国や地方自治体が主導している助成金制度の中でも比較的多く活用されているキャリアアップ助成金ですが、その対象となる事業主の要件には組織の規模は記載されていません。
そのため、「個人事業主もキャリアアップ助成金を活用できるのか」と不安に思われる方も多いでしょう。
そこで、この記事ではキャリアアップ助成金の対象事業主の要件や個人事業主が申請する場合の要件、注意点を解説します。
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、「パート・アルバイトなどの非正規雇用労働者を対象に、正社員への転換・処遇改善などの取り組みを行った企業を支援する制度」です。
キャリアアップ助成金は、対象労働者や取り組み内容により、以下の6つのコースが定められています。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
支給要件や助成額はコースによって異なります。各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025最新】キャリアアップ助成金とは?助成額や申請の流れを解説


キャリアアップ助成金は個人事業主も対象! 条件とは?
キャリアアップ助成金は個人事業主も対象です。ここでは、全コース共通の対象事業主の要件や個人事業主が申請するための要件を解説します。
対象となる事業主
全コース共通の対象事業主の要件をまとめました。
- 雇用保険適用事業所の事業主
- 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
- 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
- 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする
- 書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
- 支給申請時点で各コースに定めるすべての支給要件を満たしている事業主
また、以下のいずれかに該当すると助成金を受給できないため、併せて確認しましょう。
- 支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
- 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
- 暴力団と関わりのある事業主
- 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
- 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
- 支給申請時または支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説キャリアアップ助成金を個人事業主が申請するための要件
キャリアアップ助成金は個人事業主も申請できますが、社会保険の適用について注意が必要です。
個人事業主も要件を満たす場合には社会保険の適用事業所となり従業員を社会保険に加入させることが必要です。
個人事業主であっても、従業員数や業種、労働時間などの条件を満たした場合には社会保険の適用事業所となり、従業員を社会保険に加入させる義務が発生します。
個人事業主であって「使用する従業員数が5人未満(※2)である」「非適用業種である(※3)」といった場合は社会保険へ加入させる加入は必要ありません。(※3)
※1 社会保険に加入させる義務のない短時間労働者を含みます。
※2 農林漁業、理美容業、飲食サービス業等が該当します。
※3 任意適用事業所である場合、従業員の希望の有無にかかわらず加入させる義務が発生します。
ただし、正社員化コースの場合には、社会保険の適用要件を満たす労働条件(週の所定労働時間数や月の所定労働日数)で雇用する必要があるため注意が必要です。
社会保険の適用条件
社会保険の適用対象となる適用事業所は、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」に区分されています。
強制適用事業所 | 社会保険への加入が義務となっている事業所のこと。 以下のどちらかに該当する場合、強制適用事業所
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任意適用事業所 | 強制適用事業所に該当しない事業所であって厚生労働大臣の認可を受けることで社会保険の適用事業所となることが出来る事業所のこと。 |
社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)、労災保険、雇用保険の適用条件についてまとめましたので、参考にしてください。
健康保険 | 常時5人以上の従業員を雇用する事業所 |
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厚生年金保険 | 常時5人以上の従業員を雇用する事業所 |
介護保険 | 健康保険に加入している40歳以上65歳未満の従業員がいる事業所 |
労災保険 | 1人以上の従業員を雇用する事業所 |
雇用保険 | 週20時間以上勤務かつ31日以上雇用する見込みがある従業員を一人以上雇用する事業所 |
加入義務のない個人事業主の多くは、社会保険に加入していません。しかし、加入することで、従業員のモチベーション向上や会社への信頼感の獲得につながる場合もあるかもしれません。キャリアアップ助成金の申請を契機に、社会保険への任意加入を検討してみても良いでしょう。


個人事業主がキャリアアップ助成金を申請する際の注意点
ここでは、個人事業主がキャリアアップ助成金を申請する際の注意点を解説します。
就業規則などの作成が必要
個人事業主がキャリアアップ助成金を申請する際にも、就業規則の作成・提出が求められます。
個人事業主であっても、従業員が10人以上いる場合には、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出を行う義務化があります。また、キャリアアップ助成金を申請する際には10人未満の事業場であっても就業規則を作成する必要があります。
キャリアアップ助成金に対応した就業規則の作成方法の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【規定例あり】キャリアアップ助成金に対応した就業規則とは?必要事項を解説
またこの他にも労働条件通知書・雇用契約書、賃金台帳や出勤簿を調整したうえで労務管理を適切に行い、それらの書類を提出する必要があります。個人事業主がキャリアアップ助成金を申請する際には、労務管理にかかる人手や工数も確保することが求められます。
1人以上の従業員の雇用が必要
キャリアアップ助成金の対象となる従業員に、事業主や取締役の3親等以内の親族(配偶者、3親等以内の血族や姻族)は含まれません。
そのため、親族以外に従業員を1人以上雇用することが必要です。また昼間学生や週の所定労働時間が20時間未満の人(※4)も適用対象外となることも覚えておきましょう。
※4 正社員化コースにおいて対象とすることは可能、ただし、正社員転換後は正社員と同等の所定労総時間とし雇用保険及び条件により社会保険の加入が必要。
経営状況に合った取り組みを行うこと
キャリアアップ助成金の支給要件を満たすには、「非正規雇用労働者の正社員化」や「処遇改善」に取り組む必要があります。
こうした取り組みは、人材確保や従業員のモチベーション・生産性向上につながる活動ではあるものの、費用も増加します。
そのため、経営状況をよく見極めたうえで正社員化や処遇改善に取り組まなければ、経営状況が悪化してしまう可能性もあります。
経営状況に不安がある場合には、プロの助成金コンサルに申請サポートを依頼することがおすすめです。経営的なアドバイスを受けられるとともに、適切な施策について提案してもらえます。
まとめ
この記事では、個人事業主がキャリアアップ助成金の対象となる条件や申請する際の注意点などを解説しました。
キャリアアップ助成金は個人事業主も申請することが可能です。従業員数が常時5人未満の個人事業主などの任意適用事業所の場合、社会保険への加入は任意ですが正社員化コースにおいては社会保険の適用要件を満たす労働条件で雇用する必要があるため、注意しなければなりません。
そのため、個人事業主の方は、キャリアアップ助成金を申請する際には助成金コンサルに相談してみることがおすすめです。確実な受給や経営状況に適した取り組みを行うためにも、まずは無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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