キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の企業内キャリアアップなどを促進するための助成金で、例えばパートタイマーやアルバイトを無期契約する際に受け取れる助成金です。
アルバイトや派遣労働者を雇用していれば、利用できる人気の助成金ですが、キャリアアップ助成金を申請するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
そこで、この記事ではキャリアアップ助成金の中でも正社員化コースを中心に概要や申請方法をわかりやすく解説します。
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進する事業者を支援する制度です。
キャリアアップ助成金は正社員化支援と処遇改善支援といった目的の違いによって、以下のコースに分けられています。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
そのうち、正社員化コースは非正規雇用労働者を正社員として登用した際に受給できるコースです。
キャリアアップ助成金(全コース共通)の対象事業主
以下のすべてに該当する事業主が受給対象です。
- 雇用保険適用事業所の事業主
- 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
- 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
- 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできる事業主
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象となる労働者
以下のすべてに該当する労働者が受給対象です。
・有期雇用労働者または無期雇用労働者(以下のいずれかに該当する労働者)
- 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6ヶ月以上受けて雇用される有期雇用労働者か無期雇用労働者
- 6ヶ月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者
- 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(人材育成支援コース)によるものに限る。)を受講し、修了した有期雇用労働者
かつ、支給対象事業主に賃金の額又は計算方法が、正規雇用労働者等と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6ヶ月以上受けて雇用される者(転換日までの雇用期間が通算6ヶ月に満たない場合は、雇い入れから転換日までの適用を受けて雇用される者) - 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、就労経験のない職に就くことを希望する者であって、紹介予定派遣により2ヶ月以上6ヶ月未満の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者
- 正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。(正社員求人に応募し正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと。)
- 正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の役員であった者でないこと。
- 正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること。
- 支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること。
- 支給申請日において、有期契約労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること。
- 正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること。
- 支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと。
- 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給額
正社員化コースの助成金額は以下のとおりです。なお、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20名です。
企業規模 | 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 |
---|---|---|
中小企業 | 57万円 | 28万5,000円 |
大企業 | 42万7,500円 | <21万3,750円/td> |
キャリアアップ助成金(正社員化コース)申請の流れ
キャリアアップ助成金の申請の流れは、正社員化コースとその処遇改善に関するコースとで異なっています。ここでは、正社員化コースの申請フローを紹介します。
1.キャリアアップ計画の作成・提出
申請計画書は、以下の厚生労働省の公式HPからダウンロードできます。
申請様式のダウンロードページ(キャリアアップ助成金)
ここでは、キャリアアップ管理者(社内で従業員のキャリアップに対する責任を持つ人)の取り決め、キャリアアップ対象者の取り決め、KPI(施策の目標)の設定を行います。
要するに「誰を正社員化して、誰がそれを管理して、なんのために正社員化するのか」というキャリアアップ計画書に書き起こす必要があります。
2.就業規則の改定
次に、正社員転換規定が就業規則に記載されていない場合はこの改定を行う必要があります。
さて、就業規則は自由に書き換えては良いものではなく、労働基準法90条によると「労働組合あるいは労働者の過半数以上を代表する労働者の意見を聞かなければならない」と定められています。
勝手に変更してしまうと労働関連法令の違反となり助成金を受給できなくなってしまいますので、注意してください。
3.正社員転換
正社員への転換は、就業規則に基づいたものでなくてはなりません。改定した就業規則あるいはすでに定められている就業規則に基づいて正社員への契約転換を行います。
ここでの注意点は、正社員転換後、対象労働者の賃金が転換前と比べて3%以上アップしている必要があることです。
4.転換後6ヶ月間の賃金支払
次に6ヶ月間の給与を支払います。「6ヶ月間雇用する」ではなく「6ヶ月間の給与支払い」なので注意してください。
例えば6月1日に正社員転換して、給与が翌月15日支払いの場合、12月1日ではなく、12月15日までが対象期間ということになります。
5.助成金申請
6ヶ月間の賃金の支払いが完了したら、完了から起算して2ヶ月以内に助成金の申請を行いましょう。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説キャリアアップ助成金(処遇改善に関するコース)申請の流れ
ここでは、処遇改善に関する賃金規定等改定コースや賞与・退職金制度導入コースなどの申請の流れを解説します。
1.計画書の作成
厚生労働省の公式HPから計画書をダウンロードし、必要事項を記入して提出してください。
複数のコースを申請する場合は、同じ書類内に書き込むことも可能です。
2.計画の実行
計画書に記入した計画を実行してください。必要に応じて就業規則の改定も行う必要がありますので、注意してください。
3.取組後6ヶ月の賃金支払
正社員化コース同様に6ヶ月間の給与を支給してください。6ヶ月の雇用ではなく6ヶ月賃金の支払いですので注意しましょう。
4.給与支払い完了後2ヶ月以内の支給申請
支給申請を忘れると受給できないため、給与の支払いが完了翌日に申請しましょう。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説
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助成金を受給するためのコツ
助成金は、厚生労働省が定める受給要件を満たせば受給できますが、受給要件を満たしていなければ受給することができません。そのため、ここでは注意点をご紹介します。
正社員変換後、3%以上の賃金増額が必要
この注意点は正社員化コースのみ該当します。
正社員に変換前6ヶ月間の給与と変換後6ヶ月間の給与を比較し、変換後の賃金が3%以上増額していなければなりません。
賃金には、基本給と諸手当を含む総額を指します。ただし、賞与は含まれませんので注意が必要です。
申請期間を守る
すべての助成金にいえることですが、申請期間を必ず守りましょう。
キャリアアップ助成金は、変換後6ヶ月後から2ヶ月以内に申請しなければならないため、スケジュール管理できていないと、申請期間を過ぎてしまう可能性があります。
また、申請には支給申請書だけでなく出勤簿や賃金台帳、就業規則などさまざまな書類が必要です。申請期間前から準備しておきましょう。
法令順守する
受給要件を満たしていても、法令順守できていないと受給できなくなってしまいます。
例えば、所定労働以外の時間外労働が3ヶ月連続45時間以上になったことで、従業員が自己都合退職をした後に、従業員の告発によって会社都合の退職となったとします。助成金の申請期間中に、この従業員がハローワークに行って失業保険を申請した場合、労働基準法違反が発覚し、不正受給と見なされ助成金の返還や罰金などのペナルティが課せられることになります。
このため、助成金を受給する企業は事前に労働関連法案を遵守しておく必要があります。
まとめ
助成金の受給は不正受給をしないようにさえ気をつけていれば受給できます。
ただし、就業規則の改定や計画書の作成、その他労働基準法の遵守などを確認することは大変な作業です。これらを解決してくれるのが、社労士です。社労士は法律で唯一助成金の申請代行をすることが認められている士業です。
このため、多くの企業がキャリアアップ助成金を申請するのに、プロの助成金コンサルティング業者に相談されます。まずは無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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