中央最低賃金審議会により、2024年度(令和6年度)の地域別最低賃金額改定の目安が公表されました。
賃上げにより労働者のモチベーション向上が期待できる一方で、企業の人件費が増えてしまい、大きな負担となる可能性があります。そのため、厚生労働省や中小企業庁は助成金・補助金などの支援制度を用意しています。
そこで、ここでは最低賃金の引き上げ額や引き上げによるメリット・デメリット、引き上げに対応するための支援制度について解説します。
目次
【2024年】全国最低賃金はいくら?
厚生労働省は、2024年度(令和6年度)の地域別最低賃金改正額の目安を「2023年度から50円引き上げる」と発表しました。
最低賃金額は、2024年10月ごろに引き上げが実施される見込みです。
実際に10月に改定されれば、1978年度以降に目安制度が始まって以降、過去最高の引き上げ額となります。
都道府県別の最低賃金
2024年の最低賃金改正額の目安を現在の最低賃金額に50円を加算すると、各都道府県の最低賃金額はどうなるのでしょうか。
まず、以下に最低賃金が1,000円を超える都道府県をまとめました。
最低賃金が1,000円を超える都道府県 |
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また以下に一律で50円を引き上げた場合の47都道府県の最低賃金の目安をまとめました。
都道府県 | 一律で50円引き上げられた場合の目安額 |
---|---|
北海道 | 1010円 |
青森県 | 948円 |
岩手県 | 943円 |
宮城県 | 973円 |
秋田県 | 947円 |
山形県 | 950円 |
福島県 | 950円 |
茨城県 | 1003円 |
栃木県 | 1004円 |
群馬県 | 985円 |
埼玉県 | 1078円 |
千葉県 | 1076円 |
東京都 | 1163円 |
神奈川県 | 1162円 |
新潟県 | 981円 |
富山県 | 998円 |
石川県 | 983円 |
福井県 | 981円 |
山梨県 | 988円 |
長野県 | 998円 |
岐阜県 | 1000円 |
静岡県 | 1034円 |
愛知県 | 1077円 |
三重県 | 1023円 |
滋賀県 | 1017円 |
京都府 | 1058円 |
大阪府 | 1114円 |
兵庫県 | 1051円 |
奈良県 | 986円 |
和歌山県 | 979円 |
鳥取県 | 950円 |
島根県 | 954円 |
岡山県 | 982円 |
広島県 | 1020円 |
山口県 | 978円 |
徳島県 | 946円 |
香川県 | 968円 |
愛媛県 | 947円 |
高知県 | 947円 |
福岡県 | 991円 |
佐賀県 | 950円 |
長崎県 | 948円 |
熊本県 | 948円 |
大分県 | 949円 |
宮崎県 | 947円 |
鹿児島県 | 947円 |
沖縄県 | 946円 |
参考:厚生労働省「最低賃金」
【企業向け】最低賃金の引き上げによるメリット・デメリット
最低賃金の引き上げによって企業が受けるメリット・デメリットを解説します。
メリット
最低賃金の引き上げにより、企業が受ける主なメリットをまとめました。
- 消費行動が活発化することで景気が回復し、業績が向上する可能性がある
- 経費削減のためにムダを見直すことで、事業体制を強化できる可能性がある
最低賃金が引き上げられた際に企業がメリットを受けるには、「売上を向上する」もしくは「経費を削減する」ことの2つにつながるように、経営を工夫する必要があります。
デメリット
最低賃金の引き上げにより、企業が受ける主なデメリットをまとめました。
- 人件費が増える
- 収益が悪化する可能性が高まる
- 新規人員の確保が難しくなる可能性がある
最も大きなデメリットは、「人件費が増大すること」です。その影響により、収益悪化や雇用の収縮につながる可能性があります。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説最低賃金引き上げに対応するための支援制度一覧
最低賃金引き上げに伴い、厚生労働省や中小企業庁では企業を支援するために助成金・補助金などの制度を設けています。
助成金・補助金とは、ビジネスを展開するうえでの取り組みを支援するためのお金です。国や地方自治体が主導している公的資金で、原則返済不要であることから多くの企業が利用しています。
ここでは、その代表例としていくつかの助成金・補助金について解説します。
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイトや契約社員、派遣社員などの非正規雇用労働者を「正社員への転換」「処遇改善」などの取り組みを実施した事業主を支援する制度です。
6つのコースのうち、最低賃金の引き上げに活用できるのは、「賃金規定等改定コース」です。
賃金規定等改定コースとは、非正規雇用労働者の基本給などの賃金規定を改定し、3%以上賃上げした企業に対して助成金が受給されるコースです。
以下に、賃金規定等改定コースの支給要件・助成額をまとめました。
支給要件
- 有期雇用労働者などの基本給の賃金規定を3%以上増額改定すること
- 6カ月以上にわたり待遇改善を継続すること
助成額
賃金規定等改定コースの助成額は以下のとおりです。
企業規模 | 賃金引き上げ率 3%以上~5%未満 |
賃金引き上げ率 5%以上 |
---|---|---|
中小企業 | 5万円 | 6万5,000円 |
大企業 | 3万3,000円 | 4万3,000円 |
また、職務評価の手法を活用して、賃金規定を増額改定した場合、中小企業は20万円、大企業は15万円加算されます。(なお、加算措置だった生産性要件は2023年3月31日で廃止されています。)
キャリアアップ助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024年最新】キャリアアップ助成金とは?各コースを徹底解説
業務改善助成金
業務改善助成金とは、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、かつ生産性向上のための設備投資等など行った中小企業・小規模事業者に対し、かかった費用の一部を支援する制度です。
以下に、業務改善助成金の支給要件・助成上限額・助成率をまとめました。
・支給要件
「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内」「解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がない」場合に、機器・設備の導入や経営コンサルティング、その他の取り組みを実施することが必要です。
・助成上限額
業務改善助成金の助成上限額は、「事業場内最低賃金の引き上げ額」「引き上げる労働者数」「事業場の規模」の3つの事項により異なります。
例えば、事業場規模30人未満の事業者が、2人の労働者の最低賃金を30円引き上げた場合、90万円が助成上限額となります。
助成率
業務改善助成金の助成率は、以下のとおりです。
900円未満 | 9/10 |
900円以上950円未満 | 4/5(9/10) |
950円以上 | 3/4(4/5) |
※()内は生産性要件を満たした事業場の場合
業務改善助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】業務改善助成金とは?概要や目的、助成額を徹底解説
賃上げ促進税制
賃上げ促進税制とは、青色申告書を提出している中小企業者などが、一定の要件を満たしたうえで前年度より給与の支給額などを増加させた場合に、その一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において、以下の税額控除が適用されます。
- 大企業・中堅企業:全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%
- 中小企業 :全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%
特に中小企業は、要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を、5年間繰り越しできます。
賃上げ促進税制の詳細は、中小企業庁のホームページをご覧ください。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者などが賃上げやインボイス導入などに対応するために、設備投資などの取り組みにかかる費用の一部を補助する制度です。
最低賃金引き上げを受けて、最低賃金引き上げ幅以上に賃上げの努力を行う場合、補助金の採択において加点措置が得られます。
ものづくり補助金の詳細は、ものづくり補助金のホームページをご覧ください。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が経営課題を解決するためにITツール導入にかかる費用の一部を補助する制度です。
最低賃金引き上げを受けて、最低賃金引き上げ幅以上に賃上げの努力を行う場合、補助金の採択において加点措置が得られます。
IT導入補助金の詳細は、IT導入補助金のホームページをご覧ください。
まとめ
この記事では、最低賃金の引き上げ額や引き上げによるメリット・デメリット、引き上げに対応するための支援制度について解説しました。
最低賃金が引き上げることで、多くの企業は人件費が増大する影響を受けることになるでしょう。そのため、助成金・補助金などの支援制度を活用し、事業体制の強化を図ることが大切です。
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