業務改善助成金の活用を検討しているものの、自社においてどのように活用できるのか今一つイメージが明確にできないという企業は多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では業務改善助成金の概要や各業種で対象となる設備投資の具体例を解説。また、建設業や運送業、介護・福祉業における実際の活用事例を紹介します。

業務改善助成金とは

業務改善助成金とは、生産性向上や業務改善のために設備導入、コンサルティング依頼、人材育研修などの取り組みを行いつつ、事業場内最低賃金を引き上げた事業主を助成する制度です。

業務改善助成金を活用することで、設備投資や事業内最低賃金の引き上げにかかる負担を軽減できます。

対象となる事業主

業務改善助成金の対象となるのは、以下の3つの事項を満たしている事業者です。

  • 中小企業・小規模事業者
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由に当てはまっていない

助成額・助成率

業務改善助成金は、設備導入やコンサルティング依頼などの取り組みにかかった費用の一部を助成します。そのため、助成額は一律で決められていません。

助成上限額は、引き上げる最低賃金額と労働者数、事業者規模により異なっており、30円コース、45円コース、60円コース、90円コースの4つのコースに分かれています。
例えば、事業者規模が30人以上の事業者が、労働者1人の最低賃金を30円引き上げた場合には、30万円を上限として助成されます。

助成率は、事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金により、以下のように異なります。

900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)
950円以上 3/4(4/5)

業務改善助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】業務改善助成金とは?概要や目的、助成額を徹底解説

業務改善助成金の活用事例①建設業

どのような取り組みにおいて業務改善助成金を活用できるのでしょうか。ここでは、業務改善助成金を活用した建設業の事例を紹介します。

建設業が活用できる助成対象の具体例

建設業で業務改善助成金を活用して導入できる設備(一部)を以下にまとめました。

  • 建設機械
  • 測量機器
  • CAD
  • 積算見積もりや工事管理などのソフトウェア

この他にも業務の自動化や省力化、品質向上などにつながる設備やソフトウェア、研修費用も対象となる可能性があります。

活用事例:業務設備をリースから自社保有に

愛知県にある従業員数8名の建設業者では、以下の課題を解決するために業務改善助成金を利用しました。

課題 業務用車両や工事用工具をリースで借りていたため、リース先に借りに行く時間やリース品の燃料補充や冷却に手間、コストがかかっていた。
取り組み内容 軽貨物自動車や工事用電動工具、工事用バッテリー2基を購入した。
結果 ・リース品の受け渡しや性能向上によりアイドリング時間がなくなり、作業時間が最大50%削減し、1日の作業量が倍増した。
・車両の走行距離や移動時間、ガソリン代が削減された。
成果 1人の従業員の時間給を107円引き上げた。さらに、事業場内最低賃金を上回る従業員の賃金の引き上げを実施した。

参考:厚生労働省「生産性向上のヒント集」

また、業務改善助成金以外に建設業者が利用できる助成金・補助金も、以下の記事で紹介しています。
関連記事:【2023最新】建設業が活用すべき助成金・補助金一覧!概要・受給額・補助率を紹介

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業務改善助成金の活用事例②運送業

ここでは、業務改善助成金を活用した運送業の事例を紹介します。

運送業が活用できる助成対象の具体例

運送業で業務改善助成金を活用して導入できる設備(一部)を以下にまとめました。

  • フォークリフト
  • 洗浄機
  • 特殊用途自動車
  • 顧客管理システムや経営管理システム
  • 配車システム

また、特例事業者の条件を満たしている事業者であれば、通常、助成対象経費として認められていない以下の経費も対象となります。運送業以外の業種も対象ではあるものの、運送業に必須の自動車の導入にも利用できる可能性があります。

  • 定員7人以上又は車両本体価格200万円以下の乗用自動車
  • 貨物自動車
  • パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入
  • 活用事例①:デジタルタコグラフの導入

    広島県にある運送業者での活用事例の一つ目を以下にまとめました。

    課題 ・貨物トラックのアナログ式のタコグラフを使用していたため、チャート紙を装着し、運行終了後に必要項目を記入する手間があった。
    ・ドライバーは最大20分以上(1人当たり)かけ、運行日報を手書きしていた。
    取り組み内容 デジタルタコグラフ(運行記録用計器)を導入した。
    結果 ・デジタコの導入で手書きする必要がなくなり、ボタン操作のみで時間や場所が記録され、電源オフで日報作成が完了するようになった。大幅な時間短縮につながり、その時間を他の業務に回せている。
    ・手書きによるミスがなくなり、時間管理が容易になった。
    成果 4人の労働者の時間給を50円引き上げた。

    活用事例②:乗用草刈り機・スイーパーの導入

    広島県にある業者での活用事例の二つ目を以下にまとめました。

    課題 ・通常の草刈り機での作業では、作業員の身体的負担と時間がかかっていた。300坪の草刈りに2人で2日、刈り取った草を手でかき集めるのに丸1日必要だった。
    取り組み内容 乗用草刈り機、スイーパーを導入した。
    結果 ・乗用草刈り機の導入で、作業員の身体的負担を軽減でき、大幅な作業進行の遅れがなくなった。2度刈りする必要もなくなり、作業時間は1/2に短縮された。
    ・スイーパーの導入で、今まで1日かかったところが、半日で済むようになった。
    成果 4人の労働者の時間給を110円引き上げた。

    これらの事例の詳細は、以下の厚生労働省のホームページをご覧ください。
    参考:厚生労働省広島労働局「業務改善助成金(中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金)」

    また、業務改善助成金以外に運送業者が利用できる助成金・補助金も、以下の記事で紹介しています。
    関連記事:【最新版】運送業者が利用したい助成金・補助金一覧!

    業務改善助成金の活用事例③介護・福祉業

    ここでは、業務改善助成金を活用した介護・福祉業の事例を紹介します。

    介護・福祉業が活用できる助成対象の具体例

    介護・福祉業で業務改善助成金を活用して導入できる設備(一部)を以下にまとめました。

    • POSレジ
    • 福祉車両
    • 歯科用チェアユニット
    • 施術・医療ベッド
    • 診療予約システム
    • 既存設備の増設・レイアウト変更

    介護・福祉業も従業員の身体的負担を軽減するハードやソフトウェアが多く提供されています。こうした設備やシステムを導入することで、従業員が長期的に働きやすい環境づくりにも貢献できるでしょう。

    活用事例①:リフト付き福祉車両などの導入

    滋賀県にある従業員数8名の障がい者福祉事業者では、以下の課題を解決するために業務改善助成金を利用しました。

    課題 ・車いす利用者の送迎に2名のスタッフがすべて人力で行っており、身体的負担がかかっていた。
    ・洗濯機に乾燥機能がないため、干したり取り込んだりする手間と時間がかかっていた。
    ・冷蔵庫の容量が小さく、毎日買い出しに行く必要があった。
    取り組み内容 リフト付き福祉車両、乾燥機付き洗濯機、大容量冷蔵庫を導入した。
    結果 ・車いす利用者の送迎時間や買い出し回数が半減した。
    ・洗濯物を干したり、取り込んだりする必要がなくなった。
    成果 5人の労働者の時間給を90円引き上げた。さらに、事業場内最低賃金を上回る従業員の賃金の引き上げを実施した。

    参考:厚生労働省「生産性向上のヒント集」

    活用事例②:電動式ベッドなどの導入

    愛媛県商工会連合会の紹介している事例を以下にまとめました。

    課題 利用者の移乗や起き上がり補助を複数名で行う場合が多くあり、効率的に作業を進めることが困難だった。
    取り組み内容 電動式ベッド(調節機能付)を導入した。
    結果 ベッドの高さ調節などが可能になったことで、1人でスムーズに作業を行うことが可能となり、作業効率が向上した。

    参考:愛媛県商工会連合会「業務改善助成金について」

    また、業務改善助成金以外に介護・福祉事業者が利用できる助成金・補助金も、以下の記事で紹介しています。
    関連記事:【目的別】介護事業で利用できる助成金・補助金とは?
    関連記事:【2023最新】福祉施設で利用できる助成金・補助金一覧!

    まとめ

    この記事では、業務改善助成金の概要や各業種で活用できる具体例を解説。また、実際に活用した事例を紹介しました。

    業務改善助成金を活用することで、作業効率が向上し、最低賃金の引き上げにかかる金銭的な負担を低減できます。企業側だけでなく、従業員にとっても嬉しい取り組みになるため、モチベーションが向上し、人材確保の効果も期待できるでしょう。

    助成金をはじめて活用する場合には、プロのコンサルに申請サポートを依頼することがおすすめです。スムーズに申請手続きを行うために、まずはプロのコンサルティング業者に相談してみてはいかがでしょうか。
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    黒沢晃
    黒沢晃(助成金コンサルタント)
    商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。