人手不足や労働環境などの課題を抱えている建設業において、国はさまざまな助成金・補助金を用意しています。
こうした支援制度を活用することで、環境の整備や生産性向上などの課題解決にかかる費用を低減できるでしょう。
そこで、この記事では建設事業主が助成金・補助金を活用するメリット・デメリットや、活用したい助成金・補助金一覧を紹介します。
目次
建設業が助成金・補助金を活用すべき背景とは
建設業において、従業員の高齢化や若手の人材不足が深刻化しています。
令和3年の国土交通省「最近の建設業をめぐる状況について」によると、建設業就業者数は24年間で約29%も減少しました。
- 平成9年:685万人(ピーク時)
- 令和3年:485万人
さらに、令和3年の内訳は、29歳以下が約1割であるのに対し55歳以上が3割以上を占めており、10年後にはその多くが引退することが見込まれています。
また、2024年4月からは建設業にも「時間外労働上限規制」が適用され、時間外労働の上限が、原則として月45時間(年360時間)となったため、業務効率化の取り組みも急務です。
しかし、労働環境の改善や業務効率化における体制改善にかかる費用を捻出することが難しい企業も多いでしょう。そこで、取り組みに必要な費用の負担を支援する助成金・補助金の活用がおすすめなのです。
建設業が助成金・補助金を活用するメリット・デメリット
建設業が助成金・補助金を活用するメリット・デメリットを解説します。
メリット
建設業が助成金・補助金を活用するメリットには、以下のようなものがあります。
- 原則、返済不要な資金を調達できる
- 助成金の場合、支給要件を満たせば受給できるため、比較的受給しやすい
- 自社の事業体制を改善させる取り組みを行うため、従業員満足度の向上や求職者採用が優位に進む可能性がある
デメリット
建設業が助成金・補助金を活用するデメリットには、以下のようなものがあります。
- 支給要件を満たすために、新たな取り組みを行う必要がある
- 補助金の場合、支給要件を満たしても審査に落ちれば受給できない
- 助成金・補助金の申請や審査などの対応が必要になる
自社だけでの助成金・補助金申請に不安がある場合には、プロのコンサルティング業者に依頼することで、自社の工程を低減しつつ確実な申請が可能になるでしょう。
助成金のコンサルについては以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:助成金申請はコンサルに依頼すべき?サポート内容や費用相場、選び方を解説
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説建設業が活用できる助成金
助成金とは、労働環境などの改善における取り組みに対して、厚生労働省が主導して支援する制度のことです。基本的に返済する必要がなく、受給条件を満たしていれば受給できます。
助成金の詳細については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金とは、魅力ある職場づくりのために労働環境の改善を促進し、人材の確保・定着を目指す事業主を助成する制度です。
人材確保等支援助成金のうち、建設業者が活用したいコースは以下の2つです。
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
それぞれのコースで支給要件や助成額・助成率は異なります。
例えば、「若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)」では、中小企業は対象費用の3/5、中小企業以外では9/20が助成されます。
人材確保等支援助成金の詳細は、以下の記事で解説しています。
関連記事:【2023年最新】人材確保等支援助成金とは?各コースを徹底解説
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金とは、若年者(35歳未満)や女性の試行雇用を行う中小事業主を助成する制度です。
トライアル雇用助成金には、以下の2つのコースがあります。
- 一般トライアルコース
- 障害者トライアルコース
それぞれのコースで支給要件や助成額・助成率は異なります。
例えば、「一般トライアルコース」の場合、若年・女性建設労働者1人につき最大4万円/月を最大3か月受けられます。
トライアル雇用助成金の詳細は、以下の記事で解説しています。
関連記事:【2023最新】トライアル雇用助成金とは?各コースを徹底解説
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金とは、雇用している従業員に専門的な知識や技能を習得させる訓練を実施した場合に、かかった費用を一部助成する制度です。
人材開発支援助成金のうち、建設業が活用したいコースは以下の2つです。
- 建設労働者技能実習コース
- 建設労働者認定訓練コース
以下にそれぞれのコースの主な支給要件と助成額・助成率をまとめました。
建設労働者技能実習コース | 若年者等の育成と熟練技能の維持・向上を図るため、キャリアに応じた技能実習を実施した場合 |
|
---|---|---|
建設労働者認定訓練コース | 認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合 | 経費助成:対象経費の1/6 |
建設労働者に対して認定訓練を受講させた場合 | 賃金助成:3,800円/人日 (1,000円/人日) |
※()内は、賃金要件または資格等手当要件を満たした場合の増額分です。
人材開発支援助成金の詳細は、以下の記事で解説しています。
関連記事:【2023年最新】人材開発支援助成金とは?各コースを徹底解説
それぞれの助成金の詳細は「厚生労働省:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」をご覧ください。
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、中小事業主が、従業員の有給休暇や特別休暇の促進のために、生産性の向上や時間外労働の削減などの取り組みにかかる費用を支援する制度です。
以下、4つのコースがあります。
- 業務別課題対応コース
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 団体推進コース
助成金を受けるには、定められた取り組みを実施するとともに、成果目標を設定することが必要です。受給金額も成果目標によって異なる場合があるため、詳細や最新情報は「厚生労働省:働き方改革推進支援助成金」からコースを選んでご覧ください。
また、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:働き方改革推進支援助成金とは?基本情報や2023年の実施予定を徹底解説!
建設業が活用できる補助金
補助金とは、経済活動の推進における取り組みに対して、経済産業省が主導して支援する制度のことです。基本的に返済する必要がありませんが、受給するには審査を受け、採択される必要があります。
助成金との違いについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!
小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の新たな販路開拓などへの取り組みや、業務効率化・生産性向上のためのシステムや設備導入にかかる費用を支援する制度です。
建築業においては、常時20名以下の従業員を雇用している場合に対象となります。
以下のタイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。
- 通常枠
- 賃金引上げ枠
- 卒業枠
- 後継者支援枠
- 創業枠
建築業においては、Webサイトや看板の設置、商談スペースの改装などに利用できる可能性があります。通常枠における補助率は経費の2/3で、補助上限は50万円です。
詳細や最新情報については、「小規模事業者持続化補助金:小規模事業者事業化補助金(一般型)」をご覧ください。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、小規模事業者や中小事業者などが、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセスの改善などに必要な設備・システムへの投資を支援する制度です。
以下の3タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
詳細や最新情報は「ものづくり補助金総合サイト」をご覧ください。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が、自社の経営課題を解決するためのITツールの導入により活用できる補助金です。ソフトウェアやクラウド利用費などが補助対象となっています。
以下の3タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なっています。
- 通常枠
- インボイス枠
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
詳細や最新情報については、「IT導入補助金2023」をご覧ください。
建設業が助成金・補助金を活用する注意点
建設業が助成金・補助金を活用するうえでの注意点を解説します。
経営方針に適した助成金・補助金を選定する
助成金・補助金は、自社のビジネスを改善・発展させていくために利用したい制度です。しかし、助成金・補助金を受給することが目的になり、やみくもに設備やシステムを導入した場合には、生産性向上や業務効率化といった本来の目的が達成できなくなってしまう可能性があるでしょう。
そのため、まずはどのように自社のビジネスを改善・発展させていくのかという経営方針を確立したのち、自社に適した助成金・補助金を見つけることがおすすめです。
補助金は、審査で採択される必要がある
補助金は、受給要件を満たしていても、必ず受給できるのではなく、申請後、審査を経て採択されることで初めて受給する事が出来ます。そのため、採択率を上げるために、提出書類をしっかりと準備し、自社のビジネスの魅力をアピールすることが重要です。
また、補助金は公募期間が短い事が多いので、こまめに公式サイトを確認し、最新情報を常にチェックすることも大切です。
申請書類を準備する時間や手間がかかる
助成金・補助金を受給するには、それぞれ申請書類を準備し、提出することが必要です。受給条件を確認し、必要書類を作成するには、時間や手間がかかります。特に、はじめて申請する場合には、負担に感じられることもあるでしょう。
そのため、ノウハウが不足している場合には、申請代行を利用することもおすすめです。自社に適した助成金・補助金のアドバイスから環境整備、書類作成などのサポートまで受けられるでしょう。詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:助成金・補助金の申請代行とは?費用やメリット、選び方をまとめて解説!
まとめ
この記事では建設事業主が活用できる助成金・補助金をご紹介しました。
建設業においては、深刻な人手不足に対応するために、働き方改革、処遇改善、生産性向上などの体制の改善が求められています。こうした取り組みにかかる費用の負担を軽減するためには、返済不要な支援制度である助成金・補助金の活用がおすすめです。
自社に適した助成金・補助金を見つけ、人手不足解消に活かしましょう。以下から、自社で受給できる助成金の無料診断が可能ですので、一度試してみてはいかがでしょうか。