企業が継続して事業活動を行うには、優れた人材の獲得や雇用の定着が必要不可欠です。
しかし少子高齢化から2024年問題が叫ばれるなど、人材不足に悩んでいる企業も多いでしょう。その中には、コストがかかることから雇用環境の整備や採用活動自体に注力できない企業もあります。

そうした企業のために、国や地方自治体は支援制度としてさまざまな助成金を用意しています。そこで、この記事では人材採用・雇用に関係する取り組みを行った際に利用できる助成金を紹介します。

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人材採用・雇用に利用できる助成金とは

助成金とは、国や地方自治体が主導している支援金のことです。
返済不要であることから組織の事業活動にかかる負担の軽減につながります。主に雇用や労務、環境整備などに関する支給要件を満たすことで、助成金を受給できます。

この記事では人材採用・雇用に関する助成金の総称である、「雇用関係助成金」を中心について解説します。

雇用関係助成金の共通要件

雇用関係助成金には各助成金に設定されている支給要件の他に、以下の共通する支給要件があります。

  • 雇用保険適用事務所の事業主
  • 助成金の審査に必要な書類などを整備・保管している事業主
  • 助成金の審査に必要な場合、書類や実地調査などに協力する事業主
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人材採用・雇用に利用できる助成金一覧

ここでは、人材採用・雇用に利用できる助成金一覧を紹介します。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金とは、ハローワークなどの紹介を経て、就職困難者を雇用した場合に活用できる助成金です。雇用する労働者により、5つのコースに分けられています。

  • 特定就職困難者コース(高年齢者・障害者・母子家庭の母など)
  • 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース(発達障害者または難治性疾患患者)
  • 就職氷河期世代安定雇用実現コース(就職氷河期に正規雇用の機会を逃し、正規雇用に就くことが困難な労働者)
  • 生活保護受給者等雇用開発コース(就労支援の要請があった生活保護受給者など)
  • 成長分野等人材確保・育成コース(特定求職者雇用開発助成金の対象労働者を成長分野の業務に就かせるなど)

助成額は各コースにより異なります。
例えば特定就職困難者コースのうち、「短時間労働者以外の者」かつ「高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等」の枠で採用した場合には、支給額は60万円/1年(中小企業事業主以外は50万円)です。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは、就職困難な求職者を試行的に雇用する場合に支援される助成金です。雇用する労働者により、3つのコースに分けられています。

  • 一般トライアルコース(職業経験の不足などで就職困難な求職者)
  • 障害者トライアルコース・障害短時間トライアルコース(障がい者)
  • 若年・助成建設労働者トライアルコース(35歳未満か女性求職者)※建設事業主のみ

助成額は各コースにより異なります。
例えば一般トライアルコースの場合、支給対象者1人につき月額4万円が支給されます。※母子家庭の母または父子家庭の父の場合には月額5万円。

トライアル雇用助成金の支給要件や申請の流れは、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023最新】トライアル雇用助成金とは?各コースを徹底解説

地域雇用開発助成金

地域雇用開発助成金とは、人材確保が難しい地域に事務所を設置し、求職者を雇用した場合に支援される助成金です。2つのコースに分けられています。

  • 地域雇用開発コース
  • 沖縄若年者雇用促進コース

助成額は各コースにより異なります。
例えば地域雇用開発コースのうち、設置費用が300万円で対象労働者の増加人数が3人の場合、支給金額は50万円(1年ごとに最大3回)です。また中小企業主の場合には支給金額が加算される場合があります。

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

雇用の維持に利用できる助成金一覧

労働者の雇用を維持したいときに利用できる助成金を紹介します。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、経営状況が厳しい事業主が、休業や教育訓練、出向を行い従業員の雇用を維持した場合に支援される助成金です。

雇用調整助成金の助成金額は、令和6年4月1日以降に取り組んだ場合には以下のようになっています。

教育訓練実施率 企業規模 助成率 教育訓練加算額
1/10未満 中小企業 2/3 1,200円
大企業 1/4
1/10~1/5未満 中小企業 2/3
大企業 1/2
1/5以上 中小企業 2/3 1,800円
大企業 1/2

雇用調整助成金の支給要件や申請の流れは、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】雇用調整助成金とは?支給対象や助成額を解説

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雇用環境の整備に利用できる助成金一覧

雇用環境の整備に利用できる助成金一覧を紹介します。

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金とは、魅力ある労働環境をつくる事業主を支援する助成金です。取り組み内容により、以下の8つのコースに分かれています。

  • 雇用管理制度助成コース(※令和4年度より受付停止中)
  • 中小企業団体助成コース
  • 人事評価改善等助成コース
  • 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
  • 外国人労働者就労環境整備助成コース
  • テレワークコース

助成額は各コースにより異なります。
例えば雇用管理制度助成コースの場合、目標達成助成として57万円が支給されます。

人材確保等支援助成金の各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】人材確保等支援助成金とは?各コースを徹底解説

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイトや派遣社員、契約社員などの非正規雇用労働者を正社員にしたり、処遇を改善したりした場合に支援される助成金です。取り組み内容により、以下の6つのコースに分かれています。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース※令和8年3月31日まで

助成額は各コースにより異なります。
例えば中小企業が正社員化コースに取り組んだ場合、助成額は80万円(40万円×2期)です。

キャリアアップ助成金の各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024年最新】キャリアアップ助成金とは?各コースを徹底解説

産業雇用安定助成金

産業雇用安定助成金とは、自社の労働者を出向させることでスキルアップを支援したり、生産性向上に必要な人材を雇用したりする際に支援される助成金です。

雇用関係助成金には、以下の2つのコースが含まれています。

  • スキルアップ支援コース
  • 産業連携人材確保等支援コース

助成額・助成率は各コースにより異なります。
例えば中小企業がスキルアップ支援コースに取り組んだ場合、助成率は2/3です。また、助成額は以下のうち、低い額に助成率をかけた額(最長1年)です。

  • 出向中の賃金のうち出向元が負担する額
  • 出向前の賃金の1/2の額

産業雇用安定助成金の助成額や対象となる取り組みなどは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【最新版】産業雇用安定助成金とは?各コースをわかりやすく解説

両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、仕事と家庭の両立に取り組む事業主を支援する助成金です。取り組み内容により、以下の7つのコースに分かれています。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 育休中等業務代替支援コース
  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース
  • 事業所内保育施設コース
  • 不妊治療両立支援コース

助成額は各コースにより異なります。
例えば出生時両立支援コースの第一種の場合、1人目は20万円、2~3人目は10万円が支給されます。

両立支援等助成金の各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024年最新】両立支援等助成金とは?各コースを徹底解説

【対象別】雇用関係の助成金まとめ

ここまで紹介した助成金を中心に、採用したい対象別にまとめました。

ハローワーク等を経由した求職者

ハローワーク等を経由して求職者を雇用したい場合、以下の3つの助成金を利用できる可能性があります。

  • 特定求職者雇用開発助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 地域雇用開発助成金

関連記事:【2023最新】ハローワーク等の紹介による雇用で利用できる助成金一覧!

60歳以上の高齢者

60歳以上の高齢者の雇用や環境整備をしたい場合、以下の5つの助成金を利用できる可能性があります。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
  • 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
  • 65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
  • 高年齢労働者処遇改善促進助成金

関連記事:高齢者を雇用すると助成金がもらえるって本当!?

シングルマザー・シングルファザー

シングルマザー・シングルファザーを雇用したい場合、以下の助成金を利用できる可能性があります。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

障がい者

障がい者の雇用や環境整備をしたい場合、以下の助成金を利用できる可能性があります。

  • トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
  • キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
  • 障害者作業施設設置等助成金((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
  • 障害者福祉施設設置等助成金((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
  • 障害者介助等助成金((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
  • 障害者雇用相談援助助成金((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
  • 重度障害者等通勤対策助成金((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)
  • 重度障害者等多数雇用事業所施設設置等助成金((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)

関連記事:【2023年最新】障がい者雇用で活用したい助成金一覧!基本的な知識や注意点を解説

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まとめ

この記事では、人材採用・雇用に関係する取り組みを行った際に利用できる助成金を紹介しました。

人材採用・雇用は持続的な経営活動を行うためにも、不可欠な取り組みです。しかし、費用がかかることから積極的な採用・雇用や環境整備を実施できない企業も多くあります。そういった場合には、助成金の利用がおすすめです。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。