会社で使える助成金にも様々な種類のものがあります。厚生労働省管轄の助成金は毎年4月に新制度になり、新設や廃止が行われますが、助成金の種類によって金額はもちろん、受給要件が大きく異なりますので、それぞれの特徴を理解し、会社に適用できるものかどうか見極めることが重要です。ここでは平成30年度(2018年度)におすすめする種類の助成金を一通りご紹介いたします。
目次
平成30年(2018年)の助成金にはどんなものがある?
平成30年の助成金の中で特に利用しやすいものの中には、従業員の正社員転換や無期契約転換で受給されるキャリアアップ助成金、正社員の離職率を低下させることで受給できる人材確保等支援助成金、育児や介護などで休業する社員がいる場合に受給できる両立支援等助成金の3つがあります。これら3つの助成金について以下では詳しく解説していきます。
キャリアアップ助成金~非正規社員のキャリアアップに~
キャリアップ助成金は、大変人気が高く申請数の多い制度です。特に「正社員化コース」の人気は突出しています。比較的申請し易く、受給額が大きいのが特徴です。6か月以上雇用しているパート、アルバイト社員を含めた有期契約の従業員を正社員に転換し、さらに6か月雇用すると、助成金の支給申請が行えます。助成額は1人あたり57万円です。
また、正規雇用でなくても有期契約から無期契約へ、無期契約から正規雇用に転換することでも助成金を受給することができるため、正規雇用をしたくない場合でもすぐにでも取組が出来そうな助成金です。
※<>は生産性の向上が認められ、一定の要件を満たした場合の額になります。申告した決算書や確定申告書の一部が提出書類になります。以下の助成金も同様です。
正社員化コース
【要件】有期契約労働者等を 正規雇用労働者等に 転換又は直接雇用した場合
【助成額】誰をどのように転換するかによって受給額が異なります。
- 有期→正規:1人当たり57万円<72万円>
- 有期→無期:1人当たり28万5,000円<36万円>
- 無期→正規:1人当たり28万5,000円<36万円>
諸手当制度共通化コース
「キャリアアップ助成金諸手当制度共通化コース」は、正社員と同様の手当をパート、アルバイトなどの有期契約労働者等にも支給するともらえる助成金です。食事手当などの決められた手当を最低3,000円以上支給するなどのケースが該当します。
【要件】有期契約労働者等と正社員との共通の諸手当制度を新たに規定・適用した場合
【助成額】1事業所当たり38万円<48万円>
※その他にも賃金規定等改定コース、健康診断制度コース、賃金規定等共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コースがあります。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説両立支援等助成金~仕事と家庭の両立支援に~
仕事と家庭生活の両立を支援する会社に助成されるものとして「両立支援等助成金」があります。実際に育児休業や介護休業をとる社員がいる場合に利用できます。
介護離職防止支援コース
仕事と介護を両立出来るような環境作りに取組み、介護離職を防ぐために、社内研修の実施など職場環境整備をして、労働者が介護休業等を取得・利用した場合に、一定額を支給する助成金です。
【支給額】
~介護休業~
1企業当たり2人まで 1人につき38万円<48万円>
中小企業の場合 1人につき57万円<72万円>~介護制度~
1企業当たり2人まで 1人につき19万円<24万円>
中小企業の場合 1人につき28.5万円<36万円>
※<>内の額は生産性要件達成の場合
育児休業等支援コース
育児休暇の取得を推進することや、育児休暇からの復帰後の社員の働きやすさを支援するための助成金です。出産を控えた社員や男性社員でも育休を取得させることで受給できるため、希望者を募ってみると良いかもしれませんね。
【要件】~育休取得時~
育休復帰支援プランに基づいて、雇用保険に加入する社員に対し、連続3か月以上の育児休業(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合には、 産後休業を含め連続3か月以上)を取得させる。【助成額】育児休業取得者1人当たり 28.5万円<36万円>
【要件】~職場復帰時~
育児休業取得者が職場復帰するまでに、育児休業中(産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合には、産後休業を含む)の職場に関する情報及び資料の提供を一定の方法で実施する。【助成額】28.5万円<36万円>
出生時両立支援コース
こちらは上記の育児休業等支援コースに比べると比較的取り組みやすいかもしれません。従業員のことを考えるのであれば長期間の取得をさせるのが良いのかもしれませんが、人手不足でそんな余力がないという企業様も多いことは事実です。
【要件】雇用保険の被保険者として雇用する男性労働者が、
連続した5日以上(大企業は連続14日以上)の育児休業を取得する【助成額】1事業所当たり57万円<72万円>
大企業の場合、1事業所当たり28.5万円<36万円>
※他に「再雇用者評価処遇コース」「女性活躍加速化コース」「事業所内保育施設コース」もあります。
人材確保等支援助成金~離職率の低下や賃金アップに~
人材確保支援助成金は、離職率を低下させることを目的として、賃金アップや労働環境の整備することに対して助成するものです。雇用管理制度助成コースと人事評価改善等助成コースの2種類がありますので、それぞれについて解説していきたいと思います。
雇用管理制度助成コース
計画期間内に決められた5つの制度のうち、どれか1つ以上でも正社員に対し実施し、その後1年間で離職率が一定以下に抑えられれば、57万円が支給されます。以下は厚生労働省の公式HPで記載されている情報になります。
(1)雇用管理制度整備計画の認定
次の〔1〕~〔5〕の雇用管理制度の導入を内容とする雇用管理制度整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること。〔1〕評価・処遇制度
〔2〕研修制度
〔3〕健康づくり制度
〔4〕メンター制度
〔5〕短時間正社員制度(保育事業主のみ)(2)雇用管理制度の導入・実施
(1)の雇用管理制度整備計画に基づき、当該雇用管理制度整備計画の実施期間内に、雇用管理制度を導入・実施すること。(3)離職率の低下目標の達成
(1)、(2)の実施の結果、雇用管理制度整備計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、雇用管理制度整備計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値(※)以上に低下させること。※低下させる離職率の目標値は対象事業所における雇用保険一般被保険者数に応じて変わります。
対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数区分 1~9人 10~29人 30~99人 100~299人 300人以上 低下させる離職率(目標値) 15% 10% 7% 5% 3% 【助成額】57万円<生産性要件を満たした場合は72万円>
人事評価改善等助成コース
人事評価制度や賃金テーブルなどに基づいた制度を新たに導入する、又は要件を満たすように改定し、正社員に対して2%以上増額した賃金を支払うことでもらえる助成金です。テーブルという明確な目標を設定することで正社員の労働意欲の向上にもつながり、離職率の低下にも貢献する見込みがあります。
(1)人事評価制度等整備計画の認定
人事評価制度等整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けること。(2)人事評価制度等の整備・実施
(1)の人事評価制度等整備計画に基づき、制度を整備し、実際に主に正社員に実施すること。(実際に2%増額した賃金を支払うことなども含まれます)【助成額】50万円
【要件】~②目標達成助成~
以下の3つの要件すべてを満たす必要があります。(1)生産性の向上
人事評価制度等整備計画認定申請日の属する会計年度の前年度とその3年後の会計年度を比較した生産性の伸びが6%以上であること。(2)賃金の増加
整備した人事評価制度等の適用をうけた人事評価制度等対象労働者の賃金の額が、「人事評価制度等の実施日の属する前月」と「人事評価制度等整備計画の認定申請日の3年後の日の直前の賃金支払日の属する月」の全員分の賃金総額を比較したときに2%以上増加していること等。(3)離職率の低下
1の人事評価制度等の整備・実施の結果、人事評価制度等の実施日の翌日から起算して1年経過するまでの期間の離職率が、人事評価制度等整備計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値(※)以上に低下させること。※低下させる離職率の目標値は対象事業所における雇用保険一般被保険者数に応じて変わります。※ただし、評価時離職率が 30 %以下となっていることが必要です。
対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数規模区分 1~300人 301人以上 低下させる離職率ポイント 維持 1%ポイント以上 【助成額】 80万円
申請するのが難しそうなんだけど!?
平成30年度の助成金についてご紹介いたしましたが、実際に申請できるかどうかは、要件に該当するかどうかにかかっています。人材確保等支援助成金などは、正社員に制度を実行すれば該当する場合が多いですが、両立支援等助成金などは、実際に育児休業を取得する社員がいないと要件に該当しませんので、会社の実情に合った助成金を選択する必要があります。また、申請するためには、計画書の作成と労働局又はハローワークへの提出、就業規則の改定、制度の実施、支給申請の手続きなどをスケジュール通りに行う必要があります。
これらは労働基準法などの法律知識も必要になりますので、専門家のサポートを受ける方が断然有利になります。
まずは問い合わせてみよう!!
厚生労働省が管轄する助成金申請の代行を行える唯一の国家資格者は、社会保険労務士です。専門家のサポートを受けることで、確実な助成金申請を行えるとともに、法令に沿った社内環境を整備することも可能になります。このような社会保険労務士と対応しているアウトソーシングサービスに依頼することで、申請の手間を大幅に削減することもできます。まずは問い合わせてみることから始めていきましょう!!