雇用調整助成金は2024年4月に改定され、これまで以上に教育訓練による雇用調整が実施しやすくなるように見直されました。経済上の理由で教育訓練の実施が難しいもののリスキリングを強化したい場合には、雇用調整助成金の活用を検討すると良いでしょう。
しかし、すべての教育訓練が対象となるわけではないため、支給要件を確認することが必要です。
そこで、この記事では雇用調整助成金で教育訓練を実施する場合の支給要件や助成率、申請書類について解説します。
雇用調整助成金とは?教育訓練が注目される理由
雇用調整助成金とは、事業活動を縮小した事業主が、従業員を一時的に休業・教育訓練・出向させることで雇用維持に努めた場合に助成される制度です。
ここでは、雇用調整助成金の仕組みと、教育訓練を活用するメリットをわかりやすく解説します。
制度の目的と仕組み
雇用調整助成金の主な目的は、景気の悪化や取引環境の変化による一時的な経済的影響から従業員の雇用を守ることです。事業主を支援することで、従業員の失業を防ぐ役割があります。
制度の仕組みは、以下の通りです。
- 事業主が従業員を休業・教育訓練・出向させる
- その際に支払った休業手当や教育訓練費の一部が助成される
この仕組みにより、企業は経済的な負担を軽減しながら雇用を維持でき、従業員は安定した雇用とスキルアップの機会を得られます。
雇用関係助成金全体の概要や支給要件、助成額などの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】雇用調整助成金とは?支給対象や助成額を解説
またここから、雇用調整助成金における「教育訓練」を実施する場合の支給要件や助成額、申請書類について解説します。
教育訓練を実施するメリット
雇用調整助成金を活用して教育訓練を受けることによって、企業と従業員のどちらにも役立つ以下のようなメリットがあります。
- 従業員のスキル向上
- 助成金の活用による経済的負担の軽減
- 組織全体の能力向上
このように、教育訓練を実施することで、人材育成や競争力の強化といった事業の成長にもつながりちます。
雇用調整助成金の対象となる事業主

雇用調整助成金の対象となるのは、以下の要件をすべて満たしている事業主です。ここでは、雇用調整助成金の対象となる事業主の要件について、それぞれ詳しく解説します。
事業活動を縮小していること
ここでいう「事業活動の縮小」として、以下の生産量要件・雇用量要件を満たしていること
が挙げられます。
- 【生産量要件】売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること
- 【雇用量要件】雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比べて大企業の場合は5%を超えてかつ6人以上、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上増加していないこと
労使間の協定を結んでいること
雇用調整(休業・教育訓練・出向)の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って雇用調整を実施する必要があります。
労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合の代表、労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間で書面により行うことが求められます。
その他の要件
その他には、以下のような支給要件があります。
- 雇用保険適用事業主であること
- 労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などの書類を整備・保管すること
- 上記書類を適切な手続きによって提出すること
- 労働局などの実地調査を受け入れること
支給要件の詳細は公募要領を確認するか、助成金コンサルタントに相談することがおすすめです。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説雇用調整助成金における教育訓練の対象労働者とは?

教育訓練の対象となる労働者とは、雇用保険被保険者のことです。
ただし、対象外となる要件もあるため、労働者が該当しないか確認する必要があります。以下に主な条件をまとめました。
- 教育訓練を行った日が雇用されてから6か月未満の場合
- 解雇・退職予定の場合
- 雇用保険法第37条の5第1項の申出をして高年齢被保険者となった場合
- 日雇い労働被保険者
- 特定求職者雇用開発助成金などの支給対象の場合
詳細は支給要件を確認するか、助成金コンサルタントに相談してください。
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雇用調整助成金の助成対象となる教育訓練の要件

雇用調整助成金で助成対象となる教育訓練について解説します。
対象となる教育訓練
雇用調整助成金の対象となる教育訓練の要件を以下にまとめました。
| 1 | 労使間の協定による教育訓練であること |
|---|---|
| 2 | 事業主が指定した対象期間内(1年間)に行われること |
| 3 | 対象労働者の教育訓練を実施する延日数が、所定労働延日数の1/20(大企業の場合は1/15)以上となること(休業等規模要件) |
| 4 | 職業に関連する知識、技術の習得または向上を目的とする教育や訓練、講習などであること |
| 5 | 所定労働日の所定労働時間内において実施すること |
| 6 | 以下のいずれかに該当すること
|
対象となる教育訓練の例
以下に対象となる教育訓練の具体的な例を紹介します。自社で行う教育訓練の内容を検討する際の参考にしてください。
| 事業所内訓練 |
|
|---|---|
| 事務所外訓練 |
|
対象外の教育訓練
以下のいずれかに該当する場合、雇用調整助成金は受給できません。よく確認することが必要です。
| 不支給要件 | 具体例 |
|---|---|
| 職業に関する知識、技能または技術の習得または向上を目的としないもの |
|
| 職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの (法令の遵守のために 必要な知識の習得を目的とするものは除く。) |
接遇・マナー講習 |
| 実施目的が訓練に直接関連しない内容のもの |
|
| 通常の生産・事業活動と区別がつかないもの |
|
| 教育訓練の実施状況が確認できないもの | 指導員や講師が不在のまま行われるもの(自習やビデオの視聴) |
| 対象労働者の要件等から対象外となるもの | 入社時研修 |
| 法令で講習の受講が義務づけられているもの (労働者が資格を取得・更新するための法定講習などの場合を除く。) |
労働安全衛生法関係の教育 |
| 教育訓練実施時間中に業務が行われるもの(教育訓練の時間と区別可能な形で行われる場合を除く。) | OJT教育 |
| 教育訓練科目、職種等の内容に関する知識または技能、実務経験、経歴を有する指導員または講師(資格の有無は問わない)により行われないもの | 総務部の社員による製造現場における安全講習 |
| 再就職の準備のためのもの | 再就職するための職業訓練 |
| 過去に行った教育訓練を、同一の労働者に実施するもの | |
| 海外で行われるもの | 海外研修 |
| 外国人技能実習生に対して実施するもの |
雇用調整助成金(教育訓練)の助成率

雇用調整助成金において教育訓練を実施した場合の助成額は、教育訓練を実施した場合の賃金に相当する額に、助成率(中小企業:2/3、大企業:1/2)を乗じて得た金額です。
ただし、1人1日当たり雇用保険基本手当日額の最高額(令和7年8月1日時点で8,870円)が上限額となっています。
| 教育訓練実施率 | 企業規模 | 助成率 | 教育訓練加算額 |
|---|---|---|---|
| 1/10未満 | 中小企業 | 2/3 | 1,200円 |
| 大企業 | 1/4 | ||
| 1/10~1/5未満 | 中小企業 | 2/3 | |
| 大企業 | 1/2 | ||
| 1/5以上 | 中小企業 | 2/3 | 1,800円 |
| 大企業 | 1/2 |
※教育訓練実施率:休業等の延日数のうち、教育訓練を実施した日数の割合
雇用調整助成金(教育訓練)の申請の流れ
ここでは、雇用調整助成金(教育訓練)を実施する場合の申請の流れや申請書類について解説します。
申請の流れ
以下に、雇用調整助成金の申請の流れをまとめました。
- 教育訓練の計画を立てる
- 休業等実施計画(変更)届に記入し、都道府県労働局かハローワークに提出する
- 計画届に基づき、教育訓練を実施する
- 教育訓練終了後、支給申請を行う
- 支給申請の内容をもとに審査し、問題なければ支給が決定する
- 助成金額が支給される
※計画届の提出~支給申請は、支給対象期ごとに実施する必要があります。
また提出期日は、支給対象期間中の、教育訓練を開始する日の前日までです。ただし初回の届出の場合は、教育訓練の初日の2週間前までに提出することが推奨されています。期日が定められているため、なるべく早く準備を整え、書類の不備がないようにしておきましょう。
申請書類一覧
以下に、雇用調整助成金(教育訓練)を実施する場合の申請書類一覧をまとめました。申請時の参考にしてください。
| 休業・教育訓練の場合 | |
|---|---|
| 計画届提出時 |
|
| 支給申請時 |
|
各書類の詳細や提出タイミング、記入方法については以下の記事をご覧ください。
関連記事:【記入例あり】2024年雇用調整助成金の申請書類一覧まとめ
まとめ
この記事では、雇用調整助成金で教育訓練を実施する場合の支給要件や助成率、申請書類について解説しました。
職業に関する知識、技能または技術の習得または向上を目的とした教育訓練であれば、雇用調整助成金の対象となり、費用の一部が助成される可能性があります。
「支給要件を満たしているかわからない」「申請方法に自信がない」などの場合には、助成金コンサルタントに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。

