助成金の申請をするためには会社の代表自らが申請を行うか社労士に代行してもらうかの2パターンがあります。

この2つのパターンを比べた時に、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下で比べていきましょう。

そもそも社労士って?

社労士とは、社会保険労務士のことで労働関連の法令や社会保障令のスペシャリストで、国家資格を保有する人たちです。


企業の成長には、お金、モノ、人材が必要とされておりますが、社労士はその中でも人材に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っております。

社労士は、企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。
引用:全国社会保険労務士会連合会

そんな社労士は、助成金の申請を代行することができます。

助成金を「なんかよく分からないけどお金がもらえるオイシイもの」と捉えている読者諸君などは「社労士と助成金に一体どんな因果関係が…?」などと思われるかもしれませんが、ちゃんとした理由があります。
助成金は雇用関係のものが多いですね。助成金とは「国の政策に合わせた活動につき、一部費用を助成する」という目的のもと出されるお金です。――なので、本来助成金とは労働者の生活の安定や労働環境の改善のためにあるものなのです。決して経営者がお寿司を食べるために支給されるお金ではありません。

そのため、例えば労働基準法を守らずに「うちは見なし残業だからどれだけ残業しても残業代は出ないよ。」などと違法に従業員を使役するような会社は助成金を受け取ることができない場合があります。

しかし日本の経営者は労働関連の法案に対してのスペシャリストではありません。そこで手助けをしてくれるのが社労士というわけです。

助成金は社労士に申請代行を依頼すべきか?

結論から申し上げると、助成金は社労士に申請代行を依頼するほうが良いです。労働法に関する専門的な知識がない場合はなおさらです。――というのも、そうしなければ労働力に見合った助成金を得ることができないためです。

助成金を申請すると、労働局から様々なチェックがされることになります。例えば、休憩はしっかり1時間とっているか、週に40時間以上労働をさせていないか、残業代はきっちり支払っているか――などです。
例えば「みなし残業」であっても「みなし」を超える残業代は支払う必要がありますし、残業代は基本給の1.25倍を支払う必要があります。これを遵守できている企業というのは意外と少ないかもしれません。

――まぁ何はともあれそれぞれのメリット・デメリットをチェックしていきましょう。

Check!

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自分で申請する場合のメリット・デメリット

まず自分で助成金を申請する場合のメリット・デメリットから見ていきましょう。

メリット

メリットとしては、申請して受け取ることができた助成金をまるまる会社の資金として使用することができるという点です。
社労士に助成金の申請を依頼すれば成果報酬として助成金の数%が請求されることになりますが、自分で申請した場合はこういった報酬を支払う必要はありません。

デメリット

デメリットとしては、「時間がかかること」「受け取れない可能性があること」「不正受給となってしまう可能性があること」です。

まず今まで労働関連の法令を遵守できていなかった場合は助成金を申請する前に皆さんの会社の労働環境を整える必要があります。これが意外と大変で、思わぬところで違反してしまっていることもあります。もし申請してからこういったイリーガルなことが判明すると、せっかく書類を整えても助成金を受け取れない可能性もあります。

助成金を申請すると、労働局の実地調査が入ったりします。もし皆さんの会社で酷い違法労働を従業員に対して強制しているような場合、実地調査でこれが発覚してしまい最悪の場合罰則を受けることにもなります。罰則というのは懲役刑または罰金刑ですね。

うまくイリーガルな部分をごまかせたとしても、後々発覚して不正受給となってしまう可能性もあります。不正受給を行った企業は最低3年間助成金の申請ができなくなってしまいます。

しっかり助成金を受け取るためには勉強して、労働環境を整えて書類を整えて、申請しに行って…色々な時間がかかります。この失われた時間を本業にあてることでどれくらい売上を上げれるでしょうか。
それは多くの場合社労士に依頼する金額よりも低いはずです。

私達日本人はどうも時間に対する価値を理解できておらず、たった数円節約するために大量の時間を使ったりしますが、時間はお金よりも貴重なのです。

社労士に申請代行を依頼するメリット・デメリット

次に社労士に依頼する場合のメリット・デメリットをチェックしてみましょう。

メリット

1番大きなメリットとしては、やはり時間を節約しながら確実に受給できるという点です。

社労士に依頼すると書類などは全て社労士のほうで準備してもらうことができるため、社労士に言われた書類を郵送する程度で助成金を受給することができます。

また、社労士は労働関連法案のスペシャリストで、多くの企業に労務関連のアドバイスをしています。そのため、見るべきポイントというものを分かっています。
ですので、申請後違法労働が発覚することはなく確実に受給することができるのです。

デメリット

デメリットとしては、助成金を受給すると報酬を支払わなければならないという点です。だいたい成功報酬として15%~30%程度はとられると考えておきましょう。

さらに今まで労働基準法を守ってこなかった会社の場合は、労働基準法に対応させることで従業員に残業代を支払ったりする必要がありますから、結果的に手元には何も残らない…なんてこともよくあることです。

助成金は儲け話ではない

ここまで読んでいただいた方は「なんだ、助成金って全然儲からないじゃないか!」などと憤慨されるかもしれないが、冒頭でも申し上げた通り助成金は経営者の皆さんがお寿司を食べるためのものではありません。

「従業員が働きやすい環境をつくってあげたいけど、うちにはそんな余裕がない」「今度子供が生まれるらしいから少し休みを与えてあげたいけど、いなくなったら売上に響く…」そんな状況を救済するために助成金があるのです。

本来なら罰則を受けるべきところ、しっかりと法令を遵守するために環境を整えるために国からお金を出してもらえると考えて助成金を申請するようにしましょう。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。