最近では、男女雇用機会の均等化や高齢者の雇用機会創出、そして障がい者の雇用促進において企業に求められる役割は増えてきています。
障がい者雇用を進めるにあたり、設備や管理機器の導入など、さまざまな投資が必要になる企業も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では障がい者雇用における助成金の概要や種類、申請する際の注意店について解説します。
障がい者雇用における助成金制度とは
障がい者雇用により助成金を申請できます。ここでは、各助成金の目的、対象について解説します。
助成金の概要はこちらをご覧ください。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!
障がい者雇用における助成金の目的
障害者雇用促進法が制定されてから、法定雇用率(定められている障がい者雇用率)の達成が義務化されています。2023年7月現在の法定雇用率は2.3%で、従業員を43.5人以上雇用している企業であれば障がい者を1人以上雇用しなければなりません。2024年4月には2.5%、2026年には2.7%と段階的に引き上げられることが決まっています。
これに伴い、企業は障がい者の方が安全かつ個性を活かして働けるように職場環境や体制を整える必要があります。そのためには、新たな資金調達が欠かせません。
そこで、事業主が法令を遵守し、障がい者雇用を行うための支援をする目的で助成金制度を用意しているのです。
障がい者雇用における助成金の種類
障がい者雇用における助成金には、事業者のさまざまな取り組みを支援できるよう、多くの種類の助成金が用意されています。おもに、以下のような種類があります。
- 障がい者を新たに雇用する取り組み
- 障がい者が安全に働けるように施設や設備の整備、雇用管理の改善
- 障がい者の職業能力開発に関する取り組み
- 職場定着のための体制づくり
事業が障がい者雇用のためにどのような取り組みを行ったかにより、申請できる助成金は異なります。基本的に、障がい者雇用のためにどのような取り組みを実施したかが大切になってくることを覚えておきましょう。
障がい者雇用における助成金の対象
障がい者雇用の助成対象になるのは、以下の障がい者です。
- 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をもっている障がい者
- 統合失調症
- 躁うつ病
- てんかん
また、こうした障がいをもつ方を雇用していれば受給できるわけではなく、事業主は助成金ごとの受給要件を満たす必要があります。共通要件としては、以下の2点が挙げられます。
- 雇用保険適用事業所である
- 支給のための審査に協力する
ご紹介した以外に、各助成金によって異なるため最新情報を確認することがおすすめです。
【目的別】障がい者雇用の助成金一覧
障がい者雇用に関する助成金を、目的別に紹介します。
【雇用】特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、一般的に雇用が困難だと考えられる対象者を、事業者が雇用した際に支援される制度のことです。
8つのコースのうち、障がい者雇用にかかわるコースは以下の2つのコースです。
・特定就職困難者コース
ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介を受けて、高齢者や障害者を継続して雇用する事業主に対して助成されるコースです。
支給額は障がい者の労働時間や類型、企業の規模によって異なります。詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介を受けて、発達障がい者・難病患者を継続して雇用する事業主に対し助成金が支給されるコースです。受給においては、雇用した労働者の配慮事項などの報告や雇用から約半年後に職場訪問の対応が必要です。
支給額は障がい者の労働時間や類型、企業の規模によって異なります。詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」
【雇用】トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
トライアル雇用助成金とは、就職が難しいと思われる特定の求職者を、トライアル期間を設けて試用雇用することで支援される制度のことです。
そのうち、障がい者雇用にかかわるコースは、以下の2つのコースです。
・障害者トライアルコース
企業と障がい者の相互理解を目的として、ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介を受けて、就職が困難な障がい者を一定期間雇用する場合に助成されるコースです。
支援対象者一人につき、以下の受給額が支援されます。
- 対象労働者が精神障害者の場合、月額最大8万円を3か月、月額最大4万円を3か月(最長6か月間)
- 1以外の場合、月額最大4万円(最長3か月間)
障害者短時間トライアルコース
障害者トライアルコースと同様であるものの、短時間労働であることが特徴のコースです。週の所定労働時間を10時間以上20時間未満としつつ、障がい者の体調や状況に合わせて期間中に20時間以上の労働を目指します。
受給額は支援対象者一人につき、月額最大4万円(最長12か月間)です。
詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」
【施設の設備や雇用管理】障害者雇用納付金制度に基づく助成金
障がい者雇用納付金に基づく助成金とは、事業主が法定雇用率を守るために施設・設備の整備や雇用管理のための特別な措置を実施しなければ障がい者の雇用が難しいと認められた場合に助成される制度です。
このうち、施設の設備や雇用管理においては、以下の5つの助成金が挙げられます。
- 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金
- 障害者介助等助成金
- 重度障害者等通勤対策助成金
- 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
- 職場適応援助者助成金
それぞれ受給条件や受給額などが異なるため、詳細は高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のホームページをご覧ください。
参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「助成金」
【職業能力開発】人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)
職業に応じて、障がい者に必要な能力を開発・向上させるために、教育や訓練を継続的に行う施設を運営する事業主や事業団体を助成するコースです。
支給額は、施設や設備の設置・更新にかかった費用や運営費の一部を助成するものとなっており、対象となる訓練や障がい者によって異なります。詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「障害者職業能力開発コース」
【職場定着】キャリアアップ助成金(障害者正社員コース)
障がい者の職場定着を図るために、障がいのある有期雇用労働者などを正規雇用労働者へと転換した事業主を助成するコースです。
支給額は、障がい者の類型や企業の規模によって異なります。詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」
こちらでもキャリアアップ助成金について解説していますので、ぜひご覧ください。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説障がい者雇用の助成金を利用する注意点
障がい者雇用の助成金を利用する注意点を解説します。
障がい者が働きやすい職場環境を整える
障害者雇用促進法の改正によって、雇用における「差別の禁止」や障がい者が働くための「合理的配慮の提供」が義務化されました。
すべての障がい者が適応することは難しいかもしれません。しかし、障がい者のできることに目を向けることで、働きやすさは大きく変わるでしょう。管理制度の改善や周囲の従業員のサポート体制を得られるように取り組むことで、障がい者も活躍できる環境整備を目指してください。
実雇用率の対象かどうかを確認する
正社員や短時間勤務などのさまざまな働き方が存在していますが、障がい者も同様です。
しかし、ここで注意しなければならないのは、法定雇用率を満たす実雇用率の対象になっているかどうかを確認することです。
原則、所定労働時間が30時間以上、1年以上の雇用が見込まれる「常用雇用労働者」である労働者が実雇用率の対象になっています。
ただし、労働時間や障がい者の類型によって以下のようにカウントされます。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」である場合、0.5人としてカウントされる
- 常用雇用労働者の重度身体障害者・重度知的障碍者は、1人を2人としてカウントされる
- 短期労働者の重度身体障害者・重度知的障碍者は、1人としてカウントされる
- 短期労働者の精神障害者は、2023年3月31日までの特例措置により、1人としてカウントされる
まとめ
障がい者の雇用の機会をつくり、自立できる体制をつくることは、現代の企業が求められている社会的な役割の一つです。
しかし、障がい者雇用はどうしても管理において企業に負担がかかりやすいといえます。そのため、企業は多様化を促進するうえで助成金を利用することがおすすめです。
受給条件をしっかりと確認し、申請できる助成金は積極的に利用しましょう。
助成金・補助金の申請を検討される場合、まずは無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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