選ぶのではないでしょうか。その理由としては、次の3点が考えられます。

  1. 「明日の10万円」は、明日に本当に手に入るかどうか分かりません。つまり、手に入らないかもしれないという、不確実性のリスクがあるからです。
  2. 「今日の10万円」を銀行に預ければ、明日には1日分の金利が付きます。つまり、「今日の10万円」の方が、金利分だけ「明日の10万円」より価値が高いからです。
  3. 物価の上昇があるとすると、「今日の10万円」は明日になると物価上昇分だけ購買力が低下することになります。つまり、「今日の10万円」の方が価値は高いからです。

このようにカネの価値は時間の経過で差が生まれます。これをカネの時間価値といいます。現金M0を金利rで銀行に預金した場合に、1年後に受け取る元本・利息の合計M1は、次のような式で表されます。

M1=M0(1+r)

この場合、1年後に受け取るM1は、現在手元にあるM0の将来価値(FV:Future Value)と呼びます。この例では、金利rを年利3%とすると、「今日の10万円」の1年後の将来価値は、次のような式になります。
「今日の10万円」の1年後の将来価値=100,000(1+0.03)=103,000
では「明日の10万円」、すなわち1年後に手に入る10万円の現在価値はどうなるでしょうか。金利rを年率3%のインフレ率としますと、1年後の10万円は、現在よりインフレ率3%分価値が下がっていますから、次の式になります。
1年後の10万円の現在価値M0=M1÷(1+r)=100,000÷(1+0.03)=97,087円
このように、「今日の10万円」と「明日の10万円」では、明らかに現在価値が異なるのです。ここで使われている金利(またはインフレ率)rは、「明日の10万円」から割り引いて現在価値を算出するためのものであるから、割引率=ディスカウント・レートとも呼ばれています。

ハードルレートと資本コスト

ハードルレートとは、企業が投資を行う場合に、最低限超えなければならない収益率のことです。ハードルレートは企業独自に設定しますが、一般的には企業の資本コストにリスクプレミアムを上乗せした金利となります。資本コストとは、企業が資金調達する際にかかるコストで、簡単に言えば借入金の金利や株の配当金などがこれに当たります。
資本コストとは、いわば製造業における原材料費のようなものです。原材料のコストを上回るリターンを期待できない事業は行わないのと同じように、資本コストを上回るリターンを期待できない事業は行わないということです。
リスクプレミアムとは、リスクなしに誰でもリターンを獲得できるリスク・フリー・レートを上回る収益率のことです。リスク・フリー・レートとは、具体的には金利は安いが確実である長期国債の利回りを使うのが一般的です。
つまり、企業が投資を行う場合に、資本調達にかけたコストと、調達した資金で国債を買った利回りの合計額を超える利益を生まなければ、投資の意味がない、ということなのです。この最低限を超えなければならない利益、すなわち収益率をハードルレートと呼ぶのです。
ハードルレート=資本コスト+リスクプレミアム=資本コスト+長期国債の利回り+α

資本コストの計算方法

資本には大きく分けて他人資本と自己資本があります。他人資本とは、借入金や社債のことで、自己資本には株式と内部留保があります。これらにはそれぞれ調達・確保のためのコストがかかり、このコストが資本コストです。
企業の営業活動は、この資本コストを上回る収益を上げなければコスト割れになります。営業活動が超えなければならない第1のハードルが、この資本コストであると言えます。
資本コストには、借入金や社債に関する負債コスト、配当支払いが確実である優先株コスト、普通株のコスト、内部留保のコスト、増資のコストがあります。

資本コストの計算式

  • 借入金の年間コスト=借入金×金利÷純手取額
  • 借入金の税効果考慮資本コスト=借入金の年間コスト×(1-税率)
  • 発行者利回り=(社債利息-発行差益÷償還年数)÷(発行額-発行割引額-発行諸費用)
  • 税効果を加えた社債コスト=発行者利回り×(1-税率)
  • 優先株のコスト=配当÷現在の株価
  • 普通株のコスト=第1期の配当÷現在の株価+配当の期待成長率
  • 内部留保のコスト=第1期の配当÷現在の株価+配当の期待成長率
  • 増資のコスト=第1期の配当÷増資の株価+配当の期待成長率
  • 加重平均資本コスト=負債総額÷(負債総額+株主資本総額)×負債調達金利+株主資本総額÷(負債総額+株主資本総額)×株主資本調達コスト
  • 株主資本調達コスト=リスク・フリー・レート(国債金利)+ベータ値(自社株価と市場全体の株価の、値動きの相関関係指数)×(リスク・フリー・レート+株式市場の期待収益率)
この記事の著者
清水正敏(ISO マネジメントシステム構築運用コンサルタント /ISO 品質システム&食品安全システム審査員)
平成15年ISO品質システム審査員登録、平成20年からQMS 審査員としていくつかの審査機関の審査に従事。システム論と問題解決技法とを統合したマネジメント手法によるマネジメントシステム構築と運用の支援を標榜し、コンサルタント及び研修講師、審査員を勤める傍ら、取材・文筆など多方面で活躍。主な著書は『竹輪の頭はどっち?!』(メタブレーン)『ISO 審査革命』(オンブック)など。

ISOプロでは月額4万円から御社に合わせたISO運用を実施中

ISOプロではISO各種の認証取得から運用まで幅広くサポートしております。

また、マニュアル作成など御社に合わせたムダのない運用を心がけており、既に認証を取得しているお客様においてもご提案しております。
サポート料金においても新プランを用意し、業界最安級の月額4万円からご利用いただけます。

人気記事( ISOプロ講座)

1 iso-pro-course_64-1
2 iso-pro-course_07
3 iso-pro-course_18-1
4 iso-pro-course_65-1
5 iso-pro-course_08
6 iso-pro-course_61-1
7 iso-performance_05-1
8 iso-performance_03-1

関連するおすすめ記事