人材不足が問題となっている現在では、人材雇用だけでなく人材の育成に注力することが増えています。しかし、従業員の教育訓練にかかる費用にお悩みの企業も多いでしょう。
そうした場合に活用したいのが「人材開発支援助成金」です。ただし、コースやメニューにより申請手順が異なる人材開発支援助成金を正しく申請するには、全体の流れを理解することが大切です。
そこで、この記事では人材開発支援助成金の申請方法や申請書類について詳しく解説します。
目次
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、雇用する労働者に対して、職務に関連する専門的な知識や技能の習得のための職業訓練などを計画・実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
取り組み内容によって、以下の6つのコースに分かれています。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
障害者職業能力開発コース(令和6年4月から障害者能力開発助成金へと移管)
各コースの概要や助成額・助成率などは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材開発支援助成金とは?わかりやすく各コースを解説
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の申請方法
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)では、「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練(基本型)」「有期実習型訓練(キャリアアップ型)」といった取り組み内容により手続きの流れが一部異なります。
ここでは、人材育成支援コースにおける各取り組み別の大まかな申請方法について解説します。
1.職業能力開発推進者の選任
まず、どのコースにおいても基本的に事業所ごとに1名以上の職業能力開発推進者の選任を行います。(労働者が100名以上の事業所で適任者がいない場合には、本社と事業所の職業能力開発推進者を兼任させることも可能です。)
職業能力開発推進者とは、「社内で職業能力開発の取り組みを推進する人」です。
事業内職業能力開発計画の作成・実施、職業能力開発に関する労働者への相談・指導などを行う必要があるため、こうした権限をもった人を選任する必要があります。例えば、教育訓練部門や労務・人事部門の部課長などが挙げられます。
2.事業内職業能力開発計画の策定
次に、事業内職業能力開発計画を策定し、従業員に周知します。
事業内職業能力開発計画とは、「人材育成の基本的な方針や目標などを示す計画」です。
従業員の職業能力開発について、経営者と従業員が共通の認識をもち、目標に向かって取り組むことで効果的な職業能力開発を実現するために策定します。また従業員の自発的な学習意欲の向上にもつながります。
3.【訓練別】認定/キャリアコンサルティングを受ける
「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練(基本型)」「有期実習型訓練(キャリアアップ型)」の場合には、以下のいずれかの対応が必要です。
【認定実習併用職業訓練の場合】
実習併用職業訓練の場合、実習併用職業訓練として厚生労働大臣の認定を受けることが求められています。
認定要件には、15歳以上45歳未満の新卒入社予定以外のすべての対象者が、キャリアコンサルティング(訓練の必要性に関する面接)を受けることが挙げられます。
認定を受けるには、①実践型人材養成システム実施計画の提出(訓練開始の30日前まで)、②審査を受ける、③認定通知書の交付の3つの手順を踏むことが必要です。
そのため、実践型人材養成システム実施計画の提出は訓練開始の30日前までですが、確認や審査に時間がかかることが多いため、早めに申請することが推奨されています。
【有期実習型訓練の場合】
有期実習型訓練の場合、すべての対象者が訓練実施前にキャリアコンサルティングを受けることが求められています。ただし、対象者の雇い入れ時期によって以下のようにキャリアコンサルティングのタイミングが異なります。
対象者 | キャリアコンサルティングのタイミング | |
---|---|---|
有期実習型訓練(基本型) | 新たに雇用する有期契約労働者 | 職業訓練実施訓練届を作成し、労働局に提出後 |
有期実習型訓練(キャリアップ型) | すでに雇用している有期契約労働者 | 職業訓練実施計画届を作成し、労働局への提出前 |
4.職業訓練計画の作成・提出
訓練開始日から起算して1か月前までに「職業訓練計画届」などの必要書類を作成し、労働局に提出します。
なお、計画の内容に変更がある場合には、変更届の提出が必要です。
5.訓練の実施
職業訓練計画に則って、訓練を実施します。
訓練にかかる費用は、支給申請までに支払いを完了していることが必要です。経費における領収書については、必ず保管しておきましょう。
また認定実習併用職業訓練や有期実習型訓練の場合には、訓練終了後に「ジョブ・カード 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により対象者の評価を実施してください。
6.支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、以下のような定められた書類を労働局に提出します。
- 「支給申請書」「支給要件確認申立書」などの必要書類
- 「賃金台帳または給料明細書」「雇用契約書または労働条件通知書」などの添付書類
7.助成金の支給が決定
提出した書類をもとに、労働局で審査が行われます。
問題がなく助成金が支給される場合には「支給決定通知書」が、何らかの問題があり不支給の場合には「不支給決定通知書」が送付されます。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の申請書類
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の申請書類一覧をまとめました。
1.計画届(変更届)を提出する場合 | 2.支給申請を行う場合 |
---|---|
職業訓練実施計画届 | 支給申請書 |
訓練実施計画届 | 支給申請書の別添 (有期契約労働者等を対象とした訓練の実施状況) |
通信制訓練実施計画書 | 賃金助成及びOJT実施助成の内訳 |
職業訓練実施計画変更届 | 経費助成の内訳 |
訓練実施計画変更届 | 一般教育訓練等の受講証明書・受講修了証明書 |
訓練別の対象者一覧 | OFF-JT実施状況報告書 |
OFF-JT部内講師要件確認書 | 訓練実施結果報告書 |
OFF-JT部外講師要件確認書 | eラーニング訓練実施結果報告書 |
事前確認書 | 通信制訓練実施結果報告書 |
事業所確認票 | OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌) (認定実習併用職業訓練・有期実習型訓練) |
有期実習型訓練に係る訓練カリキュラム | 支給申請承諾書(訓練実施者) |
認定実習併用職業訓練に係るOJTカリキュラム | 育児休業中訓練の受講に関する申立書 |
有期実習型訓練に係る事前確認書 | 賃金要件等確認シート |
以下の記事で、人材育成支援コースにおける申請書類を詳しく解説しています。申請時にご活用ください。
関連記事:【記入例あり】人材開発支援助成金の申請書類一覧!注意点もまとめて解説
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)の申請方法
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)の申請方法について解説します。
1.職業能力開発推進者の選任
人材育成支援コースと同様に、職業能力開発推進者を事業所ごとに1名以上選出します。
2.事業内職業能力開発計画の策定
人材育成支援コースと同様に、事業内職業能力開発計画を策定し、従業員に周知します。
3.制度の導入や適用計画の作成・提出
以下の項目などを検討し、「制度導入・適用計画届」を作成します。
- 導入する制度の種類
- 制度の導入・適用のスケジュール
- 制度の内容(対象とする労働者や対象とする訓練など)
- 就業規則または労働協約の記載内容など
作成後は、制度導入・適用計画期間の初日から起算して6か月~1か月前までの間に、主たる事業所を管轄する労働局に提出します。
4.制度の導入
就業規則または労働協約に制度の施行日を明記し、以下のとおりに制度を導入します。
・常時10人以上の労働者を使用する事業主が就業規則に制度を規定する場合
制度施行日までに、制度を規定した就業規則を労働基準監督署へ届け出てください。
・常時10人未満の労働者を使用する事業主が就業規則に制度を規定する場合
制度施行日までに、制度を規定した就業規則を労働基準監督署に届け出るか、制度施行日までに、制度を規定した就業規則の実施について、事業主と労働者代表者(雇用するすべての労働者の代表者)による申立書を作成してください。
・労働協約に制度を規定する事業主の場合
制度を規定した労働協約に、労働組合と使用者の双方が署名または記名押印してください
制度施行日までに就業規則を監督署へ届け出なかった場合は、助成金は受給できなくなるため、注意が必要です。
5.制度の適用
「制度導入・適用計画届」に記載した計画に則って、被保険者に制度を適用します。その際、制度ごとに適用要件があるため、満たす必要があります。
例えば、教育訓練休暇制度の場合には、以下の2つの適用要件のいずれも満たすことが求められています。
- 制度導入・適用計画期間(3年間)のうちに、企業全体で雇用する被保険者数に応じ、下記表に定める最低 適用被保険者数の被保険者にそれぞれ5日以上付与すること
- 制度導入・適用計画期間(3年間)の初日から1年ごとの期間のうちに、被保険者1人以上に当該休暇を付与すること
6.支給申請
制度ごとに定められた日の翌日から起算して2か月以内に、以下のような定められた書類を労働局に提出します。
- 「制度導入支給申請書」「支給要件確認申立書」などの必要書類
- 「賃金台帳」「雇用契約書または労働条件通知書」などの添付書類
7.助成金の支給が決定
提出した書類をもとに、労働局で審査が行われます。
問題がなく助成金が支給される場合には「支給決定通知書」が、何らかの問題があり不支給の場合には「不支給決定通知書」が送付されます。
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)の申請書類
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)の計画提出時に必要な申請書類についてまとめました。
- 制度導入・適用計画届
- 事業所確認票
- 事前確認
- 事業所の所在を確認できる書類(ホームページの該当部分など)
- 制度を規定する前の就業規則または労働協約(写)
※ 常時10人未満労働者を使用する事業主の場合、事業主と労働者代表者による申立書の添付が必要 - 制度を規定した後の就業規則または労働協約の案(写)
教育訓練休暇等付与コースでは、制度によって支給申請時の必要書類が異なります。以下の記事で詳しくまとめていますので、参考にしてください。
関連記事:【記入例あり】人材開発支援助成金の申請書類一覧!注意点もまとめて解説
まとめ
この記事では、人材開発支援助成金の申請方法や申請書類について解説しました。
人材開発支援助成金は、コースやメニューにより取り組む内容や支給の流れ、申請方法が異なります。そのため、申請方法をよく理解することが申請手順の漏れや抜け、間違いの防止になるでしょう。
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