助成金とは、厚生労働省から働き方改革の推進や従業員の雇用維持を目的とした社内施策にかかる費用の一部を支援する制度です。
原則、返済不要であることから申請する企業は多くありますが、その際、会社都合退職者がいる場合には助成金を受給できない場合があることはご存じでしょうか。

そこで、この記事では「助成金」と「会社都合退職者」との関係性や、会社都合退職者が出た場合の不支給期間などをまとめて解説します。

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会社都合退職とは

会社都合退職とは、一般的に「解雇」(いわゆる「クビ」)と呼ばれるものです。何らかの事情により従業員の雇用継続ができなくなったときに、会社側から従業員との契約解除することを会社都合退職といいます。

具体的にはどのような場合に会社都合退職となるのでしょうか。具体的な例をチェックしていきましょう。

  • 経営悪化による人員整理
  • 経営破綻(倒産、破産など)
  • 退職勧奨(会社から自己都合退職を促す)

また以下のような理由では、自己申告であっても経緯によっては会社都合による解雇事案に発展するケースがあるため、注意が必要です。

  • いじめ・嫌がらせ・ハラスメントによる退職
  • 過度な残業(月45時間以上)による疲労からの退職
  • 会社の3分の1を超える人の離職
  • 給与・待遇、労働時間、業務内容などの労働条件が契約内容と異なる
  • 給与の減額
  • 会社の法令違反
  • 給与・残業代未払い

自己都合退職との違い

自己都合退職とは、労働者自らの意思で退職することです。例えば、キャリアアップのためや結婚・出産のため、介護のため、定年などの理由で離職する場合が挙げられます。
(結婚・出産、介護において職場でハラスメントがあった場合には、会社都合退職になる可能性もあります。)

自己都合退職が発生しても、助成金申請に直接的な影響はありません。ただし「対象者が対象となる期間中に退職する」「雇用保険被保険者がいなくなる」などの場合には、助成金の支給要件を満たせなくなる可能性があります。

「特定受給資格者」とは

特定受給資格者とは、「再就職の準備をする時間的余裕がないまま、離職を余儀された者」のことです。特定受給資格者になると、通常時よりも手厚い失業保険が給付されます。

例えば、倒産やリストラ、退職勧奨による解雇などが該当します。また会社の法令違反やハラスメント行為があった場合なども特定受給資格者となる場合もあるため、注意が必要です。

特定受給資格者が発生した場合、発生する時期と助成金の種類によっては受給できなくなる可能性があります。

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会社都合退職者が出ると、助成金を受け取れない理由

会社都合退職が発生した場合、助成金を受給できなくなる場合があります。

これは、助成金が、雇用保険事業の一つである労働者の生活の安定や雇用維持を目的として助成される制度であり、会社都合退職を容認することが助成金制度の趣旨に添わない場合があるためです。

会社都合退職により助成金の不支給になることを知っている企業の中には、助成金を受け取るために従業員の退職を自己都合退職になるように事実を改ざんしてしまう企業もあります。しかし、事実を改ざんして助成金を申請すると、不正受給に該当します。

助成金の不正受給が発覚した場合は、5年間助成金を受給できません。また取引先や消費者からの信頼を失い、事業が成り立たなくなる可能性があるため、絶対にやめましょう。

受給できない代表的な助成金の種類

以下に、会社都合退職者が出ると、受給できなくなる代表的な助成金についてまとめました。

  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • 人材開発支援助成金
  • 業務改善助成金
  • 産業雇用安定助成金
  • 中途採用等支援助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 地域雇用開発助成金

各助成金の事業主要件や不支給要件に記載されているため、会社都合退職者を出した場合には必ず確認しましょう。

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会社都合退職の具体的な防止策

ここまで解説してきたように、自己都合退職であっても、その背景によっては会社都合退職になることがあります。また、問題への対応を誤った結果によって会社都合退職が発生することもよくあります。

そのため、会社都合退職を防止するには、労働基準法に準拠する形で労務環境を整備し、適切に運用することが最も有効です。

例えば、セクハラやパワハラなどの問題が発生し、従業員が上長や相談窓口などに相談したものの、適切な対応を取らなかった(もしくは誤った対応をした)ために会社都合退職につながるケースなどが挙げられます。

この場合には、情報共有の手段や問題解決に向けたプロセスの確立などの体制を構築・運用することが必要です。

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会社都合退職者が出ても、助成金を受給する方法

会社都合退職者が出ても、助成金を受給する方法はあります。それは、各助成金の要件に記載されている不支給期間を確認し、申請時期を変更することです。

例えば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)であれば、支給要件に以下のように記載されています。


正社員化した日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させていない事業主であること。

つまり、不支給要件に該当する期間が経過したあとであれば、助成金を受給することは可能です。

ただし、助成金を受給したいと考えてから数か月間程度経過するころには、現状が変化してしまう可能性もあります。また正社員転換の時期を後ろ倒しすることで、対象者が不利益を被り、トラブルにつながることもあり得るでしょう。

そのため、助成金を活用したいタイミングで申請できるように、常日頃から労働環境を整備することが大切です。

まとめ

この記事では、会社都合退職により、助成金が申請できない理由や対策について解説しました。

助成金は、経営者が儲けるためのものではなく、労働者の生活の安定や労働環境の改善のために存在するものです。会社都合退職や特定受給資格者を出さないためにも、日ごろから労務環境を整備し、働きやすい職場づくりを目指しましょう。

この他にも「不支給となる要件を知りたい」や「自社に適した助成金を知りたい」といった場合には、プロのコンサルタントに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。