地域雇用開発助成金は雇用機会の少ない地域において、雇用の場を増やすことに貢献した事業主に支給されます。個人事業主にとって、雇用の際にかかる経費は頭の痛い問題です。対象となる地域に事業所があれば、地域雇用開発助成金を利用することによって従業員を雇い入れるときの負担が軽減できます。しかし、活用するためには満たすべき要件や雇用条件があります。受給を確実にするために知っておきたい、地域雇用開発助成金の詳細について解説していきましょう。

地域雇用開発助成金の目的

地域雇用開発助成金は、首都圏への一極化を抑制し、地域における雇用状況の改善を目的としています。少子高齢化により国内の人口が減少の一途をたどる中、労働者は仕事を求めて地方から都市部へと流出していきます。地元で働く気持ちがあっても、求人が少ない地域では求職者の希望は叶いません。一方で資金力のない中小企業では、人手不足であっても雇用が思い通りに進まず、地方の経済は沈下するばかりです。
地域雇用開発助成金を活用することにより、事業主は雇用にかかる費用を軽減しながら人手不足を補い、地域雇用に貢献できます。求職者は地元で生活しながら、新しい仕事に就くことが可能となり、双方にとって大きなメリットがあります。

地域雇用開発助成金の対象者

  • 雇入れ(移転求職者の場合は完了日)時点で、地域に居住する求職者である
  • ハローワーク、地方運輸局などの紹介である
  • 雇入れ当初から、雇用保険の一般被保険者となる
  • 本助成金受給後も継続して雇用される見込みがある
  • 雇入れ後、設置・整備を行った事業所で就労する
  • 過去3年間に、事業主の事業所で就労したり職場適応訓練を受けたりしたことがない
  • 過去1年間に、資本金や組織的に関連のある事業所に雇用されていたことがない
  • 事業主と3親等以内の親族でない
  • 公の施設の管理を行うために雇い入れられた求職者でない
  • 就労支援A型事業所の暫定支給決定を受けた利用者でない

なお、最後の項目にある就労継続支援A型事業所とは、障害者の雇用を専門的に行う事業所を指します。

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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

地域雇用開発助成金を受給できる条件

<1回目の地域雇用開発助成金の受給条件>
・同意雇用開発促進地域・過疎等雇用改善地域または特定有人国境離島地域内の事業所における施設・設備の設置・整備及び、地域に居住する求職者等の雇い入れに関する計画書を労働局長に提出すること。
・事業の用に供する施設や設備を計画期間内(※2)に設置・整備(※3)すること
※2 計画日から完了日までの間(最長18か月間)
※3 助成対象となる設置・整備費用は1点あたり20万円以上で、合計額が300万円以上である場合に限る
・地域に居住する求職者等を計画期間内(※2)に常時雇用する雇用保険一般被保険者(※4)としてハローワーク等の紹介により3人(創業の場合は2人)以上雇い入れること
※4 短期雇用特例被保険者および日雇い労働被保険者を除く。以下同じ。
・事業所における労働者(雇用保険一般被保険者)数の増加
設置・設備事業所において完了日における雇用保険一般被保険者数が、計画日の前日における数に比べ3人(創業の場合は2人)以上増加していること

<2・3回目の地域雇用開発助成金の受給条件>
・雇用保険一般被保険者数の維持
雇用保険一般被保険者について、第2回目の支給基準日(完了日の1年後の日)および第3回目の支給基準日(完了日の2年後の日)における数が、完了日における数を下回っていないことが必要です。
・支給対象者数の維持
前述の要件を満たして雇い入れられた対象労働者(以下「支給対象者」という)について、第2回目および第3回の支給基準日における数が、完了日における数を下回っていないことが必要です。
・支給対象者の職場定着
完了日以降に事業主都合以外の理由による離職者が発生した場合、一定の範囲で補充が認められますが、第2回目および第3回の支給基準日までの離職者の数は、完了日時点の支給対象者の1/2以下、または3人以下である必要があります。

地域雇用開発助成金の支給額

助成金は、計画日から完了日までの間に要した事業所の設置・整備費用と増加した支給対象者の数に応じて、1年ごとに最大3回支給されます。「雇用開発助成金共通の要件」に定めている生産性要件を満たした事業主に対しては、支給が増額されます。創業する事業主の場合は、優遇措置がとられます。

また、1回目の支給時に限り、中小企業事業主の場合は、1回目の支給額の1/2の金額が上乗せされます。創業の場合は、さらに1回目の支給額の1/2の金額が上乗せされます。
具体的な支給金額は以下の通りです。

設置・整備費用 支給対象者の増加数(( )内は創業の場合のみ適用)
3(2)~4人 5~9人 10~19人 20人以上
300万円以上
1,000万円未満
48万円/60万円
(50万円)
76万円/96万円
(80万円)
143万円/180万円
(150万円)
285万円/360万円
(300万円)
1,000万円以上
3,000万円未満
57万円/72万円
(60万円)
95万円/120万円
(100万円)
190万円/240万円
(200万円)
380万円/480万円
(400万円)
3,000万円以上
5,000万円未満
86万円/108万円
(90万円)
143万円/180万円
(150万円)
285万円/360万円
(300万円)
570万円/720万円
(600万円)
5,000万円以上 114万円/144万円
(120万円)
190万円/240万円
(200万円)
380万円/480万円
(400万円)
760万円/960万円
(800万円)

地域雇用開発助成金の申請方法

  1. 「計画書」を管轄労働局長に提出する。創業の場合には併せて「創業計画認定申請書」の提出が必要です。
  2. 最長18か月の計画期間内に地域の雇用拡大のために必要な300万円以上の事業所の設置・整備を実施
  3. 要件を満たす労働者を雇い入れ、従業員を3人(創業の場合は2人)以上増加させる
  4. 「完了届(第1回支給申請書)」を管轄労働局長に提出する
  5. 1年間被保険者数の維持、対象労働者数の維持、対象労働者の定着を行う
  6. 「第2回支給申請書」を管轄労働局長に提出する
  7. 1年間被保険者数の維持、対象労働者数の維持、対象労働者の定着を行う
  8. 「第3回支給申請書」を管轄労働局長に提出する

提出する計画書の書き方と注意点

計画書を作成するにあたり、

  • 申請事業主の全ての事業所数
  • 資本の額または出資の総額
  • 常時雇用する労働者の数

などを正確に記載する必要があります。
助成金に関わる設置・整備を行う主な施設・設備の具体的内容やそれぞれに要する費用を記入する欄がありますが、対象となる経費には、工事費・購入費・賃借費などがあります。それぞれの契約については支払額が、20万円以上であることが必要です。

商品や賃貸用施設など、収入に関わるものは経費として認められません。また、事業主の自宅は対象外となります。
計画書の内容に変更などがあった場合は、変更届または取下げ届の提出が必要です、実施内容と計画に相違があった場合には、受給できなくなる可能性があります。

まとめ

地域雇用開発助成金は創業支援や事業の拡大をサポートするものではなく、あくまで地域雇用の状況改善を目的とする制度です。本来の目的を良く理解し、要項を把握していないと300万円以上を設備投資した後で受給できないという結果にもなりかねません。制度を正しく活用すれば、地域の活性化に貢献すると同時に、負担を減らしながら従業員を増員できます。対象となる地域、労働者を確認し、しっかりとした計画を立てて受給申請に臨みましょう。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。