助成金は支給要件を満たせば100%もらうことができるものですが、逆を言えば支給要件を満たしていなければ受給することはできません。今回は、助成金を受給することができなくなる要件についていくつかのパターンをご紹介していきたいと思います。

助成金を申請する前にチェックしてみてください!

1. 3年以内に不正受給があった場合

助成金は労働環境の改善や雇用促進のためにあるものであり、事業者の私腹を肥やすためにあるものではありません。助成金の不正受給のペナルティとして、不正受給から3年間は助成金の申請ができないというものがあります。

労働局は不正受給者リストを管理していますので、不正受給を行ったことがある場合は確実に受給することができません。これを隠してさらに不正受給を行おうとした場合は、詐欺未遂などで書類送検をされる可能性もありますので、絶対に不正受給は行わないようにしましょう。

2.労働保険を納入していない場合

助成金の財源となるのは事業者が支払っている労働保険料です。このため、労働保険料の支払いもれがあったりする場合は助成金を受給することができないのです。

例えばですが、皆さんが新宿区に在住しているとして、新宿区が皆さんの住民税を使って渋谷区に公園を建設するためにお金を出していたら不公平だと思いますよね? 保険料というのは、加入者に還元されて然るべきなのです。

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3.労働関連法令の違反がある場合

助成金を受給できない理由として最も多いのが、このパターンです。労働関連法令とは、労働基準法を始めとする法律のことですが、事業者は知らないうちに労働基準法等に違反していることがあります。

例えばですが、以下のようなことは労働基準法違反になります。

  • 週40時間以上の労働をさせた上で割増賃金を支払っていない
  • みなし労働制を採用しているからといって、追加残業代を支払わない
  • 深夜労働(22時〜翌5時)に対して割増賃金を支払っていない
  • 時給換算した時に各自治体が定める最低賃金を下回っている
  • 必要な休憩時間を与えていない

広告代理店や飲食業界にはよく見られますが、残業代を支払っておらず、しかも最低時給を下回っているということはよくある話です。

例えば東京都で月給25万円の人に75時間以上の残業をさせると最低賃金を下回るということはご存知でしたか? また、週6日(48時間)働かせると、8時間は残業として計算し、割増賃金を支払わなければならないということをご存知でしたか?

こういった労働基準法は、労働者も事業主も意外と知らないことが多く、違反している企業は非常に多いのです。こういったことが発覚すると、労働基準法違反として是正勧告がされることになりますが、悪質とみなされた場合には一発書類送検ということも考えられます。——要するに、懲役刑や罰金刑を食らうことになるのです。

もちろん労働関連法令に違反がある場合は助成金を受給することもできませんので、これを隠蔽して申請しようものなら不正受給にもなります。注意しましょう。

4.性風俗関連営業を行っている場合

これにはキャバクラやホストクラブも含まれます。ただ、ガールズバーなどで風営法を遵守し、接待業務を行っていいない場合は助成金の受給が認められることもあります。

当然審査が入ることになりますし、何かしらの違反がそこで発覚すれば是正勧告、もしくは一発アウトで書類送検されることも考えられますので、注意してください。

5.暴力団関係事業主

暴力団関係の事業主に対して、助成金は支払われません。また、反社会的勢力と関係があるのに、これを隠して申請しようとすると不正受給とみなされて詐欺罪等で書類送検される可能性もあります。

6.支給申請日、支給決定日の時点で倒産している場合

助成金は「労働者を守る」という要素が強く、「経営者や事業主のために」という要素は弱いです。つまり、倒産している場合は労働者のためになりませんので助成金は支給されません。

助成金は申請してから支給されるまである程度時間がかかりますが、この間に事業を畳んだりしてしまうと骨折り損になってしまう可能性もありますので、注意してください。

7.支給のための審査に協力しない場合

助成金を申請すると、労働局から「出勤簿に矛盾はないか」「しっかり労働関連の法令を遵守しているか」ということが徹底的に調査されることになります。例えば「出勤簿を見せてください」とか「実地調査をさせてください」ということを唐突に言われたりしますが、事業主は全て調査に協力をする必要があります。

「いや、それはちょっと……」などと言って断ってしまうと、「この事業主は何か良からぬことを隠しているのではないか」と思われてしまい、徹底的にマークされることになります。ですので、完全にホワイトな状態で助成金を申請するように準備しておきましょう。

まとめ

助成金に関する審査は年々厳しくなってきており、不正受給が後になって発覚するケースも増えてきました。不正受給を行った事業主はニュースになったりすることもありますから、ただ助成金が受給できなくなるだけでなく、取引先から信用を損ねるということにもなりかねません。

上記でご紹介したようなパターンに当てはまらないか今一度チェックして、ホワイトな助成金申請を心がけましょう。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。