少子高齢化が進み、各企業の重要な課題に人材の確保が挙げられるようになっています。そのためには今までのような働き方を変革し、従業員が働きやすい環境を整備する必要性にせまられている企業もあるでしょう。

その際に、人材確保等支援助成金を利用することで、環境整備にかかる負担を減らしながら事業体制を強化できます。

そこで、この記事では人材確保等支援助成金の概要、各コースの内容について解説します。

助成金の概要についてはこちらをご覧ください。
参考記事助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

人材確保等支援助成金とは

人材確保等支援助成金とは、魅力ある労働環境をつくる事業主や事業協同組合などに対する助成金です。
ここでは、この助成金の基本的な概要をご紹介します。

人材確保等支援助成金の目的

人材確保等支援助成金の目的は、雇用創出を図ることで、人材の確保や定着を目的としています。

少子高齢化により、サービス業や建設業などさまざまな業種において人材不足が深刻化しています。そのため、企業は従来の環境や体制を変更し、魅力ある労働環境をつくり、雇用創出を目指すことが必要です。

人材確保等支援助成金は、そうした企業の設備・機器の導入や体制づくりなどの取り組みを支援する制度なのです。

人材確保等支援助成金コース一覧

人材確保等支援助成金には、以下の9つのコースがあります。ここでは、それぞれのコースの概要を簡単にご紹介します。

1.雇用管理制度助成コース

雇用管理制度を導入し、従業員の離職率が低下した場合に助成されるコース
※令和4年4月1日以降、整備計画の新規受付を休止しています。

2.介護福祉機器助成コース

介護福祉機器を導入し、従業員の離職率が低下した場合に助成されるコース

3.中小企業団体助成コース

中小企業団体が、構成する中小企業のために、人材確保や職場定着を支援した場合に助成されるコース

4.人事評価改善等助成コース

人事評価制度を整備し、賃金アップ、離職率が低下した場合に助成されるコース
※令和4年4月1日以降、整備計画の新規受付を休止しています。

5.建設キャリアアップシステム等普及促進コース

建設事業主団体が建設キャリアアップシステムの事業者登録、技能者登録、能力評価、または見える化評価の登録をした場合に助成されるコース

6.若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)

若年者や女性の雇用・定着のための取り組みを行った建築事業主や建設作業の訓練を推進するための取り組みを実施した職業訓練法人を助成するコース

7.作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

作業員施設や賃貸住宅を賃借した中小建設事業主などを助成するコース

8.外国人労働者就労環境整備助成コース

就労環境の整備などの外国人労働者の職場定着に取り組む場合に助成されるコース

9.テレワークコース

テレワークを実施し、人材確保や雇用管理改善の効果をあげた中小企業主を助成するコース

人材確保等支援助成金の種類一覧

人材確保等支援助成金の9つのコースを詳しく見ていきます。

雇用管理制度助成コース

以下の5つの雇用管理制度の導入により、離職率の低下を目指します。

・主な受給要件

1.以下の5つの雇用管理制度整備の導入と、雇用管理制度整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること。

  • 諸手当等制度
  • 研修制度
  • 健康づくり制度
  • メンター制度
  • 短時間正社員制度(保育事業主のみ)

2.雇用管理制度整備計画にもとづき、期間内に5つの制度を導入・実施すること。
3.制度実施により、雇用管理制度整備計画の終了から1年経過までの期間の離職率を、目標値以上低下させること。

・受給額

目標達成助成:57万円

参考厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」

介護福祉機器助成コース

労働者の負担軽減につながる介護福祉機器の導入により、離職率の低下を目指します。

・対象となる介護福祉機器の範囲

  • 移動・昇降用リフト(立位補助器、非装着型移乗介助機器を含む)
  • 装着型移乗介助機器
  • 体位変換支援機器
  • 特殊浴槽

・主な受給要件

  1. 労働環境向上のための介護福祉機器の導入・運用計画を作成し、管轄の労働局長の認定を受けること。
  2. 作成した計画に沿って導入し、適切に運用すること。
  3. 運用の結果、導入・運用計画の終了から1年経過までの期間の離職率を、目標値以上低下させること。

・受給額

目標達成助成:以下の合計額の20%(賃金要件を満たした場合は35%)
※上限150万円

  • 介護福祉機器の導入費用(利子を含む)
  • 保守契約費
  • 機器の使用を徹底させるための研修

参考厚生労働省「人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)」

中小企業団体助成コース

事業協同組合などが、構成する中小企業の労働環境向上を目指した取り組みにかかった経費の一部が負担されます。

・主な受給要件

  1. 雇用管理の改善計画を作成し、都道府県知事の認定を受けること。
  2. 構成する中小企業に対して、1年間の「中小企業労働環境向上事業」の計画を策定し、労働局長の認定を受けること。
  3. 「中小企業労働環境向上事業」の実施。

・受給額

1年間の「中小企業労働環境向上事業」にかかった経費の2/3が支給されます。ただし、支給限度額は、以下のとおりです。

  • 大規模認定組合など(構成中小企業者数500以上):1,000万円
  • 中規模認定組合など(構成中小企業者数100以上500未満):800万円
  • 小規模認定組合など(構成中小企業者数100未満):600万円

参考厚生労働省「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」

人事評価改善等助成コース

人事評価制度や賃金制度を整備することで、生産性を向上させ、従業員の賃金アップや離職率低下を目指します。

・主な受給要件

  1. 人事評価制度等整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること。
  2. 人事評価制度や賃金制度を整備・実施すること。
  3. 労働者の賃金が増加され、かつ賃金の引き下げを行っていないこと。
  4. 制度の整備・実施により、実施日の翌日から1年経過するまでの離職率が、目標値以上に低下していること。

・受給額

目標達成助成:80万円

参考厚生労働省「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」

建築キャリアアップシステム等普及促進コース

建設事業主団体が能力評価制度や施工能力などの見える化評価を実施し、建設労働者の雇用促進や処遇改善を目指します。

・対象事業

  1. CCUS等登録促進事業
  2. CCUS等登録手続き支援事業
  3. 就業履歴蓄積促進事業

・受給額

建設事業主団体が負担した経費×助成率

・助成率

中小建設事業主団体:2/3
上記以外の建設事業主団体:1/2

参考厚生労働省「建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建築分野)

このコースでは建設事業主団体が対象となっており、若者や女性が定着できる環境づくりを目指しています。

・対象事業

CCUSの普及を目的とした研修会や講習会の開催といった、建設労働者の評価・処遇制度の普及などに関する事業

・受給額

建設事業主団体が負担した経費×助成率

・助成率

中小建設事業主団体:2/3
上記以外の建設事業主団体:1/2

参考厚生労働省「建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)は、設置した作業員施設により支援内容が異なります。

  • 女性専用の作業員施設を設置した場合:対象経費の3/5
  • 被災三県において、作業員宿舎や作業員施設、賃貸住宅を整備した場合:対象経費の2/3(賃金要件が認められる場合、3/4)
  • 認定訓練に必要な設備の設置や整備または整備を行った職業訓練法人:対象経費の1/2

参考厚生労働省「建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」

外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者が日本の労働法制や慣行、言語・文化の違いによるトラブルが生じないような取り組みを実施した場合に、取り組みにかかった費用の一部を助成します。

・主な受給要件

  1. 外国人労働者を雇用していること。
  2. 認定を受けた就労環境整備計画にもとづいた新たな措置を外国人労働者に向けて実施すること。
  3. 就労環境整備計画の終了から一定期間後における外国人労働者の離職率が10%以下であること。

・受給額

対象経費の合計額に助成率を乗じた金額が支給されます。
賃金要件を満たしていない場合:支給対象経費の1/2(上限額57万円)
賃金要件を満たしている場合:支給対象経費の2/3(上限額72万円)

※対象経費は、以下の5つを専門家や外部機関に委託した場合にカウントされます。

  1. 通訳費
  2. 翻訳機器導入費
  3. 翻訳料
  4. 弁護士・社会保険労務士などへの委託料
  5. 社内標識類の設置・改修費

参考厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」

テレワークコース

テレワークを導入し、従業員が働きやすい環境を整備することを目指します。

・主な受給要件

テレワークコースでは、「機器等導入助成」と「目標達成助成」のどちらかを実施することで受給可能です。

1.機器等導入助成
管轄の労働局から認定を受けたテレワーク実施計画に沿って、期間内に1回以上、労働者全員がテレワークを実施するか、週平均1回以上テレワークを実施すること。また、テレワークを促進する風土づくりの取り組みを行うこと。

2.目標達成助成
離職率が30%以下であり、テレワーク実施前後で、実施後の離職率の方が低いこと。

・受給額

1.機器等導入助成
1企業あたり、支給対象となる経費の30%

2.目標達成助成
1企業あたり、支給対象となる経費の20%(賃金要件を満たす場合35%)

※どちらにおいても、上限は以下のうち、低い方の金額となります。

  • 1企業あたり100万円
  • テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円

参考厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」

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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

まとめ

最近では、求職者が職場を選ぶ基準に「労働環境」を挙げる場合も多くなっています。

人材不足解消や業務効率化などさまざまな面において、労働環境を整備することは事業の強化につながります。新たな環境を整備するには、人材確保等支援助成金を利用し、経営負担を軽減しましょう。

人材確保等支援助成金の申請を検討される場合、まずは無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。