社会全体で高齢化が進行し、人材確保が難しくなっている企業が増えています。そこで、国は高齢者の継続雇用もしくは再雇用を推進しており、助成制度を準備しています。

高齢者を再雇用することで、経験やノウハウが豊富な即戦力となる人材を確保できるため、特に中小企業やスタートアップ企業は検討することがおすすめです。

この記事では、高齢者を雇用するメリットや定年後の高齢者の再雇用に活用できる助成金を解説します。

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定年後の高齢者を再雇用するメリット

ここでは、人材雇用において定年後の高齢者を再雇用するメリットを解説します。

豊富な経験やノウハウを活用できる

多くの高齢者は、これまで長年の勤務で培った経験やノウハウ、技術、人脈などを備えています。すぐに業務を開始できることから、即戦力の確保につながります。

さらに、新入社員や経験が浅い社員を教育してきた経験がある高齢者の場合には、社内研修を実施して若い世代にノウハウや技術を継承することも可能です。

従業員の労働意欲向上につながる

高齢者と一緒に働くことで、若い社員が長く働くイメージを掴むことが可能です。不安点や不明点の相談先として機能する可能性もあります。

働き続ける不安が払しょくできれば、従業員の労働意欲が向上し、職場全体の雰囲気も良くなるでしょう。

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高齢者の再雇用に活用できる「高年齢再就職給付金」とは

60 歳以上 65 歳未満の被保険者が働く場合に活用できる制度に、高年齢雇用継続給付金があります。
高年齢再就職給付金は助成金とは異なり、企業ではなく対象者本人に給付金が支給されます。そのため、企業が直接活用できる制度ではありませんが、高齢者にかける賃金を下げつつ、雇用継続が可能になるというメリットがあります。

高年齢雇用継続給付金には「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があり、定年後の高齢者の再雇用に活用できるのは「高年齢再就職給付金」です。

「高年齢再就職給付金」とは、60歳以降に退職し、失業保険(基本手当)を受け取っている人が、再就職した際に支払われる給付金です。

支給要件

高年齢再就職給付金の主な支給要件をまとめました。

  • 60歳以上で失業保険を受給中に再就職したこと
  • 再就職後の賃金が、60歳時点の賃金の75%未満になっていること
  • 基本手当を100日以上残して再就職したこと
  • 60歳到達前の離職時点で、雇用保険に5年以上加入していたこと
  • 再就職手当を受給しないこと

給付金額

給付金額は、賃金の低下率に応じて以下の計算式によって求めます。

「支給額=支給対象月に支払われた賃金×15%(2025年4月以降は10%)」

給付金が支払われる支給期間は、再就職日の前日時点における基本手当の支給残日数により、以下のように異なります。

基本手当の支給残日数 支給期間
200日以上 再就職した日の翌日から2年が経過する日が属する月まで
100日以上200日未満 再就職した日の翌日から1年が経過する日が属する月まで

ただし、2025年度以降、給付金は段階的に廃止されることが決定しています。2025年4月からは新たに60歳になる人の給付率が10%に縮小されるため、高齢者の再雇用において企業の人件費増加が見込まれています。

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高齢者雇用に活用できる「65歳超雇用推進助成金」とは

高年齢再就職給付金は廃止される予定ですが、高齢者の雇用を積極的に推進するために、厚生労働省は「65歳超雇用推進助成金」を用意しています。

65歳超雇用推進助成金とは、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換などに取り組む事業主に対して助成する制度です。
高年齢再就職給付金が労働者本人に支給されるものであるのに対し、「65歳超雇用推進助成金」は事業主に支給されます。

ここでは、65歳超雇用推進助成金の3つのコースについて解説します。

65歳超継続雇用促進コース

65歳超継続雇用促進コースとは、以下のいずれかを実施した事業主を助成するコースです。

  1. 65歳以上への定年の引上げ
  2. 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入
  3. 定年の定めの廃止
  4. 他者による継続雇用制度の導入

助成額は、実施内容や引上げ幅などによって以下の表のように異なります。

1.65歳以上への定年を引き上げた場合の助成額
60歳以上被保険者数 65歳 66~69歳 70歳以上
5歳未満の引上げ 5歳以上の引上げ
1~3人 15万円 20万円 30万円 30万円
4~6人 20万円 25万円 50万円 50万円
7~9人 25万円 30万円 85万円 85万円
10人以上 30万円 35万円 105万円 105万円
2.定年の定めを廃止した場合の助成額
60歳以上被保険者数 助成額
1~3人 40万円
4~6人 80万円
7~9人 120万円
10人以上 160万円
3.希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度を導入した場合の助成額
60歳以上被保険者数 65歳 66~69歳 70歳以上
5歳未満の引上げ 5歳以上の引上げ
1~3人 15万円 20万円 30万円 30万円
4~6人 20万円 25万円 50万円 50万円
7~9人 25万円 30万円 85万円 85万円
10人以上 30万円 35万円 105万円 105万円
4.他社による継続雇用制度の導入
措置内容 66~69歳 70歳以上
助成率 他社における制度の導入にかかった経費の1/2
上限額 10万円 15万円

主な支給要件は、以下の3つです。

  • 制度を規定した際に経費を要した事業主であること
  • 制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること
  • 高年齢者雇用等推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であること

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースとは、以下のような高年齢者向けの雇用管理制度の整備を実施した事業主に対して一部経費の助成を行うコースです。

  • 高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善
  • 高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入または改善
  • 高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善
  • 高年齢者が意欲と能力を発揮して働くために必要な知識を付与するための研修制度の導入または改善
  • 専門職制度など、高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入または改善
  • 法定外の健康管理制度(胃がん検診等や生活習慣病予防検診)の導入

助成額は、支給対象経費の金額に以下の表の助成率を乗じた額が支給されます。

中小企業 中小企業以外
60% 45%

主な支給要件は、以下の4つです。

  • 「雇用管理整備計画書」を(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出し、認定を受けること。
  • 「雇用管理整備計画書」に基づいて高年齢者雇用管理整備の措置を実施し、実施状況および雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備すること。
  • 支給申請日の前日において、1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者であって講じられた高年齢者雇用管理整備の措置により、雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月以上継続して雇用されている者が1人以上いること
  • 雇用管理整備の措置の実施に要した支給対象経費を支給申請日までに支払ったこと

高年齢者無期雇用転換コース

高年齢者無期雇用転換コースとは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた(実施期間:2~3年)事業主を助成するコースです。

助成額は、労働者1人につき、以下の金額が支給されます。

中小企業 中小企業以外
30万円 23万円

※1支給申請年度1適用事業所あたり10人まで

主な支給要件は、以下の3つです。

  • 有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定していること。
    ※実施時期が明示され、かつ有期契約労働者として締結された契約に係る期間が通算5年以内の者を無期雇用労働者に転換するものに限る。
  • 上記の制度の規定に基づき、雇用する50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換すること。
    ※ 無期雇用転換日において64歳以上の者はこの助成金の対象労働者にならない。
  • 実際に転換した労働者を、転換後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6か月分の賃金を支給すること。
    ※ 勤務日数が11日未満の月は除く。

下記にて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
【令和6年度】65歳超雇用推進助成金とは?各コースを徹底解説

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まとめ

この記事では、高齢者の再雇用に活用できる助成金について解説しました。

高齢者を雇用することで、ノウハウや技術に優れた即戦力を確保できます。再雇用に活用できる高年齢再就職給付金は廃止されることが決まっていますが、高齢者雇用に関する体制を整備することで65歳超雇用推進助成金を受給できる可能性があります。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。