誰もが職業を通じた社会参加できる「共生社会」の実現ため、厚生労働省は、障がい者の法定雇用率を2024年4月から2.5%以上、2026年4月から2.7%へと段階的に引き上げる方針を発表しています。

しかし、障がい者雇用に関する経験やノウハウがない企業も多いことから、認定事業者によるサポートが欠かせません。労働局に認定された事業者が、障害者雇用に関する知識・ノウハウ提供、障害者採用や雇用管理に関する支援を提供した際に受け取れる助成金が障害者雇用相談援助助成金です。

ここでは認定事業者向けに障害者雇用相談援助助成金の概要や支給要件、助成金額について詳しく解説します。

障害者雇用相談援助助成金とは

障害者雇用相談援助助成金とは、「企業を対象とした障がい者の雇い入れや雇用管理に関する相談援助事業を行う認定事業者を支援する制度」です。独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しています。

障がい者を雇用する事業主ではなく、援助を行う認定事業者を対象としていることに注意してください。
のちほど詳しく解説しますが認定事業者とは、「都道府県労働局長に認定を受けている、障がい者の雇い入れや雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する援助の事業を行う事業者」のことです。

対象となる8つの相談・援助

障害者雇用相談援助助成金における「障がい者の雇い入れや雇用に関する相談援助事業」における8つの取り組みについてまとめました。

経営陣の理解促進 経営や人材活用の方針の決定権などをもつ社長など経営陣に対して、障害者雇用促進法の趣旨やノーマライゼーションの観点から企業に求められている責任、障がい者雇用を通じた経営改善について理解促進を図ること。
障がい者雇用推進体制の構築
  • 障がい者雇用の担当者の明確化を図ること。
  • 属人化・形骸化しないよう、組織として障がい者雇用を推進していくための実効性のある体制の構築を図ること。
企業内での障がい者雇用の理解促進 以下のような内容について、障がい者を配属する現場の社員の理解促進を図ること。

  • 経営陣や人事部門の考える障がい者雇用の方針
  • 障がい者雇用のメリット
  • 働くうえで必要な合理的配慮
当該企業内における職務の創出・選定
  • 業務の選定やそれに伴い必要となる業務プロセス・組織体制の見直し、受け入れ部署の検討などに当たり、企業全体を把握して分析を行うこと。
  • 過去の事例等や他社の取り組み例を活かして、企業の本来業務につながる業務で、障がい者が活躍できるよう、企業内における職務の創出・選定を行うこと。
採用・雇用方針の決定 「職務の創出・選定」の結果を踏まえ、求めるスキルや経験、人物像の整理や採用・雇用方針を決定すること。
求人の申し込みに向けた準備など募集や採用活動の準備 以下のような求人に関する募集や採用活動の準備を行うこと。

  • 労働条件の設定
  • 募集媒体の選定
  • 応募状況に応じた条件の見直し
  • 書類選考や採用面接におけるチェックポイントの作成など
企業内の支援体制等の環境整備 以下のような必要な支援体制などの整備について検討し導入すること。

  • 労働者の障害の特性に配慮した施設・設備の整備
  • 援助する者の配置など
採用後の雇用管理や職場定着等
  • 採用後における、業務・作業環境・職場の人間関係などの職場適応上の課題が生じた際の課題の把握や予防、解決するための仕組みや体制づくりを行うこと。
  • 中長期的な活躍も視野に、職場適応状況や本人の希望を踏まえ、業務範囲や勤務時間の拡大等のキャリアアップの仕組みづくりを行うこと。

参照:障がい者雇用納付金関係助成金のごあんない|障害者雇用相談援助助成金

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障害者雇用相談援助助成金は誰が対象?

障害者雇用相談援助助成金の対象となる認定事業者・対象事業者・対象障がい者について解説します。

認定事業者の要件

障害者雇用相談援助事業の認定事業者として、労働局から認定を受けるための要件について、以下にまとめました。

法人要件 以下のいずれかを満たすこと

  • 障がい者の一連の雇用管理に関する相談援助の業務の経験を有すること
  • 障がい者の一連の雇用管理に関する実務の経験を有すること
人員要件
  • 障がい者の一連の雇用管理に関し、5年以上の業務または実務の経験を有し、2年以上の総括的な指導監督の経験を有する事業実施責任者
  • 障がい者の一連の雇用管理に関し、3年以上の業務または実務の経験を有する事業実施者を配置していること
その他
  • 法定雇用障がい者数以上の障がい者を雇用していること
  • 欠格事由に該当しないこと

参照:厚生労働省「障害者雇用相談援助事業の認定について」

対象となる認定事業者の支給要件

対象となる認定事業者の要件について、以下にまとめました。

  • 適正に障害者雇用相談援助事業を実施する能力を有する者として、主たる事業所の住所地を管轄する都道府県労働局長の認定を受けていること
  • 障害者雇用相談援助事業を行う事業者であること

一方、以下のいずれかに該当する場合には、助成金を受給できません。

  • 不正受給により、助成金の不支給措置が執られている事業主
  • 不正受給により生じた助成金の返還または納付の履行が終了していない事業主
  • 継続性を有する事業活動または法令を遵守した適切な運営がなされていない事業主
  • 労働関係法令違反により送検処分を受けた事業主(認定申請については当該申請を行おうとする日の前日から過去1年間に当該処分を受けた場合)
  • 厚生年金保険、健康保険、雇用保険等の加入義務がある事業主で、認定申請または支給請求しようとする日において、加入していない場合または加入していても支給対象障がい者およびその雇用する労働者の社会保険料等を支払っていない事業主
  • 助成金の支給に係る事業所において、性風俗関連特殊営業または接客業務受託営業を行っている事業主
  • 暴力団関係事業所の事業主
  • 役員などが、暴力主義的破壊活動を行ったまたは行うおそれのある団体に属している事業主

対象障がい者の支給要件

対象となる障がい者の要件についてまとめました。

  • 障害者雇用相談援助事業により当該障がい者の雇入れおよびその雇用の継続を図るための措置が行われたと認められる障がい者
  • 以下のいずれかに該当する障がい者
  1. 身体障がい者(特定短時間労働者は重度身体障がい者に限る)
  2. ロ 知的障がい者(特定短時間労働者は重度知的障がい者に限る)
  3. ハ 精神障がい者(精神障害者保健福祉手帳を保有している障がい者に限る)

ただし、以下に該当する場合には対象にならないため、注意が必要です。

  • 対象事業者の代表者もしくは役員など、それらの家事使用人、対象事業者と同居の親族または学生またはその雇用する対象障がい者のいずれかに該当する障がい者
  • 利用事業主の代表者もしくは役員など、それらの家事使用人、事業主と同居の親族または学生のいずれかに該当する障がい者
  • 利用事業主が、あらかじめ、その雇入れを予定していた対象障がい者
  • 就労継続支援A型事業所に雇用される対象障がい者
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障害者雇用相談援助助成金の助成金額

障害者雇用相談援助助成金の助成金額は、以下の表のとおりです。

支給対象 支給額
認定事業者が障害者雇用相談援助事業を行った結果、支援を受けた事業主が障がい者の雇入れのための措置を行った場合 60万円(80万円)
認定事業者が障害者雇用相談援助事業を行った結果、支援を受けた事業主が対象障がい者を雇い入れ、6か月以上その雇用が継続した場合 上記金額に、一人当たり7.5万円(10万円)上乗せ
※4人まで

※():認定事業者が中小企業事業主または除外率設定業種事業主(特に除外率引き下げによる影響の大きい企業)に相談援助を行った場合の支給額
※参照:厚生労働省「障害者雇用相談援助助成金」

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まとめ

この記事では障害者雇用相談援助助成金の概要や対象事業者、助成金額について詳しく解説しました。

障害者雇用相談援助助成金は、障がい者の雇い入れや雇用継続を支援する認定事業者を助成する制度です。そのため、受給するには労働局に認定されることが求められます。

支給要件や対象者が細かく規定されていることから、障害者雇用相談援助助成金の受給を検討している個人事業主の方は、プロのコンサルタントに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。