出産・育児や介護など、従業員のライフサイクルに変化があった際に、家庭と仕事を両立できる社会を目指す「改正育児・介護休業法」が定められました。
両立支援等助成金には「出生時両立支援コース」や「育児休業等支援コース」などがありますが、さらに企業の育児休業を推進するために、「育休中業務代替支援コース」が新設されました。
そこで、この記事では令和6年1月に拡充された両立支援等助成金の「育休中業務代替支援コース」についてわかりやすく解説します。
関連記事:【2023年最新】両立支援等助成金とは?各コースを徹底解説
目次
【令和6年1月拡充】新設された「育休中業務代替支援コース」とは
令和6年1月の拡充として、両立支援等助成金に「育休中業務代替支援コース」が新設されました。ここでは、「育休中業務代替支援コース」について解説します。
コースの概要
育休中業務代替支援コースは、育児休業や育児短時間勤務を行う労働者がいる企業の労働環境整備のために、「業務を代替する労働者へ手当の支給」や「代替要員の新規雇用」を実施した事業主を助成するコースです。
新設された背景
「育休中業務代替支援コース」は、2023年に政府が発表した経済対策の5つの柱に掲げられた「人口減少を乗り越える社会変革の推進」を目指す政策の一つです。
中小企業に勤める労働者が育児休業や短時間勤務制度を活用できる体制の整備を支援することで、職場の両立支援体制の強化し、働きながら子育てを行う労働者の継続雇用を図ることが挙げられます。
「育休中業務代替支援コース」1.手当支給等とは
育休中業務代替支援コースのうち、手当支給等について解説します。
手当支給等(育児休業)
育児休業を取得した労働者が行っていた業務を、他の労働者に手当等を支払ったうえで行わせた場合に、支払った手当額に応じた額を支給するものです。
助成額
対象育児休業取得者1名あたり、以下の2つの合計額を支給します。
- 業務体制整備経費:5万円(育児休業期間が1か月未満の場合は2万円)
- 業務代替手当:業務代替者に支給した手当の総額の3/4(プラチナくるみん認定事業主は4/5)
※手当の対象人数に関わらず、支給総額を対象として計算する。10万円/月が助成金の上限となる※代替期間12か月分までが対象
また、以下の場合には、助成金が加算されます。
- 対象育児休業取得者が有期雇用労働者の場合:支給額に1人当たり10万円が加算(業務代替期間が1か月以上の場合のみ対象)
- 自社の育児休業取得状況等に関する情報を公表した場合:支給額に1回限り2万円を加算
手当支給等(短時間勤務)
育児のための短時間制度勤務を利用した労働者が行っていた業務を、他の労働者に手当等を支払ったうえで行わせた場合に、支払った手当額に応じた額を支給するものです。
助成額
対象育児休業取得者1名あたり、以下の2つの合計額を支給します。
- 業務体制整備経費:2万円
- 業務代替手当:業務代替者に支給した手当の総額の3/4
※手当の対象人数に関わらず、支給総額を対象として計算する。3万円/月が助成金の上限となる。※子が3歳になるまでの期間が対象(支給申請は1年ごと)である。
また、以下の場合には、助成金が加算されます。
- 対象育児休業取得者が有期雇用労働者の場合:支給額に1人当たり10万円が加算(業務代替機関が1か月以上の場合のみ対象)
- 自社の育児休業取得状況等に関する情報を公表した場合:支給額に1回限り2万円を加算
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説「育休中業務代替支援コース」2.新規雇用とは
育児休業を取得した労働者が行っていた業務を代替する労働者を新規に雇い入れた場合(新規の派遣受入れを含む)に、業務を代替した期間に応じた額を支給します。
助成額
対象育児休業取得者1名につき、「育児休業期間中に業務代替した期間」に応じて以下の額を支給します。
- 7日以上14日未満 :9万円 (11万円)
- 14日以上1か月未満 :13.5万円(16.5万円)
- 1か月以上3か月未満:27万円 (33万円)
- 3か月以上6か月未満:45万円 (55万円)
- 6か月以上 :67.5万円(82.5万円)
※()内の額は、プラチナくるみん認定事業主の場合の支給額
※7日以上の育休は3日以上、14日以上の育休は6日以上が所定労働日であることが必要
また、以下の場合には、助成金が加算されます。
- 対象育児休業取得者が有期雇用労働者の場合:支給額に1人当たり10万円が加算(業務代替機関が1か月以上の場合のみ対象)
- 自社の育児休業取得状況等に関する情報を公表した場合:支給額に1回限り2万円を加算
「育休中業務代替支援コース」を活用する注意点
「育休中業務代替支援コース」を活用する注意点を以下にまとめています。
支給の上限がある
「手当支給等(育児休業)」「手当支給等(短時間勤務)」「新規雇用(育児休業)」をすべてあわせて以下が支給上限となっています。
- 1事業主1年度につき対象育児休業取得者と制度利用者の合計で10人まで
- 初回の対象者が出てから5年間
※ただし、初回の対象労働者が生じるまでにくるみん認定・トライくるみん認定を受けている事業主は、「令和11年3月31日までに合計50人まで」となる
また、同一労働者の同一の子にかかる育児休業・短時間勤務については、いずれも1回に限り対象です。(ただし、「手当支給等(短時間勤務)」は、支給申請は制度利用1年ごとに行う必要があります)。
※同一の子にかかる育児休業は、「手当支給等(育児休業)」と「新規雇用(育児休業)」はいずれか一方のみが対象となります。
対象となる休業・制度利用を確認する
自社の取り組みが、対象となる休業・制度利用に当てはまっているかどうかを確認しましょう。以下に確認すべき注意点をまとめています。
- 育児休業中に休業取得者が就労している場合や、短時間勤務中に制度利用者が時間どおりに勤務しなかった場合など、対象期間から除外される場合があります。
- 複数の期間に分割して2回以上の育児休業や短時間勤務制度を取得・利用している場合でも、利用実績を合算できることがあります。
制度の適用開始時期を確認する
育休中等業務代替支援コースは、令和6年1月に新設されたコースです。そのため、制度の適用開始時期を事前に確認しましょう。
- 育休中等業務代替支援コースは、令和6年1月1日以降に育児休業が開始した場合・育児短時間勤務が開始した場合が対象です。
- 現行制度のうち、出生時両立支援コース(第1種のうち代替要員加算)、育児休業等支援コース(業務代替支援)については、令和5年12月31日までに育児休業が開始した場合までが対象です。
なお、どちらの場合も産後休業の終業後に引き続き育児休業をする場合は、産後休業が開始した場合となります。
既存制度との併用
育休中等業務代替支援コースは、同一の育児休業について以下の2コースで併用が可能です。
- 既存の出生時両立支援コース(第1種)
- 育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例以外)
育休中業務代替支援コースの要件や詳細は、以下の厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「令和6年1月から両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」を新設します」
まとめ
この記事では、令和6年1月から拡充された両立支援等助成金の改正内容を解説しました。
「育休中業務代替支援コース」は、人口減少を乗り越えるための経済対策の一つとして策定されたコースです。育休に取り組んでいる企業の金銭的な負担を軽減し、支援することで労働者の雇用の安定を目指しています。
拡充されることで、より多くの企業が両立支援等助成金を申請しやすくなりました。しかし、新設されたばかりでもあるため、「自社が要件を満たしているかわからない」「申請方法がわからない」という企業も多いでしょう。
そうした場合には、まずプロのコンサルティング業者が行う無料診断を受けてみてはいかがでしょうか。
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