厚生労働省から支給される助成金には様々なものがあり、人材確保・育成職場の労働環境改善、また、福利厚生制度を充実させるため活用することができます。

福利厚生を充実させることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。また、企業は福利厚生の充実を推進すべきなのでしょうか。

そこで、この記事では福利厚生に活用できる助成金・補助金の一覧や福利厚生を活用した施策例を紹介します。

福利厚生に活用できる助成金・補助金とは?

福利厚生に活用できる助成金・補助金とは、国や自治体が企業の「働きやすい職場づくり」や「人材定着」を支援するために運用されている制度です。
そもそも助成金・補助金とはどのような制度を指すのでしょうか。ここで、助成金・補助金の基本的な概要を解説します。

助成金とは?

助成金とは、厚生労働省が主導している、職場環境の改善や人材育成などの主に労働者に関する企業の取り組みを支援するための制度です。原則、返済不要であるということと、受給要件を満たせば基本的に受給できるため、多くの企業が活用しています。

助成金を活用することで、自社の事業体制の強化にかかる負担を軽減できます。

助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

補助金とは?

補助金とは、経済産業省が主導している、企業の新規事業や設備投資などの事業を支援するための制度です。助成金と同様に原則、返済不要で受給できますが、事業計画の妥当性などが審査されるため、申請しても不採択となる可能性があります。

以下に、助成金と補助金の主な違いをまとめましたので、制度を選定する際の参考にしてください。

助成金 補助金
主体 厚生労働省 経済産業省
目的 雇用・労働環境の改善など 補助金ごとに異なるが、経済・地域の活性化など
受給条件 要件を満たし、法律遵守していれば基本的に受給可能 要件を満たしていても、審査で落選する可能性がある
申請期間 随時、または長期間 数週間から1ヶ月程度

関連記事:補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

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福利厚生に活用できる助成金・補助金一覧

従業員の定着率向上や働きやすい職場づくりを目的に、企業が利用できる「雇用」「育成」「労働環境改善」などに関する助成金・補助金が多数用意されています。

ここでは、福利厚生の拡充や人材確保につながる代表的な制度を一覧で紹介します。

【正社員化・処遇改善】キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用労働者に対し、「正社員登用」や「処遇改善」などを実施する企業・中小企業事業主を支援する制度です。

コース一覧
  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用処遇改善コース(令和8年3月31日まで)
  • 短時間労働者労働時間延長コース
助成額(例) 中小企業が「正社員化コース」を受給した場合

  • 有期雇用労働者など→正社員化:40万円(80万円)
  • 無期雇用労働者など→正社員化:20万円(40万円)

※()内は一定要件に該当する重点支援対象者の場合

キャリアアップ助成金における取り組みは、非正規雇用労働者のモチベーション向上や人材の定着率を高めたい場合に効果的です。正社員化以外にも、賞与・退職金制度の導入などの福利厚生制度の充実も支給対象となる可能性があります。

キャリアアップ助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!
関連記事:【2025最新】キャリアアップ助成金とは?助成額や申請の流れを解説

【雇用支援】トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、求職者の適正を確認するために、一定の試用期間を設けて試行雇用を行う事業主を支援する制度です。

コース一覧
  • 一般トライアルコース
  • 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース
  • 若年・助成建設労働者トライアルコース
助成額(例) 企業が「一般トライアルコース」を受給した場合
支給対象者1人につき月額4万円
※対象労働者が母子家庭の母または父子家庭の父などの場合は5万円

若年者・障がい者など、就職困難者の雇用促進に活用できるほか、企業にとっても本採用前の「お試し雇用」ができるため、早期退職が発生するリスクを軽減に役立ちます。

トライアル雇用助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023最新】トライアル雇用助成金とは?各コースを徹底解説

【労働環境の改善】人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金とは、労働者が働きやすい労働環境や雇用管理制度などを整備して人材確保・定着を目指す事業主を支援する制度です。

コース一覧
  • 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース
  • 中小企業団体助成コース
  • 建設キャリアアップシステム等活用促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
  • 外国人労働者就労環境整備助成コース
  • テレワークコース
助成額(例) 企業が「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」を受給した場合

  • 雇用管理制度(賃金規定制度)を導入した場合:40万円(50万円)
  • 雇用管理制度(職場活性化制度)を導入した場合:20万円(25万円)など

※()内は賃金要件を満たした場合の支給額

福利厚生制度の導入そのものが助成対象になる場合もあるため、職場環境の整備を行いたい場合に適した制度となっています。特に、離職率低下や人材定着を目指したい企業は、一度詳細を確認すると良いでしょう。

人材確保等支援助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材確保等支援助成金とは?各コースを徹底解説

【労働環境の改善】業務改善助成金

業務改善助成金とは、「生産性向上や業務改善のための設備導入などの取り組み」と「事業場内最低賃金の引き上げ」を行った事業主を支援する制度です。

コース一覧 コース設定はされていません。
助成額(例) 申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって、以下のように助成率が変わります。

  • 事業場内最低賃金が1,000円未満:4/5
  • 事業場内最低賃金が1,000円以上:3/4

業務効率化につながる設備投資と賃上げの両立を図りたい企業におすすめの制度です。賃上げによる労働者のモチベーション向上や設備投資によって労働者の負担軽減が期待できます。

業務改善助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【令和6年度】業務改善助成金とは?変更点や助成額、支給要件を解説

【労働環境の改善】働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金とは、働く人々が多様な働き方を選択できるように働き方改革を実施する企業を支援する制度です。

コース一覧
  • 業種別課題対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 団体推進コース
助成額(例) 企業が「業種別課題対応コース」を受給した場合
以下のいずれか低い方の額

  • 成果目標1~6の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4
    ※常時使用する労働者数が30人以下、かつ支給対象の取り組みで6~9を実施し、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

時間外労働の削減や週休2日制・年次有給休暇や特別休暇の推進、勤務間インターバル制度の導入などの、働き方に関する環境整備を行いたい企業に適した制度です。

働き方改革推進支援助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025年拡充予定】働き方改革推進支援助成金とは?各コースを徹底解説

【労働環境の改善】エイジフレンドリー補助金

エイジフレンドリー補助金とは、高年齢労働者が安全に働けるように、労働災害防止のための設備改善や専門家による指導を受ける企業を支援する制度です。

コース一覧
  • 総合対策コース
  • 職場環境改善コース
  • 転倒防止・腰痛防止のための運動指導コース
  • コラボヘルスコース
助成額(例) 企業が「総合対策コース」を受給した場合
補助率:設備投資や専門家によるリスクアセスメントにかかった経費の4/5

重い荷物を運ぶためのパワーアシストスーツの導入や熱中症対策、転倒防止対策などの高年齢労働者の安全を確保するための取り組みを実施したい場合に、おすすめの補助金です。

エイジフレンドリー補助金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【令和7年度最新】エイジフレンドリー補助金とは?要件や助成額を解説

【人材育成】人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、労働者に職務に関連した専門的な知識や技能を身につけさせるために、職業訓練などを実施した事業主を支援する制度です。

コース一覧
  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
助成額(例) 企業が「人材育成支援コース」を受給した場合
人材育成訓練を行った場合:1人1時間あたり800円
※()内は賃金要件を満たした場合の支給額

福利厚生の一環として、スキルアップ支援のために本制度を活用できます。人材育成に注力したい企業におすすめの助成金です。

人材開発支援助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】人材開発支援助成金とは?各コースを徹底解説

【育児・介護支援】両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、育児・介護と仕事の両立のために、職場環境の整備に取り組む事業主を支援する制度です。

コース一覧
  • 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 育休中等業務代替支援コース
  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース
助成額(例) 企業が「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」を受給した場合

  • 第1種(男性の育休取得):1人目20万円、2・3人目:10万円
  • 第2種(男性の育休取得率の上昇など):60万円

育児・介護支援は、企業の「働きやすさ」をアピールするための重要な施策の一つです。人材を確保するためにも欠かせない取り組みとして、多様な働き方の実現に貢献します。

両立支援等助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024年最新】両立支援等助成金とは?各コースを徹底解説

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

助成金・補助金を活用した福利厚生の施策例

ここでは、助成金・補助金を活用した福利厚生の施策例を紹介します。

多様な働き方の推進

テレワークや時短勤務、フレックスタイム制など、従業員がライフスタイルに合わせて働ける柔軟な制度の導入は、今や企業にとって欠かせない福利厚生の一つです。

紹介した助成金・補助金を活用した施策例をまとめました。

  • テレワーク環境の整備(在宅勤務手当の導入など)
  • 育児・介護を理由とした在宅勤務や時短勤務の選択制
  • フレックスタイム制度の導入

食事補助

社員食堂や宅配弁当サービス、食事券の配布など、「食の福利厚生」は健康促進と生産性向上の両面で効果が期待できます。また、従業員の満足度の向上や従業員同士のコミュニケーションの活性化にも寄与する可能性があります。

直接的に「食事補助専用」の助成金は少ないものの、以下のような制度を活用することで、職場環境整備の一環として食事補助制度を導入できます。

  • 社員食堂やキッチンスペースの設置
  • 外部の食事宅配サービスとの提携
  • 健康食メニューの提供

リスキリング支援

デジタル化・AI活用など、変化の激しい時代に対応するための「リスキリング(学び直し)」も、近年注目される福利厚生施策の一つです。企業が社員のスキルアップを支援することで、人材育成と組織力強化を同時に実現できます。

この分野では、助成金の対象となる支援制度が多く、「人材開発支援助成金」は代表的な制度です。

紹介した助成金・補助金を活用した施策例をまとめました。

  • 社員のオンライン研修・外部講座費用の一部負担
  • DX研修・ITリテラシー教育の実施
  • 社内講師による継続的なスキルアップ制度の整備
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福利厚生を充実させるメリット

それでは、助成金を活用してまでも福利厚生を充実させるのはなぜでしょうか。まず、ここでは福利厚生を充実させるメリットを解説します。

従業員満足度(ES)の向上

福利厚生を充実させると職場環境や各種手当が整い、「従業員が働きやすくなる、給与が向上する」といったことに直結します。そのため、従業員満足度(ES)が向上しやすくなるのです。

実際に、2020年に行われた「働き方・待遇に関する意識調査」というアンケート調査によると、従業員が自社に望むものでは基本給の向上以外に、福利厚生や手当の充実を望む従業員が多くいるという結果も出ています。

採用活動に好影響

2022年に行われた、2023年3月卒業見込みの大学生・大学院生を対象としたアンケート「マイナビ学生就職モニター調査」によると、「福利厚生が充実している」ことが企業に安定性を感じるポイントとして、最も多くの票を獲得しました。
また、男性育休やパワハラ防止、女性活躍といった取り組みに積極的かどうかを、企業選択において重視する学生は82.4%に及ぶという結果になっています。

このアンケートからもわかるように、福利厚生の充実は採用活動を優位に進めるためにも欠かせない要素といえるでしょう。

健康経営の実現

最近では、従業員の健康保持・増進を経営課題として取り組む健康経営が注目を集めています。その理由は、健康経営を推進すると従業員の生産性向上やコスト削減、企業のイメージアップにつながるというメリットが期待されているためです。

健康経営を実現するには、「労働安全衛生(健康管理)」「心と体の健康づくり」「働きがい」「生きがい」「働きやすさ」といった5つの指針が重要視されています。これらの要素は福利厚生の充実により高められるため、健康経営の実現に貢献できるでしょう。

まとめ

福利厚生を充実させることで、自社の従業員満足度を高めるとともに採用活動を有利に進められるなど、自社の事業活動を優位に行える可能性があります。経営者は定期的に自社の福利厚生を見直す機会を設けることがおすすめです。
そして、国や地方自治体が実施している助成金には、従業員の雇用・育成や職場環境の改善、育児・介護との両立などの取り組みを支援する制度が多くあります。
これから助成金申請を検討される場合には、まずは無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。