SOC2レポートとは?概要から評価基準・ISMSとの違いをわかりやすく解説

FAQSOC2レポートに関するよくある質問
「取引先からSOC2レポートの提出を求められた」「クラウドサービスを導入する際にSOC2という言葉を目にしたが、ISMSとの違いが分からない」といった悩みを持つ企業担当者は多いのではないでしょうか。
SOC2レポートとは、米国公認会計士協会(AICPA)が定めた基準に基づき、クラウドサービスなどを提供する受託会社の内部統制の有効性を、独立した公認会計士(CPA)が第三者の立場から評価・保証する報告書です。
そこでこの記事では、SOC2レポートの基本的な概念や評価対象となる5つの基準、SOC1・SOC3との違い、Type1・Type2の違い、取得するメリットをわかりやすく解説します。
目次
SOC2レポートとは?
SOC2レポートとは、業務を受託する会社(サービス組織)が、内部統制を適切に整備・運用しているかについて、独立した公認会計士(CPA)が第三者の立場から保証する報告書です。
SOC2は、米国公認会計士協会(AICPA)が定める「トラストサービス基準(Trust Services Criteria)」に基づいて実施され、特にクラウドサービス事業者の信頼性を証明する手段として世界的に活用されています。
参考:AICPA「Trust Services Criteria」(外部リンク)
主な対象となるのは、SaaS・PaaS・IaaS事業者、データセンター事業者、BPO事業者など、顧客の重要なデータやシステムを預かるサービス組織(受託会社)です。
近年では、海外企業との取引や大手企業との契約条件として、SOC2レポートの提示を求められるケースも増えています。
SOCレポートの種類(SOC1・SOC2・SOC3)
SOCレポートには、主にSOC1・SOC2・SOC3の3種類があり、それぞれ評価対象や利用目的が以下のように異なります。
| 種類 | 主な評価対象 | 利用目的 |
|---|---|---|
| SOC1 | 財務報告に関する内部統制 | 委託先の財務報告への影響を確認するため |
| SOC2 | セキュリティ・可用性など5つの基準 | クラウドサービスの信頼性を確認するため |
| SOC3 | SOC2の評価結果を一般公開向けに要約した報告書 | 一般公開用として信頼性を示すため |
このように、SOC1は財務報告に関する統制、SOC2はクラウドサービスなどの信頼性、SOC3はSOC2の結果を一般向けに公開することを目的としています。
特に、顧客から「SOCレポートの提出」を求められた場合、多くはSOC2 Type2レポートを指していることが一般的です。
SOC2レポートの2つの種類「Type1」と「Type2」

SOC2レポートには、評価対象期間の異なるType1とType2があります。
どちらも内部統制を評価する点は共通していますが、評価する範囲と信頼性の高さが以下のように異なります。
| 項目 | Type1 | Type2 |
|---|---|---|
| 評価対象 | 内部統制の設計 | 内部統制の設計と運用 |
| 評価期間 | 特定時点 | 一定期間(通常6〜12か月) |
| 確認内容 | 統制が適切に設計されているか | 統制が継続的に運用されているか |
| 信頼性 | 比較的限定的 | より高い |
| 主な用途 | 初期的な信頼性の証明 | 本格的な取引先への提示 |
Type1(特定時点での設計評価)
Type1は、ある特定の日付時点において、サービス組織(受託会社)の内部統制が適切に設計されているかを評価するレポートです。
例えば、「ある基準日時点で、アクセス管理やバックアップ体制が適切に整備されているか」といった点を確認するため、統制が実際に継続して運用されているかまでは評価対象に含まれません。
そのため、SOC2への取り組みを開始したばかりの企業やまずは内部統制の設計状況を対外的に示したい企業に適しています。
Type2(一定期間の運用評価)
Type2は、一定期間にわたって内部統制が適切に運用されていたかを評価するレポートです。一般的には、一定期間(6〜12か月程度)の運用期間を対象として監査が行われます。
Type2では統制が存在するだけでなく、実際にその統制が継続的に実施され、証跡(エビデンス)が残されているかまで確認されます。
そのため、取引先や顧客からSOC2レポートの提出を求められる場合、多くはType2レポートが期待されています。特に、海外企業との取引や大手企業との契約では、Type2の取得が事実上の要件となるケースも少なくありません。
SOC2レポートにおけるトラストサービス基準の5つの対象範囲
SOC2レポートは、AICPAが定める「トラストサービス基準(Trust Services Criteria)」に基づいて評価されます。これらの基準は、クラウドサービス事業者などが顧客の情報を安全かつ適切に取り扱っているかを確認するための重要な指標です。
| 基準 | 評価内容 |
|---|---|
| セキュリティ(Security) | 不正アクセスや情報漏えいを防ぐ統制 |
| 可用性(Availability) | サービスを継続的に利用できる体制 |
| 処理のインテグリティ(Processing Integrity) | 処理が正確かつ完全に行われること |
| 機密保持(Confidentiality) | 機密情報を適切に保護すること |
| プライバシー(Privacy) | 個人情報を適切に取り扱うこと |
5つの基準のうち、SOC2では、「セキュリティ(Security)」が必須基準となり、その他4つは必要に応じて追加されます。
セキュリティ
セキュリティは、SOC2で必須となる最も重要な基準であり、システムやデータが不正アクセス、不正利用、改ざん、情報漏えいなどの脅威から適切に保護されているかを評価します。
単にセキュリティ対策が存在するだけでなく、その対策が継続的に運用され、リスクに応じて見直されていることも重要です。
【主な評価項目】
- アクセス制御の実施
- 認証・認可の仕組み
- ネットワークセキュリティ対策
- 脆弱性管理
- インシデント対応体制
- ログの監視・分析
特にSaaS事業者では、顧客データを安全に保護するためのアクセス管理や、サイバー攻撃への対応体制が重視されます。
可用性
可用性は、システムやサービスが必要なときに安定して利用できる状態を維持しているかを評価する基準です。
クラウドサービスでは、サービス停止が顧客業務に大きな影響を与えるため、障害発生時でも迅速に復旧できる体制が求められます。
【主な評価項目】
- サーバーやネットワークの冗長化
- 定期的なバックアップの実施
- 障害復旧計画(DRP)の策定
- システム監視体制の整備
- サービスレベル目標(SLO)の設定
- 定期的な復旧訓練の実施
可用性が高いサービスは、顧客にとって「いつでも安心して利用できるサービス」として評価されやすくなります。
処理のインテグリティ
処理のインテグリティは、システムによるデータ処理が正確かつ完全であり、適切なタイミングで実行されているかを評価する基準です。
誤ったデータ処理は、顧客の業務や意思決定に大きな影響を与えるため、処理の信頼性を確保することが重要です。
【主な評価項目】
- データ入力の正確性確認
- 処理結果の完全性確認
- エラー検知・修正の仕組み
- 処理手順の標準化
- システム変更時のテスト実施
- 監査ログの保持
請求データや顧客データが正しく処理され、重複や欠損が発生しないことが確認されます。
機密保持
機密保持は、企業秘密や顧客情報などの機密情報が、許可された者以外に開示されないよう適切に保護されているかを評価する基準です。
機密情報の漏えいは、企業の信用失墜や法的リスクにつながるため、厳格な管理が求められます。
【主な評価項目】
- データの暗号化
- アクセス権限管理
- 情報の分類・ラベリング
- 機密情報の持ち出し制限
- 機密情報の廃棄手順
- 従業員への秘密保持教育
特に、顧客から預かった機密データを扱う企業では、情報へのアクセス範囲を最小限にすることが重要です。
プライバシー
プライバシーは、個人情報が適切に収集・利用・保管・削除されているかを評価する基準です。
個人情報保護法やGDPRなどの法令遵守とも関係が深く、個人情報を扱うSaaS事業者にとって特に重要な基準です。
【主な評価項目】
- 個人情報保護方針の整備
- 利用目的の明示
- 本人同意の取得
- 個人情報の保管期間管理
- 個人情報の削除手順
- 第三者提供時の管理
プライバシー基準を満たすことで、顧客は自社の個人情報が適切に取り扱われていることを確認でき、サービスへの信頼性向上につながります。
SOC2レポートとISMS認証・ISMAPとの違いは?

SOC2レポート、ISO27001(ISMS認証)、ISMAPは、いずれも情報セキュリティに関する信頼性を示す制度ですが、目的や評価方法、対象となる組織が異なります。
そのため、単純に「どれが優れているか」ではなく、自社の事業内容や取引先の要求に応じて適切な制度を選択することが重要です。
ISO27001(ISMS認証)との違い
SOC2レポートとISO27001(ISMS認証)の最も大きな違いは、「何を評価対象とするか」にあります。
ISO27001(ISMS認証)は、情報セキュリティマネジメントシステムを継続的に運用・改善するための国際規格です。
SOC2は特定のサービスや業務における内部統制の有効性が評価対象の一方、
ISO27001 は「設定した適用範囲における情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築・運用」を評価対象としている点が異なります。| 項目 | SOC2レポート | ISO27001(ISMS認証) |
|---|---|---|
| 目的 | サービスの内部統制の有効性を保証 | 組織の情報セキュリティ管理体制を認証 |
| 評価対象 | 特定のサービス・業務 | 組織全体または適用範囲 |
| 主な利用場面 | 海外企業・SaaS取引 | 国内外の一般的な取引 |
国内ではISO27001が広く採用されていますが、SaaS事業者や海外企業との取引ではSOC2を求められるケースも増えています。
ISMAPとの違い
SOC2レポートとISMAPの最も大きな違いは、「どのような利用場面を想定しているか」にあります。
ISMAPは、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度であり、日本政府がクラウドサービスを調達する際のセキュリティ水準を確保するために設けられた制度です。
SOC2は主に民間企業や海外企業との取引におけるクラウドサービスの信頼性を示す一方、ISMAPは政府情報システムで利用されるクラウドサービスの安全性を評価対象としている点が異なります。
| 項目 | SOC2レポート | ISMAP |
|---|---|---|
| 目的 | サービスの内部統制の有効性を保証 | 政府調達向けクラウドの安全性を評価 |
| 評価対象 | 特定のサービス・業務 | 政府向けクラウドサービス |
| 主な利用場面 | 海外企業・SaaS取引 | 日本政府機関との取引 |
そのため、政府機関との取引を目指すクラウド事業者にとってはISMAPが重要となり、民間企業や海外企業との取引ではSOC2が求められるケースが多くなります。
SOC2レポートを取得する3つのメリット
SOC2レポートの取得は、セキュリティ対策を証明するだけでなく、営業活動や取引先対応、社内体制の強化にもつながります。特にSaaS・PaaS・IaaS事業者にとっては、競争力を高める重要な要素となります。
対外的信頼性の向上
SOC2レポートを取得することで、第三者である監査法人から内部統制の有効性が評価・保証されるため、取引先や顧客に対して高い信頼性を示すことができます。
特に、海外企業や大手企業との取引では、SOC2レポートの有無が契約条件や取引継続の判断材料となることもあります。
セキュリティチェックシート対応の工数削減
多くの企業では、クラウドサービスを導入する際にセキュリティチェックシートへの回答を求めます。SOC2レポートを保有していると、レポートを提示することでセキュリティチェックシートへの回答を効率化できる場合があります。
その結果、営業担当者やセキュリティ担当者の負担を軽減し、商談や契約締結をスムーズに進められます。
自社のセキュリティ体制強化
SOC2監査では、内部統制の設計だけでなく、実際に適切に運用されているかも確認されます。そのため、取得準備を進める過程で、自社のセキュリティ体制を客観的に見直すことができます。
例えば、アクセス管理や脆弱性管理、インシデント対応体制などを見直すことで、セキュリティレベルの向上と継続的な内部統制の改善につながります。
SOC2レポート取得までの流れ
SOC2レポートの取得は、内部統制の整備から監査、レポート活用まで、計画的なステップを踏んで進めます。
1. 監査範囲を決定し、監査法人を選定する
まず、どのサービスや業務をSOC2の対象とするかを決定し、評価するトラストサービス基準を選定します。
その後、SOC2監査の実績や専門性を持つ監査法人を選び、監査契約を締結します。
2. ギャップ分析を行い、内部統制を整備する
現状のセキュリティ体制とSOC2の要求事項を比較し、不足している統制を洗い出します。
アクセス管理、ログ管理、インシデント対応などのルールや手順を整備し、必要な内部統制を構築します。
3. 内部統制を運用し、証跡(エビデンス)を収集する
整備した内部統制を実際に運用し、その実施記録を証跡として残します。
Type2では、一定期間にわたって統制が継続的に運用されていたことを示す証跡が必要になります。
4. SOC2監査を受ける
内部統制の整備と運用が完了したら、監査法人によるSOC2監査を受けます。
監査では、事前に提出した方針書や手順書、運用記録、ログなどの証跡をもとに、内部統制がSOC2の要求事項を満たしているかが確認されます。
Type1では特定時点における内部統制の設計状況が、Type2では一定期間にわたって内部統制が継続的に運用されていたかまで評価されます。
5. SOC2レポートを受領し、取引先へ提示・活用する
監査完了後、必要に応じて改善対応を行い、SOC2レポートが発行されます。
取得したレポートは、取引先への提出や営業活動、セキュリティチェックシート対応などに活用できます。
まとめ
この記事では、SOC2レポートの概要や評価基準、種類、SOC1・SOC3・ISMSとの違い、取得メリット、取得の流れについて解説しました。
SOC2レポートは、クラウドサービスなど特定のサービスにおける内部統制が適切に設計・運用されていることを第三者が保証する報告書であり、特にSaaS・PaaS・IaaS事業者にとって、対外的な信頼性を高める有効な手段です。
一方で、国内取引を中心に組織全体の情報セキュリティ管理体制を示したい場合にはISO27001(ISMS認証)が適していることもあり、政府機関との取引を目指す場合にはISMAPが重要になります。
自社にとってSOC2、ISO27001、ISMAPのどれが適しているかは、事業内容や取引先の要求によって異なります。判断が難しい場合は、SOC2やISMSに詳しい専門家へ相談し、最適な制度を選択することをおすすめします。
SOC2レポートに関するよくある質問
ここでは、SOC2レポートの取得を検討する際によく寄せられる質問をまとめました。
Type1とType2のどちらを用意すべき?
取引先からSOC2レポートの提出を求められた場合、多くはType2が期待されています。Type2は一定期間(一般に6〜12か月)にわたって内部統制が継続的に運用されていたことを評価するもので、海外企業や大手企業との契約では事実上の要件となるケースも少なくありません。まず設計状況を対外的に示したい段階であれば、Type1から着手する選択肢もあります。
セキュリティ以外の4基準も取得する必要はある?
必須となるのは「セキュリティ」のみです。可用性・処理のインテグリティ・機密保持・プライバシーの4基準は、提供するサービスの性質や取引先からの要求に応じて追加します。対象基準を増やすほど監査範囲が広がるため、必要性を見極めて選定することが重要です。
SOC2を取得すればISO27001(ISMS認証)は不要?
一方が他方を代替するものではありません。SOC2は特定のサービスや業務における内部統制の有効性を保証する報告書であり、ISO27001は組織の情報セキュリティマネジメントシステムを認証する制度です。評価の対象と目的が異なるため、取引先の要求に応じて選択、または併用を検討してください。
取得にはどのくらいの費用と期間がかかる?
監査法人へ支払う監査報酬に加えて、内部統制の整備・運用にかかる社内工数が発生します。金額は対象サービスの規模や選定するトラストサービス基準の数によって変動するため、複数の監査法人へ見積もりを依頼することが一般的です。期間については、Type2の場合は監査対象期間として6〜12か月程度の運用実績が必要になるため、準備開始からレポート受領まで1年以上を見込むケースがあります。
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