少子高齢化によって人材不足が深刻化する中、社内で働く人のスキルアップを推進するべく人材育成に注力する企業が増えています。また、個人においても自分自身のスキルアップを行うことで、より社内で活躍ができたり、自分に適した企業に転職できたりするケースもあります。

しかし、キャリアアップのための人材育成・訓練にかかる費用は、企業や個人のどちらにとっても負担となることも多いでしょう。そうした企業や個人に向けて、国や地方自治体は助成金や支援制度を実施しています。

そこで、この記事では、企業や個人がスキルアップに利用できる助成金・支援制度を解説します。

スキルアップに活用できる助成金の対象や施策例

ここでは、まずスキルアップに活用できる助成金の対象となる事業主・個人の共通要件や施策例について解説します。制度によって異なる場合もありますが、まずは全体像を把握しましょう。

対象となる事業主・個人とは

従業員のスキルアップに活用できる助成金の多くは、「雇用関係助成金」に含まれる助成金です。本記事で紹介する助成金においても、東京都が行っているスキルアップ支援事業以外の「人材開発支援助成金」「キャリアアップ助成金」「産業雇用安定助成金」は、雇用関係助成金に含まれている制度です。

雇用関係助成金に含まれる助成金には、各助成金に設定されている支給要件の他にも、満たすべき共通要件があります。以下に主な要件の概要をまとめました。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 審査や調査に必要な書類を整備・保管している事業主であること
  • 審査や調査に必要な場合、求められた書類を提出または提示して、審査や調査に協力すること
  • 助成金の申請期間内に手続きを行うこと

また反対に、以下には主な不支給要件の概要をまとめました。

  • 過去5年間、不正受給をしていないこと
  • 過去1年間、労働関係法令の違反を行ったことがないこと
  • 過去の労働保険料を納入していない年度がないこと
  • 暴力団と関わりがないこと
  • 性風俗関連営業や接待を伴う飲食業営業、これらの営業の一部を受託する営業を行っていないこと

また、個人が自分の意思でスキルアップを目指す場合にも、以下のような項目に該当する場合には助成金制度を活用できる可能性があります。

  • 日本国内に居住していること
  • 趣味や教養のみを目的としているわけではなく、働くためのスキルアップを目指していること
  • 失業中や非正規雇用、ひとり親などの事情により、一定の経済的支援が必要とされる立場にあること

対象となるスキルアップ施策の例

スキルアップに活用できる助成金は複数ありますが、いずれも「就労の促進」「キャリア形成の支援」を目的としており、そのために必要とされる学習手段・訓練方法が助成対象です。

制度によって異なりますが、スキルアップ施策の例には、社内研修・外部講師の活用、eラーニングなどが挙げられます。
企業が従業員の能力向上のために導入する社内研修は、人材開発支援助成金などの事業主向け制度で広く活用されています。講師を自社内で確保する場合もあれば、外部講師を招いて専門的な内容を指導する研修も多く見られます。

一方、個人が利用する助成制度では、eラーニングを活用した資格取得支援や専門スキルの学習が拡大しています。時間や場所を選ばずに学べるeラーニングは、在職中の社会人や育児・介護中の方でも柔軟に取り組めるため、教育訓練給付制度やハロートレーニングなどで対象となる講座が増加しています。

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【企業】スキルアップに利用できる助成金

ここでは、企業が社内で働く従業員のスキルアップに利用できる助成金を紹介します。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、雇用している社員に対して職務に関連した専門知識や技能を習得するための職業訓練を実施した場合に、かかる費用を一部助成する制度です。

人材開発支援助成金には、以下の6つのコースがあります。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース

コースにより、支給要件や助成額・助成率は異なります。
例えば「人材育成支援コース」で人材育成訓練のOFF-JTを行った場合、賃金助成額は1人1時間あたり800円(中小企業以外は400円)です。

人材開発支援助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材開発支援助成金とは?わかりやすく各コースを解説

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規雇用労働者のキャリアアップ促進のため、正社員化・処遇改善に取り組む事業主を助成する制度です。

キャリアアップ助成金には、以下の6つのコースがあります。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース

コースにより、支給要件や助成額・助成率は異なります。
例えば「正社員化コース」で、1人の有期雇用労働者を正社員化した場合には80万円(大企業は60万円)、無期雇用労働者を正社員化した場合には40万円(大企業は30万円)が支給されます。

キャリアアップ助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025最新】キャリアアップ助成金とは?助成額や申請の流れを解説

産業雇用安定助成金

産業雇用安定助成金とは、自社の人材を「出向」させて雇用維持・人材育成を行う事業主を助成する制度です。

産業雇用安定助成金には、3つのコースがあります。

  • スキルアップ支援コース
  • 産業連携人材確保等支援コース
  • 災害特例人材確保支援コース

※雇用維持支援コースは、令和5年10月1日で廃止されました。

スキルアップに利用できるのは、「スキルアップ支援コース」です。
スキルアップを目的とした在籍型出向に加え、実施後に5%以上賃金を向上させることで、助成されます。助成率は中小企業が2/3、中小企業以外は1/2となっています。

産業雇用安定助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【最新版】産業雇用安定助成金とは?各コースをわかりやすく解説

【東京都】スキルアップ支援事業

東京都は、都内の中小企業などを対象に、以下の4つのスキルアップ支援制度を実施しています。

  • 事業内スキルアップ助成金:職務のスキルアップのために自社で企画した研修を対象とした制度
  • 事業外スキルアップ助成金:職務のスキルアップのために公開研修を利用して実施する研修を対象とした制度
  • DXリスキリング助成金:自社のDXのために実施する研修を対象とした制度
  • 育業中スキルアップ助成金:従業員本人が希望し育業中受講するスキルアップのための研修を対象とした制度

令和7年度の【東京都】スキルアップ支援事業の詳細は、東京しごと財団のホームページを確認してください。

また、企業の人材育成やリスキリングに活用できる助成金・補助金について、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:【2023最新】社員研修・人材育成に活用できる助成金一覧!
関連記事:【2023最新】リスキリングに利用できる助成金・給付金一覧!

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【個人】スキルアップに利用できる支援制度

ここでは、個人のスキルアップに利用できる支援制度を紹介します。

教育訓練給付制度

教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練講座を自己負担で受講した際に、教育訓練にかかった経費の一部が給付される制度です。

対象は、一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者(在職者)や一般被保険者等であった離職者です。
一般教育訓練の場合、講座の終了後に本人が支払った教育訓練費用の20%(上限10万円)がハローワークから支給されます。

訓練の内容や支給要件の詳細は、厚生労働省のホームページをご覧ください。

ハロートレーニング

ハロートレーニングとは、求職者が希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得できる支援制度です。

「公共職業訓練(離職者訓練)」と「求職者支援訓練」の2種類があり、離職者であればどちらも受講料無料です。
また、求職者支援訓練において一定の支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を支援するための給付金(雇用保険または職業訓練受講給付金)が受けられます。

ハロートレーニングの詳細は、厚生労働省の特設ページをご覧ください。

母子(父子)家庭自立支援給付金

母子(父子)家庭自立支援給付金とは、母子家庭の母または父子家庭の父の経済的な自立を支援する制度です。

母子(父子)家庭自立支援給付金では、以下の2つの事業を行っています。

  • 自立支援教育訓練給付金
  • 高等職業訓練促進給付金等事業

自立支援教育訓練給付金では、対象の教育訓練を受講・修了した場合、経費の60%が支給されます。

支給要件や給付額の詳細はこども家庭庁のホームページをご覧ください。

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スキルアップに利用できる助成金・支援制度を活用する際の注意点

スキルアップに利用できる助成金・支援制度を活用する際の注意点を解説します。

支給要件をよく確認する

助成金や支援制度を利用する際は、各制度の支給要件を事前によく確認しましょう。
支給要件を満たしていない場合には、助成金や支援制度を活用できません。

また、各制度には不支給要件も定められています。自社が該当する場合には、支給要件を満たしていても受給できません。

「支給要件の内容がよくわからない」「制度について詳しく理解する時間を取れない」などの場合には、助成金申請のコンサルティング業者に依頼することがおすすめです。

自社に適した助成金の提案や手続きのサポートなども行ってもらえるため、自社で行う工程を大きく低減できるでしょう。
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期限内に必要な手続きを行う

助成金を申請する際には、基本的に計画届を提出し、事業を実施します。そして、実施後に助成金申請を行う必要があります。

それぞれの書類の提出には期限が設けられているため、必ず期限内に必要な手続きを行いましょう。助成金によっては多数の必要書類の提出が求められることもあるため、できる限り早めに準備してください。

まとめ

この記事では、企業や個人がスキルアップに利用できる助成金・支援制度を解説しました。
助成金や支援制度を利用するには、必ず各制度に定められている支給要件を満たしたうえで、規定の手続きを行うことが必要です。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。