助成金は、「雇用促進」や「職場環境の改善」などの福利厚生に関する取り組みを支援するための制度です。
そのうち、「生産性向上を実現したいが、そのための設備導入に必要な資金調達が難しい」といった場合に、活用したいのが業務改善助成金です。

そこで、この記事では業務改善助成金の概要や目的、助成額・助成率などを解説します。

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【2024年10月予定】最低賃金が引き上げられる?

厚生労働省の発表によると、2024年10月ごろに最低賃金が50円を目安に引き上げられる予定です。50円の引き上げは過去最高額となることから、対応が必要な企業にとっては大きな負担になります。

そのため、国や地方自治体では最低賃金の引き上げに対応する組織を支援する制度が用意しています。その中の一つに業務改善助成金があり、活用することで最低賃金の引き上げによる人件費の負担を低減できます。

参考記事:【2024年】最低賃金の引き上げに対応する企業必見!支援制度を解説

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業務改善助成金とは

業務改善助成金とは、生産性向上のための設備導入、業務改善のためのコンサルティング依頼、人材育成にかかる研修などの取り組みを行いつつ、事業場内最低賃金を引き上げた事業主を支援する助成金です。

企業の生産性向上のための取り組みと最低賃金の引き上げを支援することで、事業場内の業務改善を図ることを目的としています。

令和6年度の変更点

令和5年からの主な変更点を以下にまとめました。

  • 新型コロナウイルスの影響を受けた事業者向けの「生産量要件」が終了
  • 「生産量要件」はたは「物価高騰等要件」の事業者に認められていた「関連する経費」が終了
  • 事業完了期限が2025年1月31日に変更
    ※ただし、やむを得ない事由がある場合、理由書を提出することで2025年3月31日にできる場合がある
  • 令和6年度中に可能な同一事業場の申請は年1回までに変更
  • 事業場内最低賃金の引き上げは1回のみ(複数回の引き上げは助成対象外)
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「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

業務改善助成金の支給要件

ここでは、業務改善助成金を受給するために、満たさなければならない支給要件について解説します。

対象となる事業主

業務改善助成金の対象となるのは、以下の3つを満たす事業主です。

  • 中小企業・小規模事業者
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由に当てはまっていない

中小企業・小規模事業者とは、以下の資本金または出資額と常時使用する労働者の2つの条件を満たす事業者のことです。

業種 資本金または出資額 常時使用する労働者
小売業 小売業、飲食店など 5000万円以下 50人以下
サービス業 物品賃貸業、宿泊業、医療・福祉、複合サービス事業など 5000万円以下 100人以下
卸売業 卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 農業、林業、漁業、建築業、製造業、運輸業、金融業など 3億円以下 300人以下

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下の2つのいずれかに該当する労働者です。

  • 事業場内最低賃金で働く労働者
  • 事業場内最低賃金である労働者の賃金を引き上げることにより、賃金額が追い抜かれる労働者

対象となる取り組み

業務改善助成金の対象となる取り組みは、「生産性向上・労働能率の増進」のための設備投資や人材育成などです。具体的な取り組みを以下にまとめました。

助成対象経費 一般事業者 特例事業者 具体例
生産性向上に資する設備投資など 【設備投資の例】
・POSシステムレジ導入→在庫管理の短縮
・フト付き特殊車両の導入→送迎時間の短縮
【経営コンサルティングの例】
専門家による業務フロー見直し→顧客回転率の向上
生産性向上に資する設備投資などのうち、
・定員7人以上または車両本体価格
・PC、スマホ、タブレットなどの端末と周辺機器の新規導入
×
関連する経費
(広告宣伝費、汎用事務機器、事務室の拡大、机・椅子の増設など)
× 【デリバリーを行う飲食店がバイクを導入した場合の例】
デリバリーサービスを周知するポスティング料金など

特例事業者は、以下の3つのいずれかに該当する事業者のことです。このうち、助成対象経費の拡充対象になるのは、生産量要件か物価高騰等要件に当てはまる事業者のみです。

  • 賃金要件:事業場内最低賃金が920円未満の事業場にかかる申請を行う事業者
  • 生産量要件:新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3か月間の月平均値が、前年、前々年又は3年前同期に比べ、15%以上減少している事業者
  • 物価高騰等要件:原材料費の高騰など社会的・経済的慣行の変化といった外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1月の利益率(売上高総利益率又は売上高営業利益率)が、前年同期に比べ、3%ポイント以上低下している事業者

申請書類や活用事例については下記にまとめていますので、あわせてご覧ください。
関連記事:【記入例あり】業務改善助成金の申請書類一覧!注意点もまとめて解説
関連記事:【業種別】業務改善助成金の活用事例まとめ!対象となる具体例も解説

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業務改善助成金の助成額・助成率

業務改善助成金の助成額・助成率を紹介します。

助成額

業務改善助成金の助成額は、生産性向上のためにかかった費用の一部を助成するものです。助成額は費用によって異なるため、ここでは助成上限額を紹介します。助成上限額は、賃上げの金額と引き上げる労働者数によって異なります。

コース区分 事業場内最低賃金の引き上げ額 引き上げる労働者数 事業者規模30人以上の事業者 事業者規模30人未満の事業者
30円コース 30円以上 1人 30万円 60万円
2~3人 50万円 90万円
4~6人 70万円 100万円
7人以上 100万円 120万円
10人以上※ 120万円 130万円
45円コース 45円以上 1人 45万円 80万円
2~3人 70万円 110万円
4~6人 100万円 140万円
7人以上 150万円 160万円
10人以上※ 180万円 180万円
60円コース 60円以上 1人 60万円 110万円
2~3人 90万円 160万円
4~6人 150万円 190万円
7人以上 230万円 230万円
10人以上※ 300万円 300万円
90円コース 90円以上 1人 90万円 170万円
2~3人 150万円 240万円
4~6人 270万円 290万円
7人以上 450万円 450万円
10人以上※ 600万円 600万円

※10人以上の上限区分は、特例事業者のみ対象

助成率

助成率は、申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって異なり、以下のようになっています。

870円未満 9/10
870円以上920円未満 4/5(9/10)
920円以上 3/4(4/5)

【2023年1月受付終了】業務改善助成金の「特例コース」とは

業務改善助成金の「特例コース」とは、通常コースと同様に、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に向けた取り組みにかかった費用を一部助成するものです。
新型コロナウイルスの影響や原材料費の高騰といった要因により、特定期間(令和3年7月16日~令和4年12月31日までの間)において利益率が5%以上低下した事業者を対象としています。

対象事業者

具体的な対象事業者は以下の2つの要件を満たす事業者です。

  • 以下の2つの要件のうち、どちらかを満たしていること

①新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高又は生産量等を示す指標の令和3年4月から令和4年12月までの間の連続した任意の3か月間の平均値が前年、前々年又は3年前同期に比べ、30%以上減少している事業者

②原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、令和3年4月から令和4年12月のうち任意の1月における利益率(売上高総利益率又は売上高営業利益率)が、前年同月に比べ5%ポイント以上低下している事業者

  • 令和3年7月16日から令和4年12月末までの間に事業場内最低賃金を30円以上引き上げていること
    (引き上げ前の事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の事業場に限ります。また、申請日までに引上げを完了し、引き上げた賃金を労働者に支払っておく必要があります。)

助成額

助成率は、かかった費用の3/4です。
助成上限額は、引き上げる労働者数に応じて以下のように決められています。

引き上げる労働者数
1人 2~3人 4~6人 7人以上
30万円 50万円 70万円 100万円

助成対象となる取り組み

生産性向上の設備投資などの他、業務改善計画に計上された「関連する経費」も助成対象となっています。

生産性向上の設備投資など 機械設備導入、コンサルティング依頼、人材育成・教育訓練など
関連する経費 広告宣伝費、汎用事務機器、事務室の拡大、机・椅子の増設など

2023年8月10日現在、特例コースは受付が終了しており、新たな申請はできません。詳細や最新情報は以下の厚生労働省のホームページをご覧ください。

関連記事:厚生労働省「業務改善助成金(特例コース)」

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まとめ

業務改善助成金は、業務を効率化し生産性を高め、さらに賃金の引き上げを実施することで経費の一部が支援される助成金です。

比較的通過率が高く、補助される金額が大きいため、効果的に利用することで自社の負担を軽減しつつ、事業体制を強化できます。従業員のモチベーションアップや優秀な人材の確保にもつながるため、長期的な経営戦略にも役立つでしょう。

業務改善助成金の申請については、プロの助成金コンサルタントに相談することがおすすめです。助成金・補助金の申請を検討される場合、まずは無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。