美容師の最終的な目標は、いつかは独立して自分のお店を持つことでしょう。それでも、開業となると、まとまった資金が必要です。ここでは、開業時にどのくらいの経費が必要なのかを紹介し、その資金を得るためにはどのような助成金や補助金があるのかを詳細に説明します。
自己資金があるほど有利なのは、家を建てるのと全く一緒です。開業資金を全額貯めるまで待つのか、美容室の開業に必要な資金を助成金や補助金で賄うのか。
美容室の開業資金は一体いくら必要なのか、どうお金を集めればいいのかなどの疑問にお答えします。
目次
美容室で開業する場合の必要経費
美容室を開業する場合、初期の必要経費はいくらくらいになるのでしょうか。開業を考えている人においては、避けては通れない問題です。一般的にはざっくりと1,000万円以上はかかるとされています。それでは、開業に必要な経費はどのようなものがあるのでしょうか。
美容室開業時の必要経費の内訳
立地によってかなり差があるのがテナント賃料です。立地が悪くても格安物件を探すのか、立地重視でテナント賃料は青天井でいいのかなど、判断に迷うところです。月々必ずかかる固定費だけに開業を考えるときに一番悩む部分です。
内装工事費
夢を叶えるための開業ですから、内装にこだわって個性を出したいところです。抑えれば抑えることもできますし、お金をふんだんにかけることもできるので、ここも悩む部分です。肝心なのはどこで妥協するかです。
設備費
カット・シャンプー用の椅子や鏡、さまざまな備品など美容室を開業する際にはたくさんのものが必要になります。すべて新品で揃えるとかなりの額になりますが、反対に中古品で経費を抑える判断も必要になります。
広告宣伝費
美容室を開業することを広く世間に広めなくてはいけません。そのための必要経費です。スタッフ募集の広告も広告宣伝費で賄います。
開業後の運転資金
開業後しばらくは、初期経費の関係から赤字経営が続きます。運転資金は赤字補填の意味合いが強いです。余裕を持って運転資金を準備したいところです。
助成金・補助金を活用しよう
美容室を開業するときにぜひとも利用したいのが助成金・補助金です。この二つは借りるものではありませんから、返済する必要はありません。
ということはできるだけ活用したほうがよいということになります。美容室の開業には1,000万円以上の経費が必要とされている中で、返済義務のない助成金や補助金は開業時の大きな力となるのは間違いありません。
一方で、助成金や補助金の申請にはタイミングがあります。助成金を例にすると、受給できるのは事業計画書の提出から通常1年後です。
そのため、開業時に助成金が必要なら、開業の1年前には提出する必要があるということです。また、さまざまな助成金があるのですが、助成金というのはあくまでも経費が発生したあとで助成されるものです。
例えば助成金のひとつにキャリアアップ助成金というのがあります。この助成金の受給には、雇用保険の加入が必須です。
スタッフを雇用したら雇用保険の加入手続きをしたら良いというものではなく、助成にもタイミングと必要な手続きがあり、手順を誤ると申請できない場合、受理してもらえない場合もあります。
このことから、助成金は行き当たりばったりで考えるのではなく、開業計画当初から、必要な助成金や補助金をピックアップして申請手順などを念入りに考えておく必要があります。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説美容室の開業で受給できる助成金
助成金は言い換えれば国からの支援金です。
国の機関としては厚生労働省が担当省庁ということになります。助成金は条件さえ満たして、適切な手続をすれば支援金を受け取ることでき、返済義務はありません。
雇用を創出するために、創業時に手厚い支援をしようというものですから、美容室を開業するときに大きな力になってくれるでしょう。
そこで、美容室開業時・開業後に受給可能なおすすめの助成金をいくつかご紹介いたします。
創業助成金
東京都限定の助成金で、創業を具体的に計画している方や創業後5年未満の中小企業者が対象となる制度です。
◆助成率と助成限度額
助成率 助成対象経費の3分の2以内
限度額 300万円(下限額100万円)
主な助成対象経費は以下の通りです。
人件費、謝金、旅費、設備費(レンタルリースに限る)、外注費等
地域雇用開発助成金
地域によっては求人の少ないところもあります。そういった地域で起業をして条件を満たした事業主に助成金を支給する制度です。雇用するスタッフ数、開業時にかかった費用などによって助成金の金額が変わり、申請書を複数枚作成する手間も必要になります。東京などの都市部以外の地域が対象で、対象地域が広いのが特徴です。また、1年ごとに最大で3回支給されるのも大きなメリットといえるでしょう。
助成金の受給額は、一般的な美容室が開業時に1,000万円以上の費用がかかり、雇用スタッフが3~4人と考えれば、60万円となりこれが最大で3回の支給を受けられます。
特定求職者雇用開発助成金
この助成金は、条件を満たした従業員を新たに雇い入れる事業者に対して厚労省から支給される助成金で最大240万円が受給できます。
特定求職者(特定就職困難者)雇用開発助成金を受給するために必要な要件は、たったの二つです。
・ハローワーク、民間職業紹介事業者等を経由し、紹介されたうえで65歳以上に達するまで継続して(助成金該当期間において2年間の雇用契約を確定させ)雇い入れられること。
・1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者として雇い入れられること。
上記二つが受給条件です。詳しくは関連記事をご確認ください。
トライアル雇用奨励金
職歴のない人、あるいは仕事をするのに必要な知識や技能のない人を雇用した事業主が受け取ることができます。
トライアル雇用助成金の支給額は、対象者1人につき月額4万円です。ただし、対象者がひとり親家庭の母親、又は父親の場合には月額5万円となります。
キャリアアップ助成金
正社員ではなく、パートアルバイトの人など、非正規雇用者のキャリアアップを促進している事業主に対して助成をするものです。
人材開発支援助成金
雇用しているスタッフに対して、職務に必要な知識や技能を習得させ、人材育成に取り組んでいる事業主に対して助成する制度。いくつかのコースに分かれており、特定訓練コース生産性要件を満たした場合、受給額が増額され最大で1000万円までの受給が可能です。
職場意識改善助成金
時間外労働等改善助成金の中にあるコースです。所定労働時間の削減や、有給休暇の取得促進を図っている事業主が受け取ることができ、支給額はコースや条件の達成度合いによって違います。職場意識改善助成金コースの場合は、全て達成すると100万円の受給が可能です。
職場定着支援助成金
職場定着支援助成金の中には、雇用管理制度助成コース/介護福祉機器助成コース/保育労働者雇用管理制度助成コース/介護労働者雇用管理制度助成コースなどがありましたが、平成30年4月より、人材確保等支援助成金に統合されました。事業主が雇用計画を労働局へ提出し、認可される必要があります。
従業員の離職率の低下を達成できれば最大100万円の受取が可能です。
両立支援等助成金
仕事と家庭の両立支援や女性の活躍に取り組む事業者を対象として支給される助成金です。
6つのコースに分かれており、最大で72万円の受給ができます。
人事評価改善等助成金
生産性の向上や、賃金アップ、離職率の低下を図る事業主が受け取ることのできる制度です。
もらえる額は50万円で更に目標を達成すると80万円追加され、最大130万円がもらえます。
美容室の開業で受給できる補助金
助成金の他に開業時に受給できる補助金について説明します。
創業・事業承継補助金
後継することが難しいあるいは廃業するリスクの高い事業者に対して、事業の承継支援を行う目的の補助金です。現経営者の高齢化に伴い、事業の継承が困難、世代交代ができないなどをきっかけに、経営革新・事業転換を図る場合もこの創業・事業承継補助金を受け取ることができます。事業所の廃止の有無にかかわらず、事業を継承していく場合に100万円以上の補助金が出ることが魅力となっています。
小規模事業者持続化補助金
数ある補助金の中で、使い道が多く活用しやすい補助金です。事業計画に基づいて売上げアップなどの取り組みが認められた場合に、50万円を上限に補助金を受けることができます。名前の通り、小規模事業者が対象となるので、雇用も5人以下の事業者が対象です。この補助金には受付締切日があり、それまでに事業計画書を管轄の商工会議所に提出しなくてはいけません。
IT導入補助金
補助金は国の予算によって決められます。既出の創業・事業承継補助金は2018年後では50億円でした。一方IT導入補助金の2018年度の予算は500億円とされています。会社の数が違うので一概にはいえないのですが、IT導入に関する補助金の高さは時代の潮流ともいえるでしょう。
平成30年度の支給上限額は50万円で、補助率は1/2までとなっています。
IT導入補助金というのは業務の効率化、新規顧客の開拓、売上げの向上などにITサービスを導入して生産性の向上を図る、購入費用・導入費用の一部を国から補助するためのものです。IT導入にはクラウドサービスなども含めて費用がかかります。コスト高にあえぐ事業主にとって、元の予算高く補助を受けやすい制度がIT導入補助金でしょう。
軽減税率対策補助金
2019年10月には消費税10%の導入が決まっています。全ての商品が税率10%になるわけではなく、軽減税率(8%)と標準税率(10%)に分けられるのです。当然ですが、事業者にとっては、取り扱う商品の税率の確認作業が必要になります。仕入れの際にもチェックが必要になりますし、一律税率よりも、作業が繁雑になるのです。顧客対応の対策や、スタッフの教育も必要になります。美容室は比較的影響が軽微かもしれませんが、事業経営をしている以上、軽減税率の問題は必ず降りかかってくるものです。
軽減税率対応のPOSレジなども販売され、軽減税率に対応するための設備投資に対しての国からの補助金の制度を、軽減税率対策補助金といいます。
補助額
レジ1台あたり20万円で複数台を導入する場合は、1事業あたり200万円が上限です。
以上のように、国は起業を後押しするためにさまざまな補助金・助成金の制度を用意しています。
しかし、補助金を受給できても申請内容の不備や、詐欺まがいの申請が遭った場合は、補助金の返還を求められる場合もあるのです。書類の作成は煩雑になりがちなので間違いのないように記載し、事前に専門家の目を通すなどしてからきちんと申請するようにしましょう。
まとめ
美容室を開業する場合には、多額の資金が必要になります。開業資金の半分は自前で用意する、というのが鉄則のように語られていますが、手持ち資金がなくても助成金や補助金を活用することで開業までこぎつけることも可能です。
申請書類は煩雑になり、難しい語句なども出てきて手間がかかりますが、メリットは必ずあります。面倒だとは思わず、助成金や補助金の申請はできるだけするようにしましょう。