厚生労働省から働き方改革の推進や従業員の健康維持を目的とした社内施策の一部を助成してもらうことができる助成金は、半年以内に会社都合退職者がいる場合に受け取ることができません。
なぜ会社都合退職者がいると助成金を受け取れなくなってしまうのでしょうか?また、既に受け取ってしまった助成金がある場合はどのようにすれば良いのでしょうか。
今回は助成金と退職について解説していきたいと思います。
会社都合退職とは
会社都合退職とは、一般的に「解雇」あるいは「クビ」と呼ばれるものです。何らかの会社側の事情で従業員の雇用継続ができなくなった時に従業員との契約解除を申し出ることを会社都合退職と言います。
具体的にはどのような場合に会社都合退職となるのでしょうか。具体的な例をチェックしていきましょう。
- 経営悪化による人員整理
- 経営破綻(倒産、破産など)
- 退職勧奨(会社から自己都合退職を促す)
- 給与・残業代未払い
このような場合は会社都合退職と見なされます。また、以下のようなケースでは自己申告であっても会社都合の退職となります。
- いじめ・嫌がらせ・ハラスメントによる退職
- 過度な残業(月45時間以上)による疲労からの退職
- 会社の3分の1を超える人の離職
- 給与・待遇、労働時間、業務内容などの労働条件が契約内容と異なる
- 給与の減額
- 会社の法令違反
会社都合退職があると助成金が受け取れない
労働者の生活の安定や健康維持、あるいは労働時間の短縮など政府が掲げる目標を奨励するために会社に人事制度改革や労務環境改善を促すことを目的として、国がこれらに必要な一部の費用を助成してくれる助成金というものがあります。
会社は期間に定めのない従業員(正社員)を自由に解雇することができる一方で、6ヶ月以内に会社都合退職があるとこの助成金を受け取ることができません。
これは、助成金がそもそも労働者の生活の安定や健康維持を目的に助成されるものであるため、会社都合退職というのは助成金の意にそぐわないためです。
この事実を知っている場合、雇用者は助成金を受け取りたいがために従業員の退職にあたって自己都合退職にするように促したりすることもあるようですが、このことが発覚してしまうと最近ニュースでも話題になっている助成金の不正受給となります。上記でも照会した「退職勧奨」に当たるためですね。
助成金の不正受給が発覚した場合は、3年間助成金の受給ができなくなります。また、助成金の申請と同時に解雇が発覚した場合などは助成金を返還しなければならないケースもあります。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説自己都合退職をしてもらいたい場合
経営者諸君としては、解雇をしなければならないケースに直面した時に、なんとか自己都合退職をしてもらえないかと考えることでしょう。
例えば事業所が移転したタイミングで「自宅から通うことが困難になったため仕事をやめたい」と従業員から言われてしまった場合はどうすれば良いでしょうか。
この場合、助成金を受給するために会社側はなんとかして労働者の生活を守る責任があります。――例えば、引っ越しにかかる費用を補助したりするなどしてなんとか会社に留まってもらう方法を考える必要があります。
また、残業時間が長い会社などは、どのような場合であっても会社都合退職となってしまいます。従業員がハローワークにいって失業保険を申請する時にタイムカードを提出されてしまうと、これも会社都合退職と見なされてしまいます。ルールを守らない会社は基本的に助成金を受け取ることができない仕組みになっているのです。これも労働者を守る抑止力となっているのです。
どうしても自己都合退職をしてもらいたい場合でも、小手先ではどうにもならないようになっています。そのためおとなしくルールに則った上で助成金の申請期間をずらすなり、労働基準法に準拠する形で労務環境を整理してから助成金を申請するといった対応を取るようにしましょう。
まとめ
繰り返しになりますが助成金は、経営者が儲けるためのものではなく労働者の生活の安定や労働環境の改善のために存在するものです。
「従業員の暮らしを少しでもよくしてあげたい。今度子供が生まれるらしいから少し休ませてあげたい――。でも、うちの会社にそんな余裕は…。」そんな時に活用するものです。
決して「経営者の皆さんいつもお疲れ様です。これでおいしいものでも食べて日頃の疲れを飛ばしてください。」などというものではありません。
この点を十分に理解して助成金というものを活用しましょう!


