勤務終了から次の勤務開始までに一定の休息時間(勤務間インターバル)を確保する制度は、従業員の健康維持や過重労働の防止を両立させるために欠かせません。しかし、費用負担が必要になることから、導入に踏み切れないという中小企業もあるでしょう。

その際、「働き方改革推進支援助成金」の勤務間インターバル導入コースを活用することで、自社にかかる費用負担を軽減できます。

そこで、この記事では働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の概要や支給要件、助成金額について解説します。

働き方改革推進支援助成金とは?

働き方改革推進支援助成金とは、働き方改革に関する取り組みを行う中小企業事業主を支援する制度です。
「少子高齢化による人材不足」や「働く人々の働き方の多様化」といった課題に対応するには、職場環境を整備することが欠かせません。本制度を活用することで、こうした環境整備にかかる費用の一部を支援してもらえます。

働き方改革推進支援助成金は、取り組み内容により、以下の4つのコースが設定されています。

  • 業種別課題対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 団体推進コース

本記事では、このうち「勤務間インターバル導入コース」について詳しく解説します。その他のコースの概要や助成額は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025年拡充予定】働き方改革推進支援助成金とは?各コースを徹底解説

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勤務間インターバル導入コースの概要

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)とは、勤務間インターバル制度を導入し、定着を図る中小企業事業主を支援するコースです。

ここでは、勤務間インターバル導入コースの概要として、勤務間インターバル制度の基本的な知識や法的位置づけについて解説します。

勤務間インターバル制度とは?

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後、次の勤務開始までに一定時間以上の「休息時間」を設ける制度です。労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を目指します。

本助成金における「勤務間インターバル」とは、休息時間数を問わず、就業規則などにおいて「終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているもの」を指します。
例えば、以下の場合には、勤務間インターバル制度を導入しているとみなします。

  • 就業規則などにおいて、「○時以降の残業を禁止し、かつ○時以前の始業を禁止する」などのように勤務時間を定めている場合
  • 就業規則などにおいて、「所定外労働を行わない」と定めていて、終業から次の始業までの休息時間が確保される場合

ただし、「○時以降の残業を禁止、○時以前の始業を禁止とするなど」の定めの場合には、勤務間インターバル制度は導入していないものとなります。

導入が求められる背景と法的位置づけ

勤務間インターバル制度が注目される背景には、長時間労働の常態化や過労死などの社会問題があります。
日本では、勤務終了から次の勤務開始での間隔が短く、十分な休息や睡眠を確保できない「インターバル不足」による健康被害が指摘されてきました。こうした課題を受け、労働者のワークライフバランスを確保することを目的として、勤務間インターバル制度の導入が求められるようになったのです。

その後、2019年の労働時間等設定改善法の改正によって、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務とされました。つまり、企業は制度導入に向けて必要な措置を行うように努める義務があると定められたのです。

現在は努力義務であるものの、義務化に関する議論も行われています。そのため、本助成金を活用し、勤務間インターバル制度の導入を検討することがおすすめです。

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勤務間インターバル導入コースの支給要件

ここでは、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の支給要件について解説します。

対象となる事業主

勤務間インターバル導入コースの支給対象となる事業主は、以下のすべての支給要件に該当する中小事業主です。

1 労働者災害補償保険の適用事業主であること
2 以下のいずれかに該当する事業場を有する事業主であること

  • 勤務間インターバルを導入していない事業場
  • 休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
  • 休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
3 すべての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること
4 すべての対象事業場において、原則、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること
※基本的には1か月45時間を超える時間外労働の実態があれば、要件を満たすこととなる
5 すべての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則などを整備していること

助成対象となる取り組み

勤務間インターバル導入コースの助成対象となるには、以下の取り組みのうち、いずれか1つ以上を実施する必要があります。

  1. 労務管理担当者に対する研修
  2. 労働者に対する研修、周知・啓発
  3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保に向けた取組
  6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  9. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
    (小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

※研修には、勤務間インターバル制度に関するもの及び業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

目指すべき「成果目標」

勤務間インターバル導入コースの助成対象となるには、事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図るという成果目標の達成を目指して取り組む必要があります。

具体的には、事業主が事業実施計画において指定した各事業場において、以下のいずれかに取り組むことが求められます。

  • ・新規導入
    勤務間インターバルを導入していない事業場において、「所属労働者の半数を超える労働者を対象とした、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する規定」を労働協約または就業規則に定めること
  • ・適用範囲の拡大
    「休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している」かつ「対象労働者が、所属労働者の半数以下である」事業場において、「対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の半数を超える労働者を対象とすること」を、労働協約または就業規則に規定すること
  • ・時間延長
    休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、「所属労働者の半数を超える労働者を対象として、休息時間数を2時間以上延長して、休息時間数を9時間以上とすること」を労働協約または就業規則に規定すること

さらに、上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者における「時間当たりの賃金額の3%以上引き上げ」を成果目標に追加することも可能です。

参照:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」

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勤務間インターバル導入コースの助成額

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の助成額について、以下にまとめました。

  • ・助成額=対象経費の合計額×補助率3/4
    ※「常時使用する労働者数が30人以下」「支給対象の取り組みで6~9を実施する」「所要額が30万円を超える」場合の補助率は4/5

助成上限額は、以下の表のとおりです。

休息時間数※ 「新規導入」に該当する
取り組みがある場合
「新規導入」に該当する取り組みがなく、「適用範囲の拡大」または「時間延長」に該当する取り組みがある場合
9時間以上
11時間未満
100万円 50万円
11時間以上 120万円 60万円

※事業実施計画において指定した事業場に導入する勤務間インターバルの休息時間のうち、最も短いものを指す。

また、賃金額の引上げを成果目標に加えた場合の加算額は、労働者の賃金引上げの人数によって、上限額に加算されます。なお、引上げ人数の上限は30人で、賃上げ額そのものを助成するものではありません。

常時使用する労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合
引き上げ人数 1~3人 4~6人 7~10人 11人~30人
3%以上引上げ 6万円 12万円 20万円 1人当たり2万円
(上限60万円)
5%以上引上げ 24万円 48万円 80万円 1人当たり8万円
(上限240万円)
7%以上引上げ 36万円 72万円 120万円 1人当たり12万円
(上限360万円)
常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合
引き上げ人数 1~3人 4~6人 7~10人 11人~30人
3%以上引上げ 12万円 24万円 40万円 1人当たり4万円
(上限120万円)
5%以上引上げ 48万円 96万円 160万円 1人当たり16万円
(上限480万円)
7%以上引上げ 72万円 144万円 240万円 1人当たり24万円
(上限720万円)

参照:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」

まとめ

この記事では、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の概要や支給要件、助成金額について解説しました。

勤務間インターバル制度の導入は努力義務ではありますが、、自社の人材確保や労働者のモチベーション向上にもつながるため、早めに取り組むことが推奨されます。さらに、本助成金を活用することで、資金負担を軽減しながら制度の導入・定着に取り組めます。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントへの依頼がおすすめです。確実な受給を目指すためにも、まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。