景気変動や原材料の高騰などの理由により、労働者の継続した雇用が難しい場合に活用できる制度が雇用調整助成金です。労働者の一時的な休業や出向などした際に、休業手当などの補填として助成金を受給できます。
その際、申請方法や提出書類に不備や抜け漏れがあると、支給要件を満たしていても不支給となる場合があります。そのため、申請時には支給要件だけでなく申請方法や手続きについても把握することが大切です。
そこで、この記事では、雇用調整助成金の概要や申請の流れ、申請書類について解説します。
目次
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用維持のために一時的な休業・教育訓練・出向を実施した場合に費用の一部を助成する制度です。
【主な支給要件】
- 売上高または生産量などが、最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること
- 雇用保険被保険者数や派遣労働者数による雇用量が一定以上増加していないこと
【助成率】
助成率や教育訓練加算額を以下にまとめました。
教育訓練実施率 | 企業規模 | 助成率 | 教育訓練加算額 |
---|---|---|---|
1/10未満 | 中小企業 | 2/3 | 1,200円 |
大企業 | 1/4 | ||
1/10~1/5未満 | 中小企業 | 2/3 | |
大企業 | 1/2 | ||
1/5以上 | 中小企業 | 2/3 | 1,800円 |
大企業 | 1/2 |
※教育訓練実施率:休業等の延日数のうち、教育訓練を実施した日数の割合
雇用調整助成金の支給要件や対象事業主などの詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】雇用調整助成金とは?支給対象や助成額を解説
雇用調整助成金の申請の流れ
ここでは、雇用調整助成金の申請の流れを詳しく解説します。
1.雇用調整の計画
まずは、実施する雇用調整について具体的に計画を立てましょう。その際には必ず、休業・教育訓練・出向のいずれかの取り組みに関する支給要件を満たすような計画にしてください。
例えば、以下のような内容は決めておくとスムーズかつ効果的な取り組みになります。よく検討しましょう。
【出向】
- 休業の対象労働者の部門・人数・予定日数
- 休業対象者の公平な選定方法
【教育訓練】
- 教育訓練の対象労働者の部門・人数・予定日数
- 教育訓練の内容や実施予定施設
- 訓練後のフォローアップ(効果測定)
【出向】
- 出向先の選定
- 出向先や出向労働者との間での調整(労働者数、期間、勤務地、労働条件など)
はじめて助成金に申し込む場合や人手不足の場合などには、申請サポートのプロである助成金コンサルタントに依頼することがおすすめです。自社の状況や希望に応じて、より適した雇用調整になるよう提案してくれます。
2.計画届の提出
雇用調整計画届は取り組み内容により、様式や提出期限、変更時の対応が異なります。
【休業・教育訓練】
- 申請時
休業・教育訓練の場合の様式は、「(様式第1号(1))雇用調整助成金 休業等実施計画(変更)届」です。
提出期日は、支給対象期間中の休業・教育訓練を開始する日の前日まで(郵送時、締切日必着)です。ただし初回の届出のみ開始日2週間前までを目安に提出することが推奨されています。
また実施計画届以外にも申請に必要な書類・添付書類がいくつかあります。すべて準備したうえで、事業所を管轄している都道府県労働局またはハローワークに提出する必要があるため、早めに準備しましょう。申請書類の詳細はのちほど解説しますので、併せて参考にしてください。
- 変更時
実施計画届を提出後に何らかの変更が発生した場合、「(様式第1号(1))雇用調整助成金 休業等実施計画(変更)届」を変更届として使用し、添付書類とともに再度提出してください。
ただし、休業の日数・実人数が減少する場合や休業の日数が増加せずに実施日を変更する場合には、変更届の提出は省略できます。一方で教育訓練の場合はすべての場合で変更届の提出が必要です。
変更の提出期日は、変更する休業・教育訓練の実施日の前日までです。
【出向】
- 申請時
出向時の様式は、「(様式第2号(1))出向実施計画(変更)届」です。
提出期日は、支給対象期の初日の前日まで(郵送時、締切日必着)です。ただし初回の届出のみ開始日2週間前までを目安に提出することが推奨されています。
- 変更時
実施計画届を提出後に何らかの変更が発生した場合、「(様式第2号(1))出向実施計画(変更)届」を変更届として使用し、添付書類とともに再度提出してください。
ただし、「出向元事務所の事務担当者職・氏名」「出向予定者の変更」「出向実施予定期間の短縮」のいずれかに関する変更の場合には、変更届の提出は省略できます。
変更の提出期限は、変更する出向の実施日の前日までです。
3.雇用調整の実施
計画届に基づいて、雇用調整を実施します。
変更届に記載していない変更があった場合、助成金は受給できないため、特に外部機関との調整が必要な教育訓練や出向を行う際は事前に内容をよく確認しましょう。
また支給申請を行う際に、以下の対象労働者の労務管理に関する書類の提出が求められます。日ごろから、正確かつ適正な管理を心がけましょう。
休業・教育訓練の場合 | 出向の場合 |
---|---|
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4.支給申請を行う
休業・教育訓練・出向を実施したら、以下の支給申請書を記入して助成金の支給申請を行いましょう。その他の必要書類も併せて用意したのち、都道府県労働局もしくはハローワークに提出してください。
- 休業・教育訓練の場合:「(様式第5号(1))支給申請書(休業等)」
- 出向の場合:「(様式第6号(1))支給申請書(出向)」
支給申請の期日は、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内(支給申請にかかる休業手当または賃金の支払い日以降に限る)です。郵送による提出の場合は締切日まで必着ですので、余裕をもって提出しましょう。
5.助成金の受給
提出した書類をもとに支給申請の内容が労働局で審査され、問題なければ助成金の支給が決定します。
支給決定後、決定額が希望した振込先に支払われます。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説雇用調整助成金の申請書類・申請期限
ここでは、雇用調整助成金の主な申請書類をまとめています。休業・教育訓練と出向の場合とで提出書類や書類の様式が異なるため、以下を参考にしてください。
休業・教育訓練の場合 | 出向の場合 | |
---|---|---|
計画届提出時 |
|
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支給申請時 |
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各書類の詳細や提出タイミング、記入方法については以下の記事をご覧ください。
関連記事:【記入例あり】2024年雇用調整助成金の申請書類一覧まとめ
まとめ
この記事では、雇用調整助成金の概要や申請の流れ、申請書類について解説しました。
雇用調整助成金の申請は、「休業・教育訓練」と「出向」のどちらに取り組むかにより、申請の期日や必要な申請書類・添付書類、書式の様式などが異なります。そのため、支給要件とともに申請の流れについてもよく確認しましょう。
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