• SBTは科学的根拠に基づく、企業の温室効果ガス排出削減の目標設定
  • SBTには認定制度がある
  • SBT認定の基準を緩和した中小企業向けの目標設定(SME)がある

企業に求められる社会的な役割は、時代とともに変わり、今では環境問題においても積極的に取り組むことが求められています。特に、地球温暖化による環境問題は深刻で、世界的に対策が進められています。
こうした動きの中、2015年に行われたパリ協定により、世界的な取り組みとして温室効果ガス削減に関する国際的な枠組みが決められることとなりました。SBTもその戦略の一つです。

この記事では、SBTの概要や、SBT認定を受けるために知っておくべきことについて解説します。

SBTとは?


SBT(Science Based Targets)とは、科学的な根拠に基づき、企業が温室効果ガスの排出削減のために立てる目標設定のことです。

パリ協定では、世界の平均気温上昇を、産業革命前より2℃未満もしくは1.5℃に抑えることを目標とした「2℃目標」が掲げられることとなりました。
SBTにおける目標設定は、この「2℃目標」に沿っていて、かつ5年~15年先を目標年として長期にわたって取り組むことが求められています。

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SBTが設定された背景とは?

SBTが設定された背景には、パリ協定が成立したことが挙げられます。地球温暖化の悪化を受け、2015年にパリで行われた「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議」を開催し、パリ協定に約200カ国が合意しました。

パリ協定は、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指す国際条約として、以下の2つの目標を世界共通の目標として設定しました。

  1. 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つこと。
  2. 平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力をすること。

この2つの目標を達成するために、SBTは各国や各企業が実施すべき目標設定として誕生したのです。

SBT認定の認定要件とは?

SBT認定の認定要件は、パリ協定を踏まえたうえで、以下の3点となっています。

  1. 以下どちらかの基準をもとにして、5年~15年先の温室効果ガスの排出削減⽬標を設定する
    ・「2℃を十分に下回る基準」を目標とする場合は毎年2.5%削減
    ・「1.5℃未満に抑える基準」を目標とする場合は毎年4.2%削減
  2. 対象範囲は自社だけでなく、サプライチェーン全体の温室効果ガスの削減を行う
  3. 認定後も温室効果ガス排出量や対策進捗の開示、目標の妥当性の確認を毎年行う
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SBT認定の取得の流れ

SBT認証を申請するのには、3つの手順を踏むことが必要になります。ここでは、申請における流れを解説します。

  1. Commitment Letterを事務局に提出【任意】
  2. ⽬標を設定し、申請書を事務局に提出
  3. SBT事務局による⽬標の妥当性確認・回答(有料)

1. Commitment Letterを事務局に提出【任意】

まずは、commitment LetterをSBT事務局に提出しましょう。提出すると、2年以内にSBT設定を行うという宣言をした、ということになります。
提出するには、SBTトップページに行き、commitment Letterをダウンロードします。「Set a target→GET STARTED→COMMIT内の「SBT Commitment Letter」」の順番で選択してください。
commitment Letterの記載事項は、企業名と日付・場所・署名のみとなっています。署名は組織の誰のものでも構いません。

2. ⽬標を設定し、申請書を事務局に提出

次に、目標を設定し、Target Submission Form(目的認定申請書)をSBT事務局に提出しましょう。
こちらもまずはSBTトップページに行き、Target Submission Formをダウンロードすることが必要です。「Set a target→GET STARTED→SUBMIT内の「SBTi Target Submission Form」の順番で選択してください。
Target Submission Formの記載事項は、以下の12点となっています。記入漏れがないようにしてください。

  • ⽬標の妥当性確認(次⾴参照)に関する要望
  • 基本情報(企業名、連絡先など)
  • GHGインベントリに関する質問(組織範囲など)
  • Scope1,2に関する質問
  • バイオエネルギーに関する質問
  • Scope3に関する質問
  • 算定除外に関する質問
  • GHGインベントリ情報(Scope1,2,3排出量)
  • 削減⽬標(Scope1,2,3⽬標)
  • ⽬標の再計算と進捗報告
  • 補⾜情報
  • 申請費⽤の⽀払情報

3. SBT事務局による⽬標の妥当性確認・回答(有料)

SBT認定を申請すると、SBT事務局によって、目標の妥当性が確認されます。この確認に問題がなければSBT認定を受けることができます。
妥当性確認の内容は、Target Submission Formの内容以外にも指標があるため、気になる方は、以下より詳細をご覧ください。

外部リンク:環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:国際的な取組(SBT詳細資料)

目的の妥当性確認は有料となり、USD9,500(外税)の申請費⽤が必要です。最⼤2回の⽬標評価を受けることができます。

認定された場合には、SBT事務局等のホームページにて公表されます。認定を受けたら完了ではなく、年一回、排出量と対策の進捗状況を報告・開示することが求められています。

SBT認定を取得するメリット


SBT認定することで、下のようなメリットを受けられる可能性があります。

  • ステークホルダーへのアピールが可能
  • 社内の業務体制の改革につながる

ステークホルダーへのアピールが可能

SBT認定を受ける最大のメリットは、従業員や消費者、関係各社といったステークホルダーに、自社の取り組みをアピールすることができることです。それは、社会における企業の役割の一つに、環境問題への対策を推し進めることが求められるようになっているためです。

SBT認定を受けるには、科学的根拠に基づいて、具体的な目標を設定しなければなりません。そのため、何をどのように取り組んでいくのかが非常に明確であることから、消費者にも自社の目的が伝わりやすく、ブランディングの促進や自社サービス・商品の購買につながる可能性があるでしょう。
また、昨今ではESG投資という、環境や社会に対して配慮した活動をしている企業を重視して行われる投資が積極的な動きを見せています。ステークホルダーにアピールすることで、市場における自社の立ち位置を優位なものにできる可能性があるのです。

社内の業務体制の改革につながる

温室効果ガス排出削減を進めるには、現在の業務体制のまま活動していては難しいでしょう。例えば、ITシステムを導入し、省エネの促進、働き方改革、業務効率化などの改革を進めることで温室効果ガス排出の削減につながるでしょう。
また、電気料金が高騰している今、再生可能エネルギーの電源を調達することにより、コスト削減も見込めます。
こうした動きは、社内の現状を見直していくきっかけにもなるでしょう。より効果的で生産性の高い体制をつくる動機づけに、SBT認定がなりえるのです。

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SBT認定取得済みの日本企業

2022年11月現在、日本国内でSBI認定を取得している日本企業は295社です。大手企業だけでなく中小企業においても取得を進めている企業は増えています。

企業が認定を取得している企業の一例をご紹介します。

  • 日清食品ホールディングス
  • 花王
  • 大和ハウス
  • アステラス製薬
  • YKK AP
  • 日立建機
  • 富士フィルムホールディングス

SBT認定を受けている企業の業種は非常に多種多様ですが、建設業や製造業、電気機器業において多く見られます。その背景には、物をつくる過程で大量の温室効果ガス排出する業種であるため、積極的に参加することが求められていることが挙げられます。
ただし、金融業においては、認定における基準を検討している段階のため、認定を受けることはできません。今後、認定基準が定まり認定が開始されれば、より多くの企業がSBT認定を受けることになるでしょう。

中小企業向けのガイドライン

SBT事務局は、SBT認定の基準を緩和した中小企業向けの目標設定(SME)を独自のガイドラインを設定し、中小企業の参加についても推し進めています。

中小企業向けのガイドラインを利用できる対象は、従業員500人未満で、非子会社であり独立系企業であるという3つの条件を満たす企業となっています。

SBTの条件との具体的な違いは以下になります。

出典:環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:国際的な取組(【参考①中小企業向けSBT】)」

目標年が定められており、費用も安価、目標レベルも緩和されています。
目標レベルにおけるScopeは、サプライチェーン全体の温室効果ガスの合計排出量です。Scopeは以下の3つから成り立っています。

  • Scope1(スコープ1):事業者自らの燃料の燃焼や工業プロセスに伴う排出(直接排出)
  • Scope2(スコープ2):他社から供給された電気・熱・蒸気などに伴う排出(間接排出)
  • Scope3(スコープ3):その他の排出(Scope1、2以外の間接排出)

中小企業向けのガイドラインの場合には、Scope3における目標基準値が定められていないのです。

このように、かかる負担が少なくなっているSMEであれば、中小企業も取り組みやすい条件といえるでしょう。

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まとめ

地球を守りながら、経営活動の生産性を高めるためにも有効な手段であるSBT認定。受ける企業は世界的に見ても増加傾向であり、今後も社会的に求められる取り組みといえるでしょう。
自社の取り組みを対外的にアピールできるチャンスになりえるため、しっかりと準備をしてから参加されることをおすすめします。

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