キャリアアップとは、「特定の分野について今よりもさらに専門的な知識や技術を身に付け、能力を向上させることにより経歴を高めること」を指します。多くの場合は、社会人が職務経歴を高め、今よりも良好な待遇や評価を得るための営みといえるでしょう。

一定の予算を組んだ上で自社の従業員のキャリアアップを支援する企業に対しては、厚生労働省から助成金が受け取れる場合があります。従業員が働きやすい職場環境を整備し、キャリアアップに応じた待遇へと改善させることに対して、助成金を通じて国がバックアップしているのです。

この記事では、キャリアアップ助成金とは何か、それぞれのコースや申請方法について解説します。

キャリアアップ助成金とは

「キャリアアップ助成金」とは、パート・アルバイト・派遣社員など非正規雇用労働者の企業内におけるキャリアアップを促進するため、正社員として登用する、処遇を改善するなどの取り組みを実施した企業に対し、助成する制度です。特徴は次の通りです。

従業員が自分で助成金を受け取れるわけでない

キャリアアップ助成金は、あくまでも従業員の処遇改善などに関する取り組みを行った会社に対して助成されるものです。従業員自身に支給されるものではありませんので、注意が必要です。

従業員を雇っている企業が福利厚生として導入

企業が従業員のキャリアアップや処遇改善を支援するための取組を実施した場合、一定の手続きを踏むことを条件としてキャリアアップ助成金が渡されます。つまり、この助成金は企業のキャリアアップや処遇改善の取り組みを間接的に支える福利厚生支援の役割を果たしていると評価できます。

返済不要

助成金は融資と異なり、受け取っても返済する必要はありません。毎月の返済のための資金繰りで頭を悩ませる必要もないのです。

使い道自由

キャリアアップ助成金という名称ですが、受け取った助成金をキャリアアップのために使う義務は課されておらず、その使い道は指定されていません。さらに、会社の収入(雑収入)として計上することが可能です。

助成まで日数がかかる

申請から助成金が支給されるまでには、数か月ほどかかることも珍しくありません。そのため、その間に資金がショートしないよう、資金繰りには十分に配慮しましょう。

キャリアアップ助成金の具体例

従業員のキャリアアップをサポートする助成金は、次の通りに細分化されています。

正社員化コース

派遣社員などの有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換、または直接雇用した会社に対して支給されるキャリアアップ助成金です。
パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用者を正社員として登用できるよう就業規則を改定し、実際に登用した上で少なくとも3%以上賃金を引き上げて6カ月以上給料を支払うことが条件となります。

基本助成額は、中小企業の場合で57万円、大企業の場合で42万7500円です。さらに特定の職業訓練を行った場合、11万円が加算されます。

障害者正社員化コース

障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換した場合などに支給されるキャリアアップ助成金です。
適用されるための条件は、有期雇用から正規雇用、有期雇用から無期雇用、無期雇用から正規雇用のいずれかに転換することです。
また、対象者の診断結果や企業規模に応じて助成金額が異なります。たとえば、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者を有期雇用している中小企業が、彼らを正社員として登用した場合には120万円が助成され、大企業の場合は90万円が助成されます。

賃金規定等改定コース

非正規雇用労働者の基本給等の賃金規定を改定し、給料を3%以上増額した企業に対して助成されるキャリアアップ助成金です。実際に6カ月以上、その待遇改善を継続したことが条件となります。
賃金改定対象者が1~5人の場合、1人あたり32,000円、6人以上の場合、1人あたり28,500円が助成されます。

賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者と正規雇用労働者に共通の賃金規定を新たに規定・適用した企業に対して助成されるキャリアアップ助成金です。このコースの場合も6カ月以上の待遇改善継続が条件となります。

賞与・退職金制度導入コース

有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し、支給または積立を実施した企業に対して助成されるキャリアアップ助成金です。本来、パート・アルバイト・派遣社員にもボーナスや退職金の制度が適用されるべきにもかかわらず、そうなっていない世の中の実態を改善するために設けられています。

短時間労働者労働時間延長コース

有期雇用労働者等の週所定労働時間を1~3時間以上延長し、社会保険が適用された場合に助成されるキャリアアップ助成金です。いまだに社会保険が適用されない有期雇用労働者(非正規雇用者)が多い実態を改善させるための制度といえます。

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

キャリアアップ助成金の申請方法

一連のキャリアアップ助成金について、申請方法は次の通りです。

まずはキャリアアップ管理者を決め、労働組合などの意見を聞き取った上で、各コース実施日の前日までに「キャリアアップ計画」を作成し提出します。
キャリアアップ計画届および支給申請に必要な様式は、厚生労働省のサイトからダウンロードできるようになっています。
計画届には、事業所名、代表者名、労働組合等の労働者代表者名などの基本情報の他、キャリアアップ計画期間、コースの選択、対象者名、目標、目標を達成するために講じる措置などの必要事項を記入し、申請することになります。

正社員化コース・障害者正社員化コースを選択する場合には、正社員として登用するための就業規則の改定を行い、実際に非正規雇用者を正社員として迎え入れ、少なくとも賃金を3%以上上昇させた待遇改善の下、6カ月間雇用し続けた実績を備えてから2カ月以内に支給申請を行ってください。

また、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長コースを選択する場合には、賃金を3%以上上昇させるなど、各コースに見合った待遇改善を裏付ける就業規則の改定を行い、6カ月間の実績を備えてから2カ月以内に支給申請を行いましょう。

必要な手続きや流れについて、こちらで詳しく解説していますので是非ご覧ください。
参考記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!

まとめ

キャリアアップ助成金は、自社の従業員がスキルや知見を磨き上げて、得意分野でより輝ける活躍を続けていく将来をサポートします。

ただし、会社が十分なキャリアアップ対策の経費を用意してから助成金を申請しなければ、十分な恩恵を受けられない懸念があります。
助成金を活用できた企業は、長い目で見て従業員の生産性を向上させることができ、やがて売上アップにも繋がるでしょう。

助成金の概要や補助金との違いに関しこちらで解説していますので、あわせてご覧ください。
参考記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。