社員の離職は人材の流出に止まらず、企業経営に支障をきたす可能性があります。
そもそも労働力人口の減少が大きな問題となっている日本において、せっかく雇用した人材が定着せずに辞めていってしまうというのは、企業にとって大きな損失です。
また、人材の雇い入れや研修等で受給できる雇用関係助成金では、支給申請時に従業員の離職状況がチェックされるため、離職理由によっては助成金不支給要件になってしまいます。
このように、離職率が高くなることは、企業にとって多くのデメリットがあるのです。
退職の原因
「七五三現象」をご存知でしょうか。
七五三現象とは、新卒で採用した社員3年以内に離職する割合を表した言葉で、中卒7割、高卒5割、大卒3割といわれています。この言葉は10年以上前から使われており、景気や会社によってもちろん異なるのですが、概ね若い人の離職率が高い傾向にあることは変わっていません。退職理由としては「仕事が向いていない」というミスマッチが最多でした。
その一方で、近年メンタル疾患を発症した末に離職する従業員の増加が問題になっています。
メンタル疾患を発症して休職した従業員のうち、約半数が休職明けに退職。メンタル不調により離職する人が、平成10年以降増加し続けています。
退職の理由として、休職できる期間が短く十分に治療ができないことや、復職後の支援体制が不十分なことがあると考えられています。しかし、そもそもメンタル疾患を患う人の数は増加の一途を辿っており、働き盛りとなる年齢層の自殺が減る様子もありません。これは、企業の問題に留まらず、社会全体の問題といっても過言ではないでしょう。
従業員の離職を防ぐには
では、こうしたメンタルの問題から至る退職は、どうすれ防止できるのでしょうか。
そのヒントの一つが、福利厚生です。ストレス社会といわれる現代において、ストレスの管理は健康管理の一環といえるでしょう。
自分が許容できる以上のストレスを抱え込んでしまうと、うつ病などのメンタル疾患を発症してしまう危険につながります。そのため、従業員のメンタルの状態を調査することで、メンタル疾患を発症前に対処するメンタルヘルスケアは、現代の企業において非常に大きな課題といえるでしょう。
メンタルヘルスケアと福利厚生は、一見関係性に乏しいように思えますが、実は密接に関係しているのです。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2014年に行った調査によれば、メンタルヘルスの問題は仕事のパフォーマンスに直結しているという結果が出ています。パフォーマンスを維持継続させるためにも、福利厚生の面などでしっかりとメンタルのケアを行っていく必要があるというのです。
しかし、勤めている会社の福利厚生について、どれだけの人が理解しているのでしょうか。
法人向け福利厚生型家事シェアサービス「ショコラ(share of co life)」が行った会社・組織の福利厚生について認知・利用状況を聞いたところ、「知っていて、活用している」と答えた人は半分以下の42%に留まりました。
また、福利厚生を「知っていて、活用している」従業員は、「知ってはいるが、利用していない」従業員と比較し、会社や仕事への満足度が高いことが判明しています。このように、福利厚生の利用率を上げることが、従業員満足度を高める一因となり、引いてはメンタルヘルスケアにつながることが推察されます。
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近年、転職市場は長売り手市場といわれるようになり、個人が転職を考えるハードルは急激に下がっています。
転職を考えるきっかけは人それぞれですが、「休日」「給与」「人間関係」「拘束時間」が理由として頻繁に挙がります。
とはいえ、これら一つの不満で転職に踏み切るというよりも、少しずつたまった不満が何かのきっかけで爆発して行動を起こすことが多いようです。
従業員が離職すると、教育のための時間や人材を採用する費用など、さまざまなコストが新たに発生します。
離職率が上がると企業独自のノウハウを蓄積しにくく技術の伝承がしづらくなり、生産性の低下に直結してしまいます。
また、人が減った分だけ従業員一人当たりの負担が増えるため不満が蓄積していき、さらなる退職者を招いてしまう退職の連鎖につながっていまいかねません。
このように企業にとって従業員の離職は非常に大きな問題といえます。では、離職を防止するためには、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか。
一言で片付けるのなら、労働環境の改善でしょう。上記で述べた転職理由のうち、「休日」「給与」「拘束時間」は会社により左右されます。つまり、人間関係などの心理的な問題以外の原因は、会社にあるのです。
従業員の不満を100%解消することは、現実問題不可能といえるでしょう。それでも、企業努力によりかなりの問題を解決することができると思われます。
問題を一つひとつ洗い出し向き合うことで、離職率を大きく抑えることができるでしょう。