助成金を受給するにあたっては、必ず「この企業は不正受給ではないか」という審査が入ります。——では、具体的にどのような審査が入るのでしょうか。今回は、助成金で審査されるポイントについてご紹介していきたいと思います。

そもそもなぜ審査が必要なのか?

そもそもなぜ助成金の受給にあたって審査が必要なのでしょうか。——それは、不正受給があってはならないからです。少し話が横道にそれますが、助成金の財源は「雇用保険料」です。雇用保険は民間の企業が運営するような保険のように営利目的ではありませんから、保険に加入している企業に還元されて然るべきです。

しかし一部の悪質な組織はこの助成金を不正受給しようとするのです。雇用保険を支払っている皆様からすれば、許せないですよね? そのような不正がまかり通っていては、信用をなくしてしまいますから、「不正受給ではないか?」ということがかなり厳しくチェックされるのです。

どのようなことがチェックされるの?

それでは、不正受給を防ぐためにどのようなことがチェックされるのでしょうか。具体的な支給要件と照らし合わせながらご紹介していきます。

1. 雇用保険に加入しているか

これは当たり前ですね。雇用保険に加入していない事業主に助成金の支給なんかしてしまった日には、大問題です。保険とは、「皆でお金を出し合って、困っている人を救済する。そのかわり、私が困った時は助けてね。」というものですから、何も支払っていない人を救済するなんて愚の骨頂。例えば皆さんが支払っている税金でカリフォルニア州の噴水建造費に利用されていれば、憤りを感じますよね? そういうことです。

2. 賃金が最低賃金を下回っていないか

助成金を受給するためには、労働関連の法律を遵守しなければなりません。実は多くの事業者がこの労働関連の法律について知らない間に違反してしまっているのです。特に最低賃金が下回っているということはよくある話です。——というのも、残業代や深夜労働に対しては割増賃金を支払う必要があるのですが、この割増賃金を計算せずに支払っている事業主が非常に多く、結果として最低賃金を下回っているということがよくあるのです。

例えば東京都の最低時給は985円ですが、時間外労働をさせる場合は1.25倍の割増賃金を支払う必要があります。また、深夜労働(22時〜5時の労働)に対しても1.25倍の賃金を支払わなければならないのです。

このため、例えば月給25万円の人が76時間残業をした時、東京都の最低賃金を下回ることになります。もちろん残業する時間が22時を回っている場合、さらに割増賃金を支払う必要がありますから、例えば60時間くらいで最低賃金を下回ります。——これは、みなし労働制を採用している会社でも同じです。

助成金を申請する場合は今一度最低賃金を下回っていないかどうかを確認するようにしましょう。

3. 労働時間などが正しく管理されているか

次に、書類に不正がないかどうかについてもチェックされることになります。例えば出勤簿。よく打刻させずに労働させたり営業時間終了後にタイムカードを切らせてサービス残業をさせたりする企業がありますが、こういった明確な労働基準法違反は見逃されません。

場合によっては実地調査もされることになります。例えば従業員に「この時間に打刻していますが、本当ですか?」という質問を行うこともあります。ここで従業員の発言と記録に矛盾があった場合、徹底的に調べ上げられることになりますので、言い逃れができなくなるのです。

4. 会社都合退職者がいないか

厚生労働省の管轄する助成金は、労働者の働く環境をより良いものにするという要素が強いため、会社都合——つまり解雇をする企業には助成金が支給されません。半年以内に会社都合退職者がいる場合は申請ができないのです。

ここで気をつけて置かなければならないのが、労働基準法違反や社内でイジメやセクハラがあった時、仮に労働者からの申し出で退職したとしても会社都合退職とみなされる場合があるということです。労働関連の法律は、皮肉なことに遵守する企業のほうが少ない日本ですが、法律は守られて然るべきもの。

例えば度重なる残業代未払いによって、ある従業員が自己都合退職をした場合、これは会社都合退職として処理される可能性があるのです。広告代理店などではよく見られるケースですね。

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不正は確実に発覚する

——さて、この他にもチェックされるポイントは様々ですが、労働局は助成金を申請してきた企業に対して徹底的にチェックを入れます。この時に、少しでもおかしな点があれば「もしかしたら不正受給かもしれない」と疑われて徹底的にマークされることになります。

一度マークされたらあらゆる手段を使ってチェックをされることになります。「この書類を提出してください」と急に言われることもあるでしょうし、いきなり実地調査が入ることもあるでしょう。不正がある場合はどんどん化けの皮が剥がされていってしまうのです。

もし不正受給があれば、それ相応の罰則もありますし、労働基準法の違反であるなら懲役刑や罰金となる場合も。さらに不名誉なことに「この会社は不正受給をしました」として会社名が晒されてしまいます。——そうなれば取引先などからも信用を損ねることになってしまうでしょう。

助成金を申請するなら一切の不正はない状態で、クリーンな会社経営を心がけましょう。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。