事業を行ううえで、大きなコストとなるのが人件費です。資源高や円安による輸入物価の上昇など日本経済の低迷により、さまざまな負担が増えている企業にとって、コストの削減が欠かせません。
一方で、政府の方針や社会的なニーズにより、賃上げが求められることが増えています。
そのため、政府や各団体により、賃上げを支援する助成金・補助金が多く用意されています。今回は、賃上げに活用できる助成金、賃上げにより上限を引き上げられる補助金を紹介します。
目次
企業が上げするメリット
企業が最低賃金・賃上げするメリットを解説します。
従業員満足度(ES)の向上
賃上げを行うことで、在籍する従業員満足度(ES)の向上に直結する可能性があります。
2020年に行われた「働き方・待遇に関する意識調査」というアンケート調査によると、従業員が待遇について自社に望むこととして、他の項目と比較して圧倒的に「基本給のアップ」を望んでいるという結果になりました。
参考:株式会社エデンレッドジャパン「ビジネスパーソンと企業を比較した「働き方・待遇に関する意識調査」」
採用活動の優位性が強化
賃上げすることで、競合他社よりも採用活動を優位に進められます。優れた人材を確保できれば、長期的な目線で見ると生産性の向上が期待できるでしょう。
労働人口の減少による影響で、多くの企業が人材不足に悩んでいます。競合他社と比較してうまく採用活動が進まない場合には、賃金額の設定に問題があるかもしれません。問題がある場合には賃上げを検討することも一つの手といえるでしょう。
中小企業は税制優遇制度が受けられる
中小企業の中には、資金力の関係で賃上げが難しい企業も多くあるでしょう。そうした企業のために、2022年4月から「中小企業向け賃上げ促進税制」が施行されました。
賃上げ促進税制とは、中小企業が従業員の給与を前年度より賃上げした場合に、その賃上げした額の一部を法人税額から控除する制度です。
賃上げが節税につながるため、多くの中小企業が賃上げに踏み切っています。日本商工会議所の「2023年度の賃金(正社員)の動向」によると、2023年度に所定内賃金の引き上げを実施した、もしくは予定している企業は62%にも及びます。
賃上げに活用できる助成金一覧
賃上げに活用できる助成金を紹介します。
助成金は、返済不要の資金調達方法です。各助成金ごとに定められた支給要件を満たしたうえで申請することで支給されます。各助成金の支給要件に当てはまっているかどうかを確認しましょう。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!
業務改善助成金
業務改善助成金とは、生産性向上のために取り組みを行いつつ、事業内最低賃金の引き上げと賃上げを行う企業を支援する助成金です。
たとえば、生産性向上のためにPOSレジシステムを導入し、在庫管理にかかる時間や手間を短縮するといった取り組みにかかった費用の一部が助成されます。また、デリバリーのためのバイクを導入した場合に、バイクを活かして新たにデリバリーサービスを周知するための広告宣伝費にも活用可能です。
対象者は、主に以下のような要件を満たす必要があります。
- 中小企業・小規模事業者
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由に当てはまらない
業務改善助成金の助成率及び助成上限額は、事業場内最低賃金を引き上げた額や引き上げた労働者数、事業規模によって異なります。たとえば、事業者規模30人未満、事業内最低賃金900円未満の事業所で、労働者1人の賃金を30円引き上げた場合には、助成率9/10、助成上限額60万円が助成上限額です。
業務改善助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】業務改善助成金とは?概要や目的、助成額を徹底解説
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイト・派遣社員など非正規雇用労働者のキャリアアップのために正社員登用や処遇改善などを実施した企業を支援する助成金です。
以下の6つのコースがあります。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
それぞれのコースによって支給要件や対象者、助成額は異なります。
正社員化コースの場合、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用者を正社員に転換したうえで、賃金額、その他の待遇改善改善(「固定的賃金」の3%以上の上昇、その他)を行い、6カ月以上継続して雇用すること等が要件で、助成金額は、1名当たり57万円(中小企業の場合)です。
※その他にも、支給要件があります。
キャリアアップ助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説最低賃金・賃上げにより上限引き上げができる補助金一覧
最低賃金・賃上げを行うことで、上限の引き上げが可能な補助金を紹介します。
補助金は、助成金同様に返済不要の資金調達方法です。しかし、助成金とは異なり審査を通過する必要があるため、申請すれば必ず受給できるわけではありません。各補助金の目的を達成できるか、経済に貢献する事業かどうかといった点が審査されます。
補助金によっては採択率が異なりますが、人気の補助金の場合には30%程度になることもあります。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、商品・サービスの開発や生産プロセスの改善などに必要な設備投資を支援する補助金です。
以下5つのコースがあります。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル市場開拓枠
回復型賃上げ・雇用拡大コース以外は、事業完了後の3~5年で大幅な賃上げに取り組むと、補助上限を100万~1,000万円上乗せされることが決定しました。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、ポストコロナの社会変化に対応するために、中小企業などの事業再構築に取り組む企業を支援する補助金です。
以下8つのコースがあります。
- 成長枠
- グリーン成長枠
- 卒業促進枠
- 大規模賃金引上促進枠
- 産業構造転換枠
- サプライチェーン強靭化枠
- 最低賃金枠
- 物価高騰対策・回復再生応援枠
このうち、成長枠やグリーン成長枠では、事業場内最低賃金を45円以上、給与支払い総額を6%以上達成した場合に、補助率が以下のように引き上げられます。
- 中小企業:1/2→2/3(賃上げを行った場合)
- 中堅企業:1/3→1/2(賃上げを行った場合)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、企業の持続的な経営に向けた経営計画をもとにした、販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する補助金です。
以下5つのコースがあります。
- 通常枠
- 賃金引上げ枠
- 卒業枠
- 後継者支援枠
- 創業枠
このうち賃金引上げ枠の場合、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上向上させると、補助上限額が200万円に引き上げられます。
まとめ
最低賃金・賃上げをすることで、従業員のモチベーションアップや優秀な人材確保につながります。とはいえ、さまざまなコストが高騰している中、従業員の賃金の支払いや賃上げは、悩ましい問題です。
そうした企業を支援するために、政府は様々な助成金・補助金を用意しています。しかし、多くの種類があるため、「自社に適した助成金・補助金がわからない」という声もよく聞きます。
助成金サポート.JPでは、助成金申請を完全サポートしています。これから助成金の申請を検討される場合、まずはお気軽にご相談ください。