新型コロナウイルスの影響で事業縮小あるいは休業を余儀なくされた事業者の方も多いのではないでしょうか。企業が休業を決定するときに、心配になるのが従業員への給与の支払いです。休業したとしても企業は従業員に対して休業手当を支払う必要が出てきますので、このまま何ヶ月も通常営業を再開できなくなってしまっては、資金繰りが難しくなってしまいますよね。
そこで活用されるのが、雇用調整助成金です。この雇用調整助成金はもともと事業の縮小などによって従業員の解雇を余儀なくされた事業者に対して支払われる助成金ですが、今回の新型コロナウイルスによる経済対策の一つとして、特例が出されることになりました。今回はこの雇用調整助成金の特例について解説していきたいと思います。
目次
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、事業縮小などによって従業員を休業させた際にその休業手当の一部を厚生労働省から支給されるというものです。この助成金は1日あたり最大8,330円の休業手当を支給してもらうことが可能になります。以下ではこの雇用調整助成金の詳細について解説していきたいと思います。
雇用調整助成金の助成額
雇用調整助成金は、1日あたり8,330円を上限とする休業手当の9/10の金額を、厚生労働省に対して申請を行うことで助成してもらうことが可能です。これは給与に対する9./10ではなく、企業が従業員に対して支払った休業手当の9/10ため注意が必要です。
なお、休業手当は直近3ヶ月の賃金の平均金額の少なくとも60%を支払う必要があります。例えば、直近3ヶ月で20万円、25万円、24万円の給与を支払った従業員に対しては、
直近3ヶ月の給与の平均額・・・(200,000+250,000+240,000)÷3 = 230,000
仮に20日間の出勤があったとして、1日あたりの給与は230,000÷20で11,500円となります。このため、企業が1日あたり11,500の60%である6,900円を休業手当として支払う必要があります。
雇用調整助成金はこの6,900円の90%を保証してくれますから、1日あたり6,210円、最大100日間有効になるため、仮に100日間休業したとすると62万1千円を受給することが可能となります。
ただし、雇用調整助成金は冒頭でも解説した通り8,330円が上限となります。――つまり、休業手当の額が9,163円以上となる場合は1日あたり8,330円が支給上限となります。
また、この助成金は休業を行った一人あたりに支払われるものであるため、仮に10名の休業を行った場合は1日で最大83,300円、100日間の休業を行った場合には833万円を合計で申請することが可能です。
助成金の受給対象となる企業は
助成金の受給対象となる企業は、従業員を雇用しており、雇用保険に加入し、保険料を納めている(滞納をしていない)事業者となります。また、直近で助成金の不正受給を働いていたり、半年以内に会社都合による従業員を解雇していたり、長時間労働や残業代の未払いなどの労働関連法令の違反を行ったりしている企業は対象外となりますので、注意が必要です。
また、本助成金は申請するにあたって、業績の低下が条件となっています。つまり、業績が低下していないにも関わらず自粛を行っただけの事業者は対象外となります。
今回の特例措置の内容
今回、雇用調整助成金の特例によって、以下のような事項が2020年の7月23日まで適用されます。
休業計画届けの事後提出が可能に
通常この雇用調整助成金の申請には事前の届け出を行ってから休業を実行する必要がありましたが、5月31日までに提出すれば申請することができるようになっています。このため、すでに休業をしてしまっている事業者であっても申請を行うことが可能になっています。
生産性要件の緩和
従来までの雇用調整助成金は、生産性が3ヶ月で10%以上低下した場合に申請することができる助成金でしたが、特例によって1ヶ月で5%低下にまで緩和しています。
雇用指標の撤廃
雇用調整助成金は、事業縮小などによる所謂リストラから従業員を守る目的で設置されている制度であるため、雇用を増やしていると(体力があるとみなされるため)申請することができませんでしたが、特例によってこの指標が撤廃されました。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説まとめ
今回は、新型コロナウイルスで特例が出された雇用調整助成金についてご紹介してきました。この他にも助成金は複数ありますので、新型コロナウイルスによる打撃を受けて、事業継続が難しいという事業者はこういった助成金を活用することを検討してみてはいかがでしょうか?