新型コロナウイルスの流行により、事業継続が危うくなった企業や事業転換を迫られた企業が多くありました。そうした企業が事業を継続するための取り組みを支援するために産業雇用安定助成金が制定されました。
しかし、2023年に入ると社会がコロナ禍に対応できるようになり、徐々に経済活動は安定してきています。そのため、産業雇用安定助成金も大きく制度が変更されています。
そこで、この記事では産業雇用安定助成金の概要や各コースの対象、助成金額をわかりやすく解説します。
目次
産業雇用安定助成金とは
産業雇用安定助成金は、自社の人材を「出向」させることで雇用維持や人材育成を行う事業主を支援する助成金制度です。
令和6年の時点で、産業雇用安定助成金には以下の3つのコースがあります。
- スキルアップ支援コース
- 産業連携人材確保等支援コース
- 事業再構築支援コース
のちほど3つのコースの対象となる要件や助成金額などを解説します。また、雇用維持支援コースは令和5年10月1日限りで廃止となりました。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)とは
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)とは、スキルアップを目的に在籍型出向を行い、復帰した際に賃金を出向前よりも5%以上向上させた事業主に対して、当該事業主が負担した出向中の賃金の一部を助成する制度です。
なお、このコースの対象になるには、出向元企業と出向先企業が出向契約を結ぶことが前提です。出向契約のもとに労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、出向先企業に一定期間勤務することを在籍型出向と呼びます。
対象となる「出向」
出向には、いくつかの要件を満たすことが必要です。主な要件を以下にまとめています。
- 労働者のスキルアップを目的として実施すること
- 出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことが前提であること
- 労働者の出向復帰後6か月間の各月の賃金を出向前賃金と比較していずれも5%以上上昇させること
対象となる事業主
対象となる出向元事業主にも10個の要件があります。ここでは、そのうちの3つを抜粋します。
- 出向元事業所が雇用保険適用事業所であること
- 労働者のスキルアップにより企業活動を促進し雇用機会等の増大を目的として出向を実施すること
- 職業能力開発推進法第12条に規定する職業能力開発推進者を選任していること
対象となる労働者
対象となる労働者は、以下の2つの要件を満たす労働者です。
- 出向元事業主に雇用される雇用保険被保険者
- 「出向実施計画(変更)届」(様式第1号)に記載のある労働者
ただし、有期契約労働者や出向開始日の前日時点において、出向元事業主に被保険者として雇用された期間が6か月未満の労働者などは対象外となっています。
助成金額
助成金額は、以下のとおりです。
助成金額 | 中小企業 | 中小企業以外 |
---|---|---|
助成率 | 2/3 | 1/2 |
助成額 | 以下のうち、低い額に助成率をかけた額(最長1年)
|
|
上限額 | 8,490円/1人1日当たり (1事業所1年度あたり1,000万円まで/1人あたり1回まで) |
スキルアップ支援コースの詳細や最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)とは
産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)とは、景気の変動や産業構造の変化などの理由で事業活動を一時的に縮小された事業主が、生産性向上のための取り組みや人材の雇用を支援する制度です。
なお、令和5年11月29日に創設された新しい制度で、ものづくり補助金についても申請・採択されることが必要です。
対象となる事業主
対象となる事業主は10個の要件を満たす必要があります。ここでは、4つの要件を抜粋しています。
- 令和5年11月29日以降に、中小企業庁の実施する「ものづくり補助金」の事業計画書の申請を行い、採択および交付決定を受けていること
- 生産量(額)、販売量(額)または売上高等事業活動を示す指標がものづくり補助金の事業計画書の申請日の属する月の前々々月から前月の3か月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること
- 対象労働者に対して1年間(助成対象期間)に350万円以上の賃金を支払っていること。(ただし、助成金の支給については、支払われた賃金が175万円以上の支給対象期に限る)
- 雇入れ日前6か月から本助成金の支給申請までの期間に雇用する労働者を解雇等していないこと
対象となる労働者
対象となる労働者は、以下の2つの要件に該当することが必要です。
1.以下のいずれかに該当する労働者
- 専門的な知識や技術が必要となる企画・立案、指導の業務に従事する者
- 部下を指揮や監督する業務に従事する者であって、係長相当職以上の者
2.1年間に350万円以上の賃金が支払われる労働者
助成金額
助成金額は、以下のとおりです。
中小企業 | 中小企業以外 | |
---|---|---|
助成額 | 250万円/人 (125万円×2期) |
180万円/人 (90万円×2期) |
助成対象期間 | 1年 |
1事業主当たり、支給は5人までです。雇用から6か月を支給対象期の第1期、次の6か月を第2期として、2回に分けて支給されます。
産業連携人材確保等支援コースの詳細や最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)」
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)とは
産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)とは、新型コロナウイルス感染症の影響などで事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、事業再構築を行うために、必要な人材の雇用を支援する制度です。
令和5年4月1日に創設された新しい制度で、「事業再構築補助金」に申請して交付決定を受けていることが必要です。
対象となる事業主
対象となる事業主は以下の8つの要件を満たす必要があります。ここでは、4つの要件を抜粋しています。
- 令和5年4月1日以降に中小企業庁の実施する「事業再構築補助金」の応募書類を提出し、交付決定を受けていること
- 対象労働者に対して1年間(助成対象期間)に350万円以上の賃金を支払っていること。(ただし、助成金の支給については、支払われた賃金が175万円以上の支給対象期に限る)
- 雇入れ日前6か月から本助成金の支給申請までの期間(以下「基準期間」という)に雇用する労働者を解雇等していないこと
- 基準期間に倒産や解雇など特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が対象労働者の雇入れ日における被保険者数の6%を超えていないこと
対象となる労働者
対象となる労働者は、以下の2つの要件に該当することが必要です。
1.以下のいずれかに該当する労働者
- 専門的な知識や技術が必要となる企画・立案、指導の業務に従事する者
- 部下を指揮や監督する業務に従事する者であって、係長相当職以上の者
2.1年間に350万円以上の賃金が支払われる労働者
助成金額
助成金額は、対象労働者に支払われた賃金の一部に相当する額として、6か月ごとに支給されます。助成金額は、以下のとおりです。
中小企業 | 中小企業以外 | |
---|---|---|
助成額 | 280万円/人 | 200万円/人 |
助成対象期間 | 1年 | |
支給方法 | 140万円×2期 | 100万円×2期 |
事業再構築支援コースの詳細や最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」
まとめ
この記事では、産業雇用安定助成金の各コースをわかりやすく解説しました。
産業雇用安定助成金は、他社へ出向させることで雇用調整や人材のスキルアップにつなげる施策を支援する助成金です。活用することで、幅広い施策を実施しやすくなります。
ただし、令和4年~5年にかけて大幅にコース編成されたため、活用を検討している企業は支給要件や助成額について再度確認するようにしましょう。
特に、はじめて助成金を利用する場合には、プロのコンサルティング業者に申請サポートを依頼するとスムーズな手続きにつながります。まずプロのコンサルティング業者が行う無料診断を受けてみてはいかがでしょうか。