ビジネスには、何かとお金(資金)が必要となります。しかし、自己資金や融資ばかりに頼ってもいられません。自由に使える自己資金が十分に貯まるには時間がかかりますし、融資を受けすぎると返済に苦しみ、経営リスクに直結してしまいます。そこで活用したいのが「助成金」です。

しかし、「助成金とは何か」と聞かれてすぐに答えられるでしょうか。答えられない経営者は、少し心許ないかもしれません。世の中には、助成金などの公的資金を、会社の収入を成り立たせる重要な軸のひとつにしている経営者が意外と多いからです。
会社を経営していく上で、世の中の流れに取り残されないよう、助成金のことを少しずつ知っていきましょう。

この記事では、会社の経営者が知っているようで意外と知らない、そして知っておきたい助成金の基礎知識について解説します。

そもそも助成金とは?

助成金とは、「ビジネスを展開している会社経営者・事業主を支援するために、国や地方自治体が助成するお金のこと」を指します。
雇っている従業員の健康維持やキャリアアップなどに貢献する取り組みに対して積極的に助成される傾向があります。

なお、法制度上、助成金は補助金の一種です。「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」によって規定されており、その原型は欧米から輸入する形で明治時代からありました。
より具体的な助成金の特徴は次の通りです。

返済が不要な公的資金

会社が助成金を受けた場合、それを国や自治体に返済する必要は一切ありません。それどころか、会社の収入(雑収入)に計上することができます。
金融機関から融資を受ける場合のような資金繰りの心配は不要です。

厚生労働省や地方自治体などが管轄

国が運営している助成金は、全国一括して厚生労働省が管轄しているため、安心して申請できます。また、都道府県や市町村レベルでも企業向けの助成金制度を設けている自治体が多く、本店所在地の助成金について自社の条件に合うものを調べてみると、受けることができるものがあるかもしれません。

健康や労務に関する助成が多い

厚生労働省が管轄しているという経緯から、従業員の健康や労務に関するサポートの助成金が多くなっています。助成金制度の存在が、従業員ファーストの経営を推し進めるモチベーションとなっている経営者も少なくありません。

条件さえ揃っていれば、ほぼ助成される

助成金の場合、定められた条件が揃っている会社に対しては、ほぼ例外なく助成されます。裁量判断によって助成されない判断が行われることがないので、その点では先読みして対策を行いやすくなっています。

使い道は自由

従業員の福祉目的で助成される助成金ですが、実は助成金の使い道に義務は課されていません。使途が制限されていない点も、助成金の魅力です。

助成金・補助金・給付金の違い

助成金と似たような言葉として、補助金や給付金があります。ここではそれぞれの違いを解説します。

補助金と助成金の違い

補助金は経済産業省や中小企業庁の管轄であることが多く、その点は助成金と異なります。また、補助金は数十万円~数千万円と額が比較的大きい一方で、条件を満たしていても裁量判断で不採択になる恐れもあります。

助成金と給付金の違い

給付金は、条件を満たせば支給され雑収入として計上するなど、助成金との共通点が多い制度です。給付金は一般個人や家庭が対象となる点や、先行投資が不要の先払いとなる点で助成金と異なります。

それぞれの違いについて、こちらで詳しく解説しています。
補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

助成金を受ける際の注意点

ビジネスの強い味方である助成金ですが、気を付けるべき注意点があります。

経費の全額が助成されるわけではない

最も注意しなければならないのは、実際にかかった経費の全額が助成されない点です。ほとんどの場合は、助成額の上限や助成割合が決まっていますので、一部は会社の自己負担となります。

申請の手続きが複雑

助成金を受けるためには、いくつもの書類を作成して提出しなければならないなど、手間が掛かります。行政書士のサポートも受けられますが、その場合には報酬も準備しておかなければなりません。

助成金の申請代行についてこちらでまとめています。
途中からでも大丈夫?助成金の申請を軽減する代行

助成金を確実に受給する方法?申請代行を頼むメリットとは

助成金が降りるまでに日数がかかる

所定の書類を提出しても、助成金が実際に振り込まれるまでに数か月かかることも珍しくありません。余裕をもった計画で申請するようにしましょう。

助成金の例

助成金制度は厚生労働省が管轄しているものだけでも80種類前後あります。都道府県・市町村レベルで管轄しているものも含めればより多くの種類が存在します。
ここでは、代表的な助成金について説明します。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、2020年から世界中で流行した新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、従業員の雇用を維持し続けるためにできた助成金です。
労使間の協定に基づいて、やむをえず一時的な休業を実施したり、出向させたりした事業主に対して、休業手当などの一部を助成する取り組みです。
新型コロナウイルス感染症の流行が収束すれば、この助成金は終了する、もしくは形を変えて継続することになるでしょう。

キャリアアップ助成金

パート、アルバイト、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用(有期雇用)の労働者について、企業内での待遇改善を実施した企業に対して助成するものです。
主に、非正規雇用労働者を正社員化させる取り組みと、賃金アップや賞与・社会保険の適用など処遇改善の取り組みが対象となります。

キャリアアップ助成金についてこちらでまとめています。
キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!

働き方改革推進支援助成金

残業などの時間外労働を月60~80時間以下に抑えるなど、従業員の働き方を改善する目標を設定し、その目標を達成するために以下の取り組みのいずれかを実行した企業に対して、その費用の一部が助成されます。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新(パソコン、タブレット、スマートフォンなどハードウェアの購入や買い換えは対象外)
  • 労務管理用機器の導入・更新(パソコン、タブレット、スマートフォンなどの購入・買い換えは対象外)
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • 小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

働き方改革推進支援助成金について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
「働き方改革推進支援助成金」とは?基本情報や2023年の実施予定を徹底解説!

LED照明等節電促進助成金

LED照明等節電促進助成金は、公益財団法人東京都中小企業振興公社が主催している助成金です。
製造業を営む中小企業者などが節電のための計画を策定し、その計画に必要なLED照明器具・デマンド監視装置・進相コンデンサ・インバータなどの最新設備を自社の工場に設置した場合、その導入費用の一部を助成するというものです。

LED照明器具は、既存の照明器具から切り替える場合のみが助成対象となり、照明の新設は対象外のため注意が必要です。

まとめ

助成金はビジネスの強い味方ですが、職場の健康や労働問題解決のための資金はしっかり手元に置いてからでなければ、助成金の恩恵を十分に受けられません。

注意点があるものの使い道が自由である点などメリットも大きいため、助成金を受給する際は計画的に取り組んでいきましょう。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。