最近では地方の小規模な事業者が、海外との直接取引で売上を拡大している例を良く耳にします。国内消費の縮小が避けられない今、何とかして海外展開をしたいと考えている事業者も多いようです。しかし、ノウハウも資金もない小規模事業者が、自力で海外進出をするのは極めて困難です。中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業ではそうした事業者に対して、さまざまな面からバックアップを行っています。ここでは中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業の具体的な内容と、補助対象について解説していきます。
目次
中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業の目的
中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業は、海外展開を目指す事業を支援することにより、中小企業の国際競争力を強化し、各地域や中小企業・小規模事業者の活性化を図ることを目的としています。この事業を通し、最終的には国民経済の安定と健全な発展が期待されています。
自社製品を海外に輸出したい、海外企業と取引や業務提携をしたいと望んでいる事業者にとっては、事情に詳しい専門家からの助言や、海外展示会への出展の機会が得られます。また事業費、委託費など海外展開に必要とされる経費の一部が補助され、負担の軽減ができます。
中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業の対象と補助率
中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業の補助対象者は、海外展開を目指している4つ以上の中小企業で構成されるグループです。
5者目以降には、組合や団体、大企業などもグループの3分の1を超えない範囲で参加することができます。構成員として加わることは可能ですが、大企業やその関連企業が行う事業は補助対象とはなりません。
中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業の中で行われる施策には、6つの事業イメージがあります。
情報提供、助言
海外の法規制や輸出に関する手続きなど各種情報の提供や助言などを行います。国ごとに輸出できる品目や取扱の規定は異なります。また、海外進出に向けた基礎的な情報や、展開を確実なものとするための専門的なアドバイスを得ることができます。
海外事業の安定化、事業再編の推進のため、国内外での経営診断・経営指導を通じて、海外事業の課題解決を⽀援します。国内での簡易診断の場合には補助額の条件を50万円とし、補助率は2/3 です。海外での現地診断も行う場合には、補助額の上限は160万円、補助率は同じく2/3です。
海外展開戦略策定支援
海外展開戦略策定に繋げるため、海外現地における事業の実現可能性調査やWebサイトの外国語化等を支援します。輸出企業の場合の補助上限は50万円で、補助率は1/2 です。直接投資の場合では、補助上限が140万円、補助率は1/2です。 Webサイトに関する支援の場合は補助上限が100万円、補助率は1/2となります。海外コーディネーターによる輸出支援相談サービスや、投資実行時のリスク精査を実施し、安全性・確実性に配慮した支援を行います。
販路開拓支援
海外展開を検討している企業に対して、海外展示会等を通じた商談機会の提供、商談後のフォローアップ等、段階に応じた支援を実施します。海外バイヤーとの商談会を国内で随時開催し、海外進出を希望する事業者とをダイレクトに結びます。参加者を募集する商談会の情報は、随時ジェトロのホームページに掲載されます。海外展示会への出展を支援し、開催場所の案内、審査通過のノウハウなどきめ細かな指導を実施しています。出展に関する翻訳費用の2/3が補助されます。メディアツールを活用したアセアン、中国市場など、エリアに特化した販路開拓への施策も幅広く提供しています。
中小企業海外展開現地支援プラットフォーム
海外の主要拠点にコーディネーターを配置し、大使館や金融機関などの官民支援機関と連携して法務・労務・税務等の専門的な個別課題の解決や海外拠点の設立・移転・撤退等への支援を行います。
ジェトロでは中小企業のビジネス展開への関心が高い16の国・22ヵ所の地域に、プラットフォームを設置しています。プラットフォームを通じて現地進出全般、法務・労務・税務会計などに関する相談を、現地コーディネーターが対応しています。現地パートナー、取引先探しのためのマッチング支援を実施し、商談アポイントの取得からパートナー取引先候補との面談の同席、商談後のフォローアップを行います。
必要に応じて現地政府機関、在外公館をはじめとした公的機関や、法律・会計事務所などへの紹介や取次も可能です。
経済連携協定利用円滑化促進事業
経済連携協定利用円滑化促進事業ではEPA・FTA(自由貿易協定)のネットワークを最大限に活用し、事業者の輸出拡大を図るための支援を行っています。
2015年に規定された「完全自己証明制度」は、輸出者が自ら特定原産品申告書を作成し、相手国に経済連携協定EPA税率の適用を要求できる制度です。
制度への理解を深めるためのセミナー開催や、他国制度の情報が幅広く提供されています。申告書の作成とそれにともなう検認の対応など、輸出を希望する事業者からのさまざまな相談に対応する相談窓口が設置され、個別に課題解決を行っています。
ローカルファイル作成・保存支援等事業
移転価格文書化制度に基づく文書の作成・保存に向けて、文書作成に必要な情報の把握を行う等の態勢整備を支援します。
2016年の税制改革にともない、海外取引を行う業者には原則として「国別報告事項」、「マスターファイル」、「ローカルファイル」の3つの移転価格文書の提出、または、作成・保存が義務化されました。ローカルファイルは別名では「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類」と呼ばれ、厳密には取引額が50億円の場合に同時文書化義務が発生します。しかし、税務調査官がそれを必要と認めた場合、当局に提出しなければならないため、取引額が該当外であっても作成が望ましいとされています。支援事業ではこうした文書の作成に関するアドバイスや相談を行う窓口を設置し、積極的な支援を行っています。
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中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業は販路を海外に求める中小企業にとって、突破口を開くために必要不可欠といえる事業です。無料相談やセミナー参加などにより、海外進出を一から学ぶことができ、各施策について補助金の給付があります。海外展開については、個人事業主が情報収集するだけでも時間やお金がかかります。中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業のサービスや補助金を上手に活用し、販路の確保と事業の成長を現実のものとしていきましょう。