景気が上向きになっていると一時期言われていましたが、中小企業にとっては厳しい状況が続いています。会社の利益を出すために従業員が残業を行うことで、支払う給料が増え収支のバランスが取れずに従業員を解雇してしまうのもよくある話です。
しかし従業員に支払う給料が出せなくて解雇を考えているのであれば、「雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)」の利用を考えてみてはいかがでしょうか。
雇用調整助成金は、経済上の理由で事業規模を小さくするため一時的に雇用調整を行い社員の雇用を維持するために使用することができるので、社員の解雇を回避できることもあります。今回は 雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)についてお話していきます。
目次
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)とは
不景気のあおりを受け、取引先が倒産したり受発注の減少であったり、自社の業績が悪化してしまったとき、経費削減のために人件費を見直すことはよくあることです。そしてその結果、泣く泣く社員を解雇してしまうという結果になることもあります。
雇用調整助成金は業績が悪化したときに社員を解雇するのではなく、一時的に休業や出向させて雇用状態を維持したいときに申請し受給できる助成金です。中小企業の事業主が申請する場合は「中小企業緊急雇用安定助成金」になります。
支給の対象は?
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)の支給対象は、前年の同時期と比較して業績が悪化してしまい、社員の雇用調整を行う必要がある会社が給付対象です。しかし前年の同時期よりも業績が悪化していているすべての会社というわけではなく、雇用保険を適応している事業所という条件があります。
中小企業緊急雇用安定助成金は対象が中小企業のみですが、雇用調整助成金の場合は大企業などが該当します。さらに細かく見ていくと給付対象となるのは雇用調整対象となる社員のみですが、こちらも継続して雇用保険に加入していて6ヵ月以上勤務している社員となるので、会社に所属している社員全員が対象になるわけではありません。 今まで雇用保険を適応していなくて、申請直前に雇用保険に加入しても対象外となるので注意しましょう。
支給期間と受給額はどのくらい?
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金には受給期間があります。受給期間は「事業主が指定した1年」となっており、翌年も続けて申請を行うことはできませんが、1年間の休止期間を取ってから再度申請を行うことができます。
気になる受給額ですが、中小企業の場合は次のようになります。大企業の場合の助成率は2分の1と、中小企業よりも金額が低くなりますが、どちらも平成30年8月1日現在で上限額は8,250円です。
- 休業の場合:助成率は休業手当の3分の2の支給になります。
- 教育訓練:1人1日あたり賃金負担額の3分の2+1,200円となります。
- 出 向:負担額の3分の2となります。
休業と教育訓練の場合の期間は1年で最大100日、休止期間を入れると3年間で最大150日分、出向の場合は最長で1年間の出向期間中となっています。
実際に雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)が支給されるには?
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)が給付されるには、雇用主に対する条件や、給付対象となる措置方法が決められています。ここでは給付対象になる条件や手続き方法などについて詳しくみていきましょう。
受給対象になる雇用主とは?
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)は、どんな会社でも申請できるというものではなく、次の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の適応事業所であること
- 対象者は6ヵ月以上継続雇用されている雇用保険の被保険者であること
- 直近3カ月の売上や生産量の平均が前年度の同期と比較して10%以上減少している。
- 直近3ヵ月以内の派遣社員・雇用保険被保険者の数が前年の同期と比較して増加していない。
人員の増加ですが、中小企業の場合は全体の10%かつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えて6人以上増加していなければ申請可能です。そして中小企業の範囲で悩む人がいますが、中小企業の分類は資本金や出資の総額、または常用雇用している社員の数で決まります。
- 小売業(飲食店含):資本金・出資総額5,000万円以下で、常時雇用する社員は50人以下
- サービス業:資本金・出資総額5,000万円以下で、常時雇用する社員は100人以下
- 卸売業:資本金・出資総額1億円以下で、常時雇用する社員は100人以下
- その他業種:資本金・出資総額3億円以下で、常時雇用する社員は300人以下
受給の対象となる措置はなに?
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)の給付対象となる措置は、「休業」「教育訓練」「出向」の3つです。
休業
休業とは文字通り社員を休ませることで、工場などで行われることが多く、生産量が減ることにより工場を休ませるために行うものなどがあります。
教育訓練
教育訓練は休業させずに、社員に対して教育訓練を行う場合です。ただしこの教育訓練内容は、実際の業務に関係のあるものでなければならず、訓練日は仕事をしないということが決められています。
出向
出向は自社内で働くのではなく、グループ会社や関連事業所へ出向して働くことを言います。グループ会社などはいきなり事業所全体が規模を縮小することが少ないのでこの方法をとる企業は多いです。
ただし雇用調整助成金を支給される場合は、「3ヵ月以上1年以内」に元の事業所に戻ることが条件になっています。
受給するための手続き方法は?
雇用調整助成金は措置方法によって手続き方法が変わりますが、どの方法も実施する2週間前に事業所を管轄している労働局かハローワークに書類を提出します。それぞれどのような流れになるのかを見てきます。
- 休業や教育訓練の場合は、判定の基礎期間を1~3ヵ月で決め、選択した期間ごとで休業などの実施計画届を作成します。
- 支給対象期間の前日までに「休業等実施計画書」と必要書類を添え、管轄の労働局へ提出します。初回申請の場合は「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」と、「雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書」も添え2週間前に提出します。
- 助成金の申請は支給期間ごとに行います。支給対象期間終了日の翌日から2ヵ月以内に「支給申請書」に必要書類を添え、管轄の労働局かハローワークへ申請します。
出向の場合出向した日から起算し6ヵ月を1期として計算し、6ヵ月ごとに雇用調整助成金の申請を行います。
- 出向開始2週間前までに必要書類と次の3つの書類を添付し、管轄の労働局に申請します
- 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
- 雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書
- 出向実施計画書
- 最初の6カ月が経過したら2ヵ月以内に「支給申請書」と必要書類を、管轄の労働局かハローワークに申請します。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説まとめ
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)は、事業所の経営が悪化して、社員の解雇を考えるときに利用すべき助成金です。雇用保険に加入していること、対象となる社員が雇用保険被保険者かつ6ヵ月以上の勤務実績があるなど、細かな条件が多いです。しかし雇用調整をすることで解雇せずに済むのであれば、積極的に利用すべきです。
雇用調整で教育訓練や出向を行うことで、社員のスキルアップをさせる時間も取ることがでるというメリットもあるので、利用すべきタイミングを見計らって苦しい時期を乗り切りましょう。