2000年代になり「イクメン」という言葉が生まれたことからも分かるように、子育てに積極的な父親は少しずつ増えており、近年特にその流れが加速しています。
厚生労働省の調査では、男性の育児休業取得率は増加傾向にあり、29年度には過去最高の5.14%になりました。数字的に見ればまだまだ多いとはいえませんが、最初期の取得率である0.02%と比べれば大きな進歩といえます。

しわ寄せは子育て世代に

働き方改革関連法が成立し、今後労働環境はより一層変化していくでしょう。

大企業・中小企業を問わず、多くの企業で取り組みが行われており、違法残業の撲滅を初めとした長時間労働の是正が進んでいます。こうした改革が進む一方で、長時間労働の問題は新しい問題を生んでいます。

管理職による部下の仕事の肩代わりです。長時間労働の問題は、多くが違法残業の問題です。そのため、残業を減らす方向で改革は進んでいますが、一つ問題が生じます。それは、管理職には労働時間の規制がないことです。

残業を禁止された一般社員仕事が残っているにも関わらず定時に帰宅する一方で、管理職は定時後──もしくは休日に部下が残した仕事を肩代わりしているという状況が発生しています。確かに残業時間は発生していないものの、これでは特定の人間に負荷が集中しただけで、本質的には何も改善されていません。

とはいえ、定時に帰宅する社員に非があるかというと、そうとも言い切れません。問題は、就業時間内に収まる範囲の業務を割り振れない管理職、労働環境を整えられない経営者の問題だからです。

晩婚化といわれる昨今出産年齢も上がっており、管理職に就いている人間の多くは、幼い子供がいる子育て世代と年齢層が重なります。

そのため、管理職が長時間労働になるということは、子育てへの参加が難しくなるということ。冒頭で紹介したように、育休を取得する男性が増加しているといっても、現場が許してくれる状況が整わない限り、育休取得が当たり前になるような世の中になることはないでしょう。

「管理職に仕事を押し付けたら残業はなくなった」では、労働生産性の向上にはなっておらず、問題がスライドしただけで解決になっていません。すべての世代が役職を問わず、心置きなく子育てに参加し子供と一緒の時間を増やせるような世の中への改革が必要なのです。

転職者が増加する今、人材確保には福利厚生の充実を

平成という年号も終わりを間近に控えた現在、日本はそれでもまだ昭和という時代から完全に脱却できずにいます。しかし、何も考えず横並びで残業しながら仕事をこなしていれば給与も職位も上がっていった「終身雇用」「年功序列」といった制度はほぼ壊れており、働き方改革の推進により少しずつ労働環境は変わってきました。

人手不足倒産という言葉が取り上げられるなど、大企業に就職すれば一生安泰という、単純な図式は成り立たなくなりました。また、少子高齢化の労働人口減少に伴い、どの業界でも人手不足が叫ばれており、転職市場が活気付いています。

ある調査によれば、福利厚生を重視するとした求職者は8割以上。求職者が転職先に求めているのは、事業内容や業績・給与等と同じく、福利厚生の充実という結果になりました。一方、どれだけ積極的に求人募集していても、求職者から福利厚生が不十分と判断されてしまうと、転職先の候補から外されてしまいます。

福利厚生は、転職先を決める際の重要な検討項目です。中小企業の採用活動は、名前が知られていない分難航しやすいといわれています。そこで、福利厚生を充実させることで、他社との差別化を図ってみてはいかがでしょうか。

とはいえ、無理に大企業の真似をして高いコストを掛ける必要はありません。中小企業が重視すべきなのは、「社員が働きやすい環境の整備」です。例えば、子供がいても安心して働けるように一時保育施設の斡旋をしたり、介護相談窓口の利用機会を設けたりなど、家族を想いやったサポートが理想です。

福利厚生は、給与とは別に社員が得られる報酬ともいわれています。充実した福利厚生を整えれば、社員の労働意欲の向上に繋がるだけでなく、充実した福利厚生に魅力を感じた、優秀な社員を確保する鍵にもなるのです。企業は福利厚生をコストと捉えるのではなく、社員の働きに対する還元として、働くことを支える制度として整えることが重要です。

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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

福利厚生に活用できる助成金

福利厚生は、大企業が時間もお金もかけて整えている一方、中小企業にとってはハードルが高いものです。そこで、福利厚生を充実させるために、助成金の利用をお勧めします。

助成金の中には、福利厚生を充実させるために使えるものが複数あります。例えば、従業員の子供を預かる保育施設の購入費用の一部を助成する「事業所内保育施設設置・運営等助成金」や、仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主を対象とした「両立支援助成金」など、他にさまざまな助成金があります。

変わったところでは、通称イクメン助成金といわれる「出生時両立支援助成金」という助成金。これは「男性社員の育児休業に関する規程を設け、5日以上の育児休業を取得させた」企業に給付される、イクメンパパを応援するための助成金です。

このような助成金を活用することで福利厚生を充実させ、男性の育児休業取得率を上げるなど従業員が働きやすい環境の整備をしてはいかがでしょうか。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。