人手不足や労働環境などの課題を抱えている建設業において、国はさまざまな助成金・補助金を用意しています。

こうした支援制度を活用することで、環境の整備や生産性向上などの課題解決にかかる費用を低減していくことができるでしょう。

そこで、この記事では建設事業主が活用できる助成金・補助金をご紹介します。

建設業が助成金・補助金を活用したい理由とは

建設業において、従業員の高齢化や若手の人材不足が深刻化しており、労働環境の改善や業務効率化における取り組みが急務となっています。

令和3年の国土交通省「最近の建設業をめぐる状況について」によると、ピーク時だった平成9年の建設業就業者数は685万人でしたが、令和3年には485万人と約29%も減少しています。また、その内訳も、令和3年には29歳以下が約1割、55歳以上が3割以上を占めており、10年後には引退する就業者が多いことも見込まれているのです。
こうした状況から、建築業においては働き方改革、処遇改善、生産性向上などの体制改善が求められているのです。

しかし、こうした体制改善にかかる費用を捻出することが難しい企業も多いでしょう。そこで、取り組みに対してかかった費用を支援するための助成金・補助金の活用がおすすめなのです。

建設業が活用できる助成金

助成金とは、労働環境などの改善における取り組みに対して、厚生労働省が主導して支援する制度のことです。基本的に返済する必要がなく、受給条件を満たしていれば大抵の場合、受給できます。

助成金の詳細については、以下の記事をご覧ください。
関連記事助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

建設事業主等に対する助成金

先ほど、ご紹介したように、国では建築事業主などにさまざまな支援を打ち出しています。この「建築事業主等に対する助成金」は、従業員の雇用改善や技能向上のために取り組みを実施した建築事業主などを支援する制度です。

以下の12コースから構成されています。それぞれの助成金やコース、基本的な助成額をまとめています。

助成金名 コース名 助成額
トライアル雇用助成金 若年・女性建設労働者トライアルコース 1人あたり4万円/月×3か月
(トライアル雇用助成金の上乗せ)
人材確保等支援助成金 建設キャリアアップシステム等普及促進コース 【中小建設事業主団体】
対象経費の2/3
【中小建設事業主団体以外】
対象経費の1/2
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース
(建設分野)(事業主経費助成)
【中小建設事業主】
対象経費の3/5
【中小建設事業主以外】
対象経費の9/20
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース
(建設分野)(事業主団体経費助成)
【中小建設事業主団体】
対象経費の2/3
【中小建設事業主団体以外】
対象経費の1/2
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース
(建設分野)(推進活動経費助成)
作業員宿舎等設置
対象経費の2/3
作業員宿舎等設置助成コース
(建設分野)(作業員宿舎等経費助成)
女性専用作業員施設
対象経費の3/5
作業員宿舎等設置助成コース
(建設分野)(女性専用作業員施設設置経費助成)
女性専用作業員施設
対象経費の3/5
作業員宿舎等設置助成コース
(建設分野)(訓練施設等設置経費助成)
支給対象経費の1/2
人材開発支援助成金 建設労働者認定訓練コース(経費助成) 経費助成 対象経費の1/6
建設労働者認定訓練コース(賃金助成) 賃金助成 3,800円/人日
建設労働者技能実習コース(経費助成) 【中小建設事業主(20人以下)】
経費助成 3/4
【中小建設事業主(21人以上)】
経費助成 7/10
建設労働者技能実習コース(賃金助成) 【中小建設事業主(20人以下)】
賃金助成 8,550円/人日
【中小建設事業主(21人以上)】
賃金助成 7,600円/人日

それぞれの助成金の詳細は「厚生労働省:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」をご覧ください。

職場環境改善計画助成金

職場環境改善計画助成金は、ストレスチェックの分析結果を踏まえて職場環境改善計画を作成・改善の実施をした際にかかった費用を支援する制度です。

令和3年度の「建設現場コース」の対象者と助成金額をまとめています。

対象者 以下の両方の要件を満たす事業者
・労災保険の適用事業であること
・元方事業者及び関係請負人の労働者数が常時50人以上の建設現場であること
助成金額 1建設現場あたり100,000円

令和5年度の手引きはまだ発信されていませんので、詳細や最新情報は「労働者健康安全機構」のサイトをご覧ください。

働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金は、中小事業主が、従業員の有給休暇や特別休暇の促進のために、生産性の向上や時間外労働の削減などの取り組みにかかる費用を支援する制度です。

以下、5つのコースがあります。

  • 適用猶予業種等対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 労働時間適正管理推進コース
  • 団体推進コース

助成金を受けるには、定められた取り組みを実施するとともに、成果目標を設定することが必要です。受給金額も成果目標によって異なる場合があるため、詳細や最新情報は「厚生労働省:働き方改革推進支援助成金」からコースを選んでご覧ください。

また、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:働き方改革推進支援助成金」とは?基本情報や2023年の実施予定を徹底解説!

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「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

建設業が活用できる補助金

補助金とは、経済活動の推進における取り組みに対して、経済産業省が主導して支援する制度のことです。基本的に返済する必要がありませんが、受給するには審査を受け、採択される必要があります。

助成金との違いについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

小規模事業者持続化補助金(一般型)

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の新たな販路開拓などへの取り組みや、業務効率化・生産性向上のためのシステムや設備導入にかかる費用を支援する制度です。
建築業においては、常時20名以下の従業員を雇用している場合に対象となります。

以下のタイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なっています。

  • 通常枠
  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠

建築業においては、Webサイトや看板の設置、商談スペースの改装などに利用できる可能性があります。
通常枠における補助率は経費の2/3で、補助上限は50万円となっています。詳細や最新情報については、「小規模事業者持続化補助金:小規模事業者事業化補助金(一般型)」をご覧ください。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、小規模事業者や中小事業者などが、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセスの改善などに必要な設備・システムへの投資を支援する制度です。

以下の5タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なっています。

  • 通常枠
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠
  • デジタル枠
  • グリーン枠
  • グローバル市場開拓枠

建築業の場合、「通常枠」での採択事例が多くあるため、以下に補助率と補助金額をまとめています。

補助率 経費の1/2、小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3
補助金額 従業員数 5人以下 :100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,000万円
21人以上 :100万円~1,250万円

詳細や最新情報は「ものづくり補助金総合サイト」をご覧ください。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が、自社の経営課題を解決するためのITツールの導入により活用できる補助金です。ソフトウェアやクラウド利用費などが補助対象となっています。

以下の3タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なっています。

  • 通常枠(A・B類型)
  • セキュリティ対策枠
  • デジタル基盤導入枠

建築業においては、顧客管理や図面管理、工程表作成などさまざまなITツール導入により、環境整備が可能となるでしょう。通常枠(A・B類型)においては、補助率は経費の1/2、補助額は、最大450万円となっています。詳細や最新情報については、「IT導入補助金2023」をご覧ください。

建設業が助成金・補助金を活用する注意点

建設業が助成金・補助金を活用するうえでの注意点を解説します。

経営方針に適した助成金・補助金を選定する

助成金・補助金は、自社のビジネスを改善・発展させていくために利用したい制度です。しかし、助成金・補助金を受給することが目的になり、やみくもに設備やシステムを導入した場合には、生産性向上や業務効率化といった本来の目的が達成できなくなってしまう可能性があるでしょう。

そのため、まずはどのように自社のビジネスを改善・発展させていくのかという経営方針を確立したのち、自社に適した助成金・補助金を見つけることがおすすめです。

補助金は、審査で採択される必要がある

補助金は、受給要件を満たしていても、必ず受給できるわけではありません。申請後、審査を受けて採択されることで受給できるのです。そのため、採択率を上げるためには、提出書類をしっかりと準備し、自社のビジネスの魅力をアピールすることが重要です。

また、補助金の場合、公募期間が短いという特徴があります。公式サイトを確認し、最新情報を定期的にチェックすることも大切です。

申請書類を準備する時間や手間がかかる

助成金・補助金を受給するには、それぞれ申請書類を準備し、提出することが必要です。受給条件を確認し、必要書類を作成するには、時間や手間がかかってきます。特に、はじめて申請する場合には、負担に感じられることもあるでしょう。

そのため、ノウハウが不足している場合には、申請代行を利用することもおすすめです。自社に適した助成金・補助金のアドバイスから環境整備、書類作成などのサポートまで受けられるでしょう。詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事助成金・補助金の申請代行とは?費用やメリット、選び方をまとめて解説!

まとめ

この記事では建設事業主が活用できる助成金・補助金をご紹介しました。
建設業においては、深刻な人手不足に対応するために、働き方改革、処遇改善、生産性向上などの体制の改善が求められています。こうした取り組みにかかる費用の負担を軽減するためには、返済不要な支援制度である助成金・補助金の活用がおすすめです。

自社に適した助成金・補助金を見つけ、人手不足解消に活かしましょう。以下から、自社で受給できる助成金の無料診断が可能ですので、一度試してみてはいかがでしょうか。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。