厚生労働省から支給される助成金には、人材関係のものが多くあります。助成金とは本来、職場の労働環境改善などにあてられるものが多く、福利厚生制度を充実させるためには様々な助成金を活用できます。

それでは、そもそも福利厚生を充実させることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。また、企業は福利厚生の充実を推進すべきなのでしょうか。

そこで、この記事では福利厚生のメリットや助成金の概要を解説したのち、福利厚生に活用できる助成金一覧を紹介します。

福利厚生に活用できる「助成金」とは

助成金制度とは、厚生労働省が主催する企業の取り組みを支援するための資金調達制度です。
原則、返済不要であるということと、受給要件を満たせば基本的に受給できるため、多くの企業が活用しています。

助成金を活用することで、自社の事業体制の強化にかかる負担を軽減できます。

助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

福利厚生を充実させるメリット

それでは、助成金を活用してまでも福利厚生を充実させるのはなぜでしょうか。まず、ここでは福利厚生を充実させるメリットを解説します。

従業員満足度(ES)の向上

福利厚生を充実させると職場環境や各種手当が整い、「従業員が働きやすくなる、給与が向上する」といったことに直結します。そのため、従業員満足度(ES)が向上しやすくなるのです。

実際に、2020年に行われた「働き方・待遇に関する意識調査」というアンケート調査によると、従業員が自社に望むものでは基本給の向上以外に、福利厚生や手当の充実を望む従業員が多くいるという結果も出ています。

採用活動に好影響

2022年に行われた、2023年3月卒業見込みの大学生・大学院生を対象としたアンケート「マイナビ学生就職モニター調査」によると、「福利厚生が充実している」ことが企業に安定性を感じるポイントとして、最も多くの票を獲得しました。
また、男性育休やパワハラ防止、女性活躍といった取り組みに積極的かどうかを、企業選択において重視する学生は82.4%に及ぶという結果になっています。

このアンケートからもわかるように、福利厚生の充実は採用活動を優位に進めるためにも欠かせない要素といえるでしょう。

健康経営の実現

最近では、従業員の健康保持・増進を経営課題として取り組む健康経営が注目を集めています。その理由は、健康経営を推進すると従業員の生産性向上やコスト削減、企業のイメージアップにつながるというメリットが期待されているためです。

健康経営を実現するには、「労働安全衛生(健康管理)」「心と体の健康づくり」「働きがい」「生きがい」「働きやすさ」といった5つの指針が重要視されています。これらの要素は福利厚生の充実により高められるため、健康経営の実現に貢献できるでしょう。

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「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

【雇用・育成】福利厚生に活用できる助成金一覧

それでは、従業員の雇用・育成に取り組む企業が活用できる助成金を紹介します。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイト・派遣社員など非正規雇用労働者に対し、正社員登用や処遇改善などを実施する企業・中小企業事業主を支援する制度です。

キャリアアップ助成金には以下の6つのコースがあります。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

正社員化コースでは、以下の額が助成されます。

  • 中小企業:57万円
  • 大企業:42万7,500円

※特定の職業訓練を実施すると、さらに11万円が加算されます。

キャリアアップ助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!
関連記事:【2023】キャリアアップ助成金の申請の流れ!各コースの手続きを解説

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、採用の適正を確認するために、試用期間を設けて就業が難しい求職者を採用する企業を支援する制度です。

トライアル雇用助成金には、以下の2つのコースがあります。

  • 一般トライアルコース
  • 障害者トライアルコース

一般トライアルコースでは、以下の額が助成されます。
支給額:月額最大4万円(最大3ヶ月)
※対象労働者が以下の場合には、月額最大5万円となります。

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父

トライアル雇用助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023最新】トライアル雇用助成金とは?各コースを徹底解説

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金とは、労働環境を整備して雇用創出を図り、人材の確保や定着に取り組む事業主を支援する制度です。

人材確保等支援助成金には、以下の9つのコースがあります。

  • 雇用管理制度助成コース
  • ※令和4年4月1日以降は、整備計画の新規受付を休止しています。

  • 介護福祉機器助成コース
  • 中小企業団体助成コース
  • 人事評価改善等助成コース
  • ※令和4年4月1日以降は、整備計画の新規受付を休止しています。

  • 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
  • 外国人労働者就労環境整備助成コース
  • テレワークコース

コースごとに、助成率や受給額はそれぞれ異なっています。人材確保等支援金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】人材確保等支援助成金とは?各コースを徹底解説

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、労働者に職務に関連した専門的な知識や技能を身につけさせるために職業訓練を実施した事業主を支援する制度です。

人材開発支援助成金には、以下の7つのコースがあります。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース

人材育成支援コースでは、取り組みにかかった経費のうち以下の割合で助成されます。

  • 雇用保険被保険者(有期契約労働者などを除く)の場合:45%(+15%)
  • 有期契約労働者の場合:60%(+15%)
  • 有期契約労働者などを正規雇用労働者に変換した場合:70%(+30%)
    ※賃金要件か資格等手当要件を満たす場合は、()内の割増し分を追加で支給されます。

関連記事:【2023年最新】人材開発支援助成金とは?各コースを徹底解説

【職場環境の改善】福利厚生に活用できる助成金一覧

職場環境の改善に取り組む企業が活用できる助成金を紹介します。

業務改善助成金

業務改善助成金とは生産性向上や業務改善を目指し、設備導入やコンサルティングの依頼、人材育成にかかる研修に取り組み、事業場内最低賃金を引き上げた事業主を支援する制度です。

業務改善助成金の受給金額は、引き上げた最低賃金の金額や労働者数、事業規模によってそれぞれ異なります。業務改善助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】業務改善助成金とは?概要や目的、助成額を徹底解説

【育児・介護】福利厚生に活用できる助成金一覧

育児・介護と仕事の両立に取り組む企業が活用できる助成金を紹介します。

両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、育児や介護と仕事の両立のために職場環境の整備に取り組む事業主を支援する制度です。

両立支援等助成金には、以下の3つのコースがあります。

  • 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)では、取り組みによってそれぞれ以下の額が受給されます。

1.第1種
20万円

2.第2種
事業年度以内に30ポイント以上上昇した場合:60万円
事業年度以内に30ポイント以上上昇した(または連続70%以上)場合:40万円
事業年度以内に30ポイント以上上昇した(または連続70%以上)場合:20万円

両立支援等助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】両立支援等助成金とは?各コースを徹底解説

まとめ

福利厚生を充実させることで、自社の従業員満足度を高めるとともに採用活動を有利に進められるなど、自社の事業活動を優位に行える可能性があります。経営者は定期的に自社の福利厚生を見直す機会を設けることがおすすめです。

そして、国や地方自治体が実施している助成金には、従業員の雇用・育成や職場環境の改善、育児・介護との両立などの取り組みを支援する制度が多くあります。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。