介護事業の現場では、人材不足や劣悪な労働環境などが常態化していることが、社会的にも問題になっています。しかし、なかなかその解決に着手できない事業主が多いのではないでしょうか。
そうした問題の解決を資金的な面で支援する制度が、助成金・補助金です。うまく利用することで、現状を改善するための費用を抑えることができるでしょう。

そこで、この記事では助成金・補助金の概要や、介護事業に利用できる助成金・補助金について解説します。

助成金・補助金とは

まずは助成金・補助金について理解しましょう。

助成金とは

助成金とは、国や地方公共団体から、お金が支給される制度のことです。要件を満たしていれば基本的に受給されるため、資金調達に苦労している介護事業者や個人で介護されている方にも多く利用されています。

助成金の詳細については以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

補助金とは

補助金も、国や地方公共団体からお金が支給される制度のことです。補助金によっては多額な支援を受けられる可能性があります。
ただし、支援を受けるには、要件を満たすだけでなく、審査を受けて採択される必要があります。

助成金・補助金の違い

助成金・補助金はどちらも原則、返済不要で受けられる支援金です。ただし、審査を通過することが必要な補助金の方が、受給難易度が高いという特徴があります。

助成金と補助金違いについては以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:補助金と助成金の違いとは?交付金や給付金との違いもわかりやすく解説

介護事業を円滑に進めるために、各助成金・補助金の活用を検討することは、資金調達するうえで有効な一つの手といえます。

介護事業に利用できる助成金・補助金

ここから、実際に介護事業に利用できる助成金・補助金の一覧を紹介します。年度ごとに支給金額や要件などが変更になる可能性があるため、気になる助成金・補助金を見つけたら、各URLから最新情報を確認してください。

「人材雇用」に利用できる助成金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。

正社員化を支援する2コースと、処遇改善を支援する5コースの合計7コースが設けられています。

関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!

参照:厚生労働省:事業主の方のための雇用関係助成金「6.雇用環境の整備関係等の助成金」

トライアル雇用助成金

職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間、試行雇用した場合に助成するものです。雇用前にトライアル(お試し)期間を設けることで、受給対象となります。

一般トライアルコース、障害者トライアルコースなど、対象者ごとに複数のコースが設けられています。

関連記事:トライアル雇用助成金で採用ミスマッチ防止!コスト削減にも

参照:厚生労働省:事業主の方のための雇用関係助成金「5.雇入れ関係の助成金」

特定求職者雇用開発助成金

ある特定の求職者を雇用した場合に助成するものです。対象によっては複数年の支援を受けることができます。特定の求職者とは、障害者や母子家庭の母親などの相対的な貧困層が対象となっています。

特定就職困難者コースや被災者雇用開発コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースなど、対象者ごとに8つのコースが設けられています。(令和4年度末で生涯現役コースは廃止となり、特定就職困難者コースの対象となる予定)

関連記事:特定求職者雇用開発助成金で雇用の可能性を広げよう!

参照: 厚生労働省:事業主の方のための雇用関係助成金「5.雇入れ関係の助成金」

中途採用等支援助成金

中途採用の拡大や、東京圏から地方への移住者の雇い入れなど、雇用環境を整え、雇用の機会を設けている事業者を支援するものです。

中途採用拡大コースやUIJターンコース、生涯現役企業支援コースの3つのコースが設けられています。

参照:厚生労働省:事業主の方のための雇用関係助成金「4.転職・再就職拡大支援関係の助成金」

65歳超雇用推進助成金

65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成するものです。高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現することを目的としています。

65歳超継続雇用促進コースや高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースの3つのコースが設けられています。

関連記事:「65歳超雇用推進助成金」

参照:厚生労働省:事業主の方のための雇用関係助成金「6.雇用環境の整備関係等の助成金」

「離職率低下」に利用できる助成金

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年間促進支援コース)

生産性を向上させ、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援する制度です。

関連記事:「働き方改革推進支援助成金」とは?基本情報や2023年の実施予定を徹底解説!

参照:厚生労働省:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)

「介護支援プラン」を策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主、または介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、利用者が生じた中小企業事業主に支給するものです。

関連記事:両立支援等助成金を活用して社員の介護離職を防ごう

参照:厚生労働省:仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等のみなさまへ

「設備の導入」に利用できる助成金・補助金

ICT導入支援事業補助金

ICTツール導入した介護事業所を対象に支給される補助金です。ICT機器の導入を支援することで、介護事業所の業務効率化を図り、職員の負担軽減の実現を目的としています。

似た制度に、経済産業省が主導する「IT導入補助金」がありますが、ICT導入支援事業は厚生労働省が主導している制度となっています。

参照:厚生労働省:介護現場におけるICTの利用促進

「個人での介護」に利用できる助成金・補助金

家族介護慰労金

介護保険の要介護4・5に認定された家族を、介護保険サービスを利用せずに、在宅で介護した家族に支給される慰労金です。

自治体ごとに申請方法や条件の詳細が異なるため、各自治体のホームページを確認してください。

介護休業給付金

家族の介護のために介護休業を取得した際、給料の67%が保証される給付金です。雇用期間が1年以上あれば正社員だけではなく、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員も取得対象となっています。

参照:厚生労働省:介護休業とは
参照:厚生労働省:Q&A~介護休業給付~

居住介護住宅改修費

介護のために住宅改修にかかった費用を一部が支援される制度です。要介護認定を受けている被保険者が自宅の住宅改修を行う場合に、20万円を上限として、工事費用の7~9割が支給されます。

各区市町村のホームページから詳細を確認してください。

高額療養制度

医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減する仕組みも設けられています。

参照:厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ

高額介護サービス費制度

1ヶ月に支払った自己負担の合計が負担限度額を超えた場合に、超過分が払い戻しされる制度です。介護保険サービスの自己負担額は所得によって1~3割となっていますが、住居サービスなどを日常的に利用していると、高額になる場合があります。その場合、自治体に申請することで、支援を得ることができます。

詳細はお住いの自治体のホームページをご覧ください。

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

地域ごとに利用できる助成金・補助金の探し方

地方自治体の中には、介護事業の支援のために助成金・補助金を独自に実施している場合があります。

以下に、一部地域のホームページを抜粋しましたので、都道府県のページを確認してみましょう。

国のホームページだけでなく、地方自治体のホームページでも最新情報をチェックしてみると、自社に適した助成金・補助金を見つけられるかもしれません。定期的に確認することをおすすめします。

まとめ

介護事業の課題になりやすい人員確保やそのための環境整備において、利用できる助成金・補助金は数多くあります。そのため、自社の経営活動に課題を感じている場合には、一度申請を検討してみるとよいでしょう。

国や地方自治体のホームページを定期的に確認し、自社に適した助成金・補助金を見つけてください。
また、以下の無料診断を受けていただくことでも検索できますので、ぜひご利用ください。

助成金のWeb無料診断はこちらから

助成金申請を完全サポート 助成金申請を完全サポート
弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。