人材不足解消や業務効率化などに向けて、システム化やDXに取り組みたいものの、資金調達に悩んでいるという企業は多いでしょう。そうした場合に利用したい制度に、国や地方自治体が主導する助成金があります。
はじめて助成金を申請する場合には「助成金の概要」「助成金を受けるために必要な要件」「助成金を受給するまでの全体像」などの基本的な情報をまず理解することが大切です。
そこで、この記事では助成金を受けるための支給要件や申請手順について解説します。
目次
助成金とは
助成金とは、「ビジネスを展開している会社経営者・事業主の取り組みをサポートするために、国や地方自治体が助成するお金のこと」です。原則、返済不要であることや、使い道が制限されていないことから利用しやすいことが魅力の制度です。
厚生労働省が管轄しているため、従業員の雇用、人材育成などの労働環境整備に関する制度が多くなっています。
主な助成金の種類
ここでは数多く用意されている助成金のうち、厚生労働省が主導している代表的な助成金をいくつか紹介します。
- キャリアアップ助成金
パート・アルバイトなどの非正規雇用労働者を正社員として転換する、または派遣労働者を直接雇用し、処遇を改善するなどの取り組みを実施した企業を支援する制度。 - 業務改善助成金
生産性向上のための設備導入や人材育成のための研修などの取り組みを実施し、さらに事業場内最低賃金を引き上げた企業を支援する制度。 - 人材開発支援助成金
雇用している従業員に、職務に関連した知識や技能を習得するための訓練を実施した企業を支援する制度。 - 両立支援等助成金
従業員が働きながら育児や介護を行うことができる職場環境や体制を構築し、仕事と家庭の両立を目指す企業を支援する制度。
補助金との違い
助成金とよく似た制度に補助金があります。
補助金も助成金同様に、国や地方自治体が主導しており、企業の取り組みを支援する公的な資金です。原則、返済義務がないことも助成金と共通しています。
しかし、助成金と補助金は異なる点も多くあります。以下に、違いをまとめていますので、それぞれの概要を理解しておきましょう。
助成金 | 補助金 | |
---|---|---|
主体 | 厚生労働省 | 経済産業省 |
目的 | 雇用・労働環境の改善、人材育成など | 補助金ごとに異なるが、経済・地域の活性化など |
受給条件 | 要件を満たし、法令を遵守していれば基本的に受給可能 | 要件を満たしていても、審査で落選する可能性がある |
申請期間 | 2か月間(制度により異なる) | 数週間から1ヶ月程度 |
以下の記事で、助成金と補助金の受給難易度やそれぞれの制度の申請の流れ、注意点の詳細を解説していますので、参考にしてください。
関連記事:補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!
助成金を受けるには何が必要?
助成金を受給するには、各助成金の要件を満たしたうえで助成金を申請することが必要です。
例えば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の要件を簡潔にまとめると、「パート・アルバイト、契約社員などを正社員に転換すること」です。正社員化のためにかかった費用の一部が助成されます。
ここでは、厚生労働省が管轄している雇用関係助成金(雇用に関係する複数の助成金の総称)の共通要件を解説します。
雇用保険適用事業所の事業主であること
まず共通要件の一つに、「雇用保険適用事業所の事業主である」ことが挙げられます。
助成金の財源が、企業が支払っている雇用保険料であるため、雇用保険に加入することは必須要件です。
個人事業主・法人のどちらにおいても、雇用保険の加入手続きを行いましょう。新たに労働者を雇用した場合、事業所を管轄しているハローワークに雇用保険の設置と被保険者資格取得の届出をしてください。
ただし、雇用保険適用事業所の事業主であっても、一定期間以上労働保険料を滞納すると、助成金を受給できなくなる場合があるため、注意が必要です。
支給にかかる審査に協力すること
助成金を受けるには、支給もしくは不支給を決定するための審査に必要な書類を整備・保管したうえで、審査に協力することが必要です。
審査は書類審査のみで完了する場合もありますが、管轄労働局による実地調査が行われる場合もあります。いずれにしろ適切に要件を満たし、申請していれば問題はありません。協力的に対応しましょう。
適切な労務管理をしていること
労務管理が適切に行われていることを確認するため、労務管理に関する書類(賃金台帳、出勤簿、雇用契約書など)の提出が求められます。
適切な労務管理を行わず書類に虚偽の記載をおこなうと、不正受給として支給の取り消しだけでなく、罰則の対象となる場合があります。
関連記事:助成金の不正受給とは具体的にどのようなもの?罰則はある?
日々の労務管理を適切に行うことは必須です。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説助成金を受給できない事業主の要件
ここでは、雇用関係助成金における受給できない事業主の要件をまとめました。
- 平成31年4月1日以降に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定や支給決定の取り消しを受けた日から起算して5年が経過していない事業主
- 平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金で、申請事業主もしくはほか事業主の役員として不正受給を行う、もしくはそれに関与した役員などがいる
- 支給申請日の属する年度前のいずれかの保険年度で、雇用保険料を納めていない事業主
- 支給申請日の前日から1年前の日から支給申請日の前の日までの間に、労働関係法令に違反した事業主
- 性風俗関連営業や性風俗関連特殊営業(接待をともなう飲食の営業を行う)の事業主
- 暴力団とかかわりがある事業主または役員などがいる事業主
- 事業主や役員が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れのある団体に属している事業主など
- 事業主が支給申請日もしくは支給決定日の時点で、倒産している
助成金を受けるまでの流れ
最後に、助成金を受給するまでの流れについて解説します。申請期限をよく確認し、期限内に申請手続きを行えるように、余裕をもって準備しましょう。
1.申請する助成金を決める
まずは、自社の経営方針・事業活動に適している助成金を選定します。
このとき、「数多くある助成金の中から自社に適した助成金を探すことが難しい」という場合には、助成金申請サポートに相談することがおすすめです。助成金のプロの視点から、自社に適した助成金を提案してくれるでしょう。
2.実施計画を作成し、提出する
助成金が決まったら、その助成金の支給要件を達成するための取り組みについて実施計画を立てます。
先ほど例に出したキャリアアップ助成金(正社員化コース)であれば、パート・アルバイトなどの非正規雇用者を正社員に転換するために、「就業規則を改訂する」「転換のための試験内容を決定する」などの取り組みをすることが考えられます。
実施計画書や必要書類を準備したら、所定の機関に提出します。ほとんどの助成金は、申請書類のフォーマットが公式ホームページに用意されているため、必ず確認してください。
3.取り組みを実施
提出した実施計画書に従って取り組みを実施します。
実施計画書に記載した内容と異なる取り組みを行った場合、助成金が支給されない場合があります。必ず実施計画書の内容通りに取り組みを行いましょう。
4.支給申請を行う
取り組みを実施したら、助成金の支給申請を行います。支給申請期間、期日が設けられているため、忘れないようにしてください。
5.助成金を受給する
申請後、提出先の機関による審査が実施されます。実地審査が行われることもありますので、指示に従い審査に協力しましょう。
計画通りに取り組みが行われたと判断されれば、無事に助成金が支給されます。
まとめ
この記事では、助成金を受けるための支給要件や申請手順について解説しました。
助成金を受けるには、「助成金の支給要件を満たすこと」「適切に助成金を申請すること」の2つが必要です。しかし、はじめて助成金を申請する場合には、思ったよりも手間や時間がかかってしまうかもしれません。
そこで「助成金の要件を満たしているか不安」「自社の申請書類に不備がないか不安」という企業の方は、プロのコンサルタントに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。