働き方改革の一環として、テレワーク(リモートワーク)の導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
しかし、導入するためには設備面やセキュリティ面など、さまざまな準備が必要です。そうした準備にかかる費用を軽減するため、助成金・補助金を利用する企業が多くあります。

そこで、この記事ではリモートワーク(テレワーク)に利用できる助成金・補助金の紹介や無料相談先、申請する際の注意点についても解説します。ぜひ参考にしてください。

助成金・補助金とは

リモートワーク(テレワーク)導入の資金調達の手段として、助成金・補助金について理解しましょう。助成金・補助金はともに、返済不要な公的資金の援助であるため、多くの企業が活用しています。

助成金とは

助成金とは、「会社経営者・事業主を支援するために、厚生労働省や地方自治体が助成するお金」のことです。一般的には、受給要件を満たし法令遵守していれば受給できます。

補助金とは

補助金とは、「経済産業省や地方自治体が、特定の取り組みにかかる費用を補助するためのお金」のことです。補助金は、種類ごとに予算が決められており、事業計画書などをもとに審査が実施されます。そのため、受給要件を満たしていても、審査により落選する可能性があります。

その他にもさまざまな違いがあるため、詳細については以下の記事をご覧ください。
関連記事助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!
関連記事補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

各助成金・補助金を有効活用することで、働き方改革の推進につながります。

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テレワーク(リモートワーク)導入に利用できる助成金

テレワーク(リモートワーク)導入に利用できる助成金を紹介します。

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

この制度は、テレワークを導入し、労働者の人材確保や雇用管理改善などの成果を上げた中小企業事業主を対象とした助成金制度です。

支給対象となる範囲は、以下の実施に要した費用となります。

  • 就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • テレワーク用通信機器等の導入・運用
  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修

テレワークコースでは、「機器等導入助成」と「目標達成助成」という2種類の助成が設定されています。以下がそれぞれの受給要件です。

  • 機器等導入助成:期間内に1回以上、対象者がテレワークを実施する
  • 目標達成助成:実施後の離職率が、実施前の離職率以下かつ30%以下である

また、助成金額は以下のとおりです。

  • 機器等導入助成:1企業あたり、支給対象にかかった費用の30%
  • 目標達成助成:1企業あたり、支給対象にかかった費用の20%(賃金要件を満たす場合35%)

人材確保等支援助成金の申請は以下のように行いましょう。

  1. 雇用管理制度計画を労働局に提出し、申請する
  2. 雇用管理制度計画に基づき、事業を実施する
  3. 事業が完了したら、支給申請書を2カ月以内に労働局に提出する
  4. 助成金が支給される

人材確保等支援助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】人材確保等支援助成金とは?各コースを徹底解説

【東京都】テレワーク促進助成金

この制度は、都内事業所を対象に、正社員や非正社員の在宅勤務・モバイル勤務などの実現のため、テレワーク機器・ソフトウェアなどの環境整備にかかる経費の支援制度です。「一般コース」と「非正規社員拡充コース」の2つがあります。

対象企業は、都内に本社または事業所を置く事業者等で、以下2つのいずれかに当てはまる事業者(いずれもその他要件有り)になります。

  • 常時雇用する労働者が2人以上30人未満の企業
  • 常時雇用する労働者が30人以上999人以下の企業

以下が、令和4年度における助成金の上限と助成率です。

事業所の規模 助成金の上限 助成率
30人以上999人以下 250万円 1/2
2人以上30人未満 150万円 2/3

テレワーク促進助成金を申請するには、申請書類を東京しごと財団の公式ホームページからダウンロードし、記入したうえで提出しましょう。一般コースは郵送もしくは電子申請で、非正規社員拡充コースは郵送のみ受け付けています。

【東京都】サイバーセキュリティ対策促進助成金

この制度は、中小企業者が、保有する企業秘密や個人情報などの情報資産の保護を目的としたサイバーセキュリティ対策を実施するための設備導入などにかかる費用を支援する制度です。

助成対象となる事業者は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施しているSECURITY ACTIONの2段階目(★★二つ星)を宣言している都内の中小企業者・中小企業団体です。

助成対象となるのは、サイバーセキュリティ対策を実施するために必要となる以下の機器等の導入、およびクラウド利用にかかる経費です。

  • 統合型アプライアンス(UTM等)
  • ネットワーク脅威対策製品(FW、VPN、不正侵入検知システム等)
  • コンテンツセキュリティ対策製品(ウィルス対策、スパム対策等)
  • アクセス管理製品(シングル・サイン・オン、本人認証等)
  • システムセキュリティ管理製品(アクセスログ管理等)
  • 暗号化製品(ファイルの暗号化等)
  • サーバー(最新のOS搭載かつセキュリティ対策が施されたものに限る)
  • 標的型メール訓練

助成率は、助成対象経費の1/2以下です。また、助成額は1,500万円(下限額30万円)となっています。(※標的型メール訓練に関しては別途規定されています。)

サイバーセキュリティ対策促進助成金の申請は、以下の流れで行いましょう。

  1. SECURITY ACTIONの2段階目(★★二つ星)を宣言する
  2. 申請書類や添付書類の作成・準備する
  3. 「ネットクラブ会員登録」に申請エントリーする
  4. 申請書類を提出(Jグランツによる電子申請)する
  5. 事業を実施する
  6. 事業の完了報告を行う
  7. 助成金の請求を行う
  8. 助成金が支給される
Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

リモートワーク(テレワーク)導入に利用できる補助金

リモートワーク(テレワーク)に利用できる補助金を紹介します。

IT導入補助金

この制度は、中小企業・小規模事業者等が、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。

以下の3タイプに分かれています。それぞれの補助対象者と対象経費についてまとめましたので、参考にしてください。

通常枠(A・B類型) セキュリティ対策枠 デジタル基盤導入枠
補助対象者 中小企業・小規模事業者等(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象) 中小企業・小規模事業者等(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象) 中小企業・小規模事業者等(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
補助対象経費 ソフトウェア費・クラウド利用料(1年分)・導入関連費 サービス利用料(最大2年分) ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費
補助額 A類型:5~150万円未満
B類型:150~450万円以下
5~100万円 ITツール:下限なし~350万円
PC・タブレットなど:~10万円
レジ・券売機:~20万円
補助率 1/2以内 1/2以内 ITツール:3/4以内
PC・タブレットなど:2/3以内
レジ・券売機:1/2以内

詳細や最新情報については、「IT導入補助金2023」をご覧ください。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

この制度は、中小企業・小規模事業者などが、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などの制度変更により、取り組みが必要になる革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する制度です。

以下の5タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。

・通常枠

項目 要件
概要 革新的な「製品・サービス開発」や、「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援するもの
補助金額 従業員数によって、以下のように異なる
5人以下 :100~750万円
6人~20人:100~1,000万円
21人以上 :100~1,250万円
補助率 1/2
小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3

・回復型賃上げ・雇用拡大枠

項目 要件
概要 経営の悪化において、賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が実施する、革新的な「製品・サービス開発」や、「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援するもの
補助金額 従業員数によって、以下のように異なる
5人以下 :100~750万円
6人~20人:100~1,000万円
21人以上 :100~1,250万円
補助率 2/3

・デジタル枠

項目 要件
概要 DXにおける革新的な「製品・サービス開発」や、デジタル技術を活用した「生産プロセス・サービス提供方法の改善」による生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援するもの
補助金額 従業員数によって、以下のように異なる
5人以下 :100~750万円
6人~20人:100~1,000万円
21人以上 :100~1,250万円
補助率 2/3

・グリーン枠

項目 要件
概要 温室効果ガスの排出削減における取り組みに対し、温室効果ガスの排出削減のための革新的な「製品・サービス開発」や、炭素生産性向上を伴う「生産プロセス・サービス提供方法の改善」による生産性向上に必要な設備・システム投資などを支援するもの
補助金額 類型と従業員数によって、以下のように異なる
・エントリー類型
5人以下 :100~750万円
6人~20人:100~1,000万円
21人以上 :100~1,250万円
・スタンダード類型
5人以下 :750~1,000万円
6人~20人:1,000~1,500万円
21人以上 :1,250~2,000万円
・アドバンス類型
5人以下 :1,000~2,000万円
6人~20人:1,500~3,000万円
21人以上 :2,000~4,000万円
補助率 2/3

・グローバル市場開拓枠

項目 要件
概要 海外事業の拡大・強化を主な目的とした「製品・サービス開発」や、「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援するもので、以下のいずれかに合致するもの
1. 海外直接投資類型
2. 海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型
3. インバウンド市場開拓類型
4. 海外事業者との共同事業類型
補助金額 100~3,000万円
補助率 1/2
小規模企業者・小規模事業者は3分の2

詳細や最新情報は、「ものづくり補助金総合サイト」をご覧ください。

各都道府県が実施する補助金

各都道府県におけるテレワーク導入に利用できる補助金をご紹介します。ただし、本年度の受付期間が終了しているものもあるため、各ホームページから最新情報を確認してください。

北海道:札幌市テレワーク推進サポートセンター「補助金について」
神奈川県:ワークライフバランス・メンタルヘルス
愛知県:豊田市「豊田市テレワーク導入支援補助金」
愛知県:安城市「安城市職場環境整備支援事業補助金(テレワーク・WEB会議システムの導入用補助制度)」

各都道府県では、リモートワーク導入において、補助金以外の相談が可能な団体もあります。あわせて検索し、自社における働き方改革を目指しましょう。

関連記事「働き方改革推進支援助成金」とは?基本情報や2023年の実施予定を徹底解説!

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テレワーク導入の無料相談先

テレワークを導入する際に「どのように導入すれば良いのか」「どのような設備が必要か」など、さまざまな疑問や不明点が出てくるでしょう。その際に無料で相談できる窓口を知っていると安心できます。

実は、厚生労働省と総務省は、テレワークに関する労務管理やICT活用をワンストップで相談できるテレワーク相談センターを設置しています。

テレワーク相談センターでは、以下のサポートを行っています。

  • テレワーク相談センターでのワンストップ相談対応(電話やメールで無料受付)
  • テレワークマネージャーによるコンサルティングの実施(3回まで無料)
  • テレワーク総合ポータルサイトの運営

参考:テレワーク総合ポータルサイト

また、助成金の申請代行コンサルティング業者の中には、テレワークの環境整備のサポートも実施している場合があります。環境整備から助成金の申請までトータルサポートしてもらえるため、こうしたコンサルティング業者を選定することも一つの手です。

助成金・補助金を申請する際の注意点

助成金・補助金を申請する際の注意点を解説します。

申請準備は早めに行う

助成金を申請するには、申請期限までに各助成金で設けられた書類を提出することが必要です。自社の事業体制が要件を満たすことを書類により証明しなければならないため、書類の準備に意外と時間がかかります。特に助成金の申請経験がない場合には、スムーズに進まない可能性があることを覚えておきましょう。

また、最近では電子申請受付を実施している助成金も増えてきていますが、IDの登録に時間がかかることもあります。たとえば、GビズIDプライムアカウントであれば、作成に1~2週間ほどの時間が必要です。

事業期間完了後の処理を適切に行う

助成金は申請が通ったのちに、各助成金の要件どおりに事業を実施することが必要です。その後、事業を完了した日から各助成金で定められた期限までに、事業完了の報告を行わなければなりません。期限が過ぎてしまうと、助成金を受給できない可能性があります。

また、助成金の申請時に提出した計画の内容と異なる事業完了の報告であった場合には、受給できなかったり、不正受給として責任を問われたりするリスクもあります。事業実施中の記録は正確に残し、各助成金で定められた様式で適切に処理しましょう。

十分にテレワーク環境を整備する

助成金を受給するためにテレワークを導入してしまうと、設備が足りずに思ったような効果が得られない可能性があります。

自宅で仕事を行っても、職場と同様に生産性を高め、ストレスがたまらないように体制を整備することが必要です。
たとえば、テレワーク勤務によるコミュニケーション不足にならないように、ビジネスチャットツールやWeb会議ツールを利用しましょう。また、チームでプロジェクトを進める場合には、全体の進捗状況を可視化できるタスク・スケジュール管理ツールも導入することがおすすめです。

従業員満足度を高めつつ、生産性も向上できるようなテレワークの導入を目指しましょう。

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まとめ

リモートワーク(テレワーク)に利用できる助成金・補助金制度をご紹介しました。
助成金・補助金は、どちらも返金不要な資金調達方法です。また、国や地方公共団体などが主導している公的な資金であることから、活用することをおすすめします。最新情報を確認し、自社に適した助成金・補助金を探しましょう。

助成金・補助金の申請を検討している企業の方は、一度、無料診断をお試しください。自社で受給可能な助成金をすぐに知ることができます。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。