雇用している労働者の人材育成には、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)を活用することがおすすめです。訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されるため、企業の負担を低減できます。

しかし、教育訓練といってもさまざまな訓練があるため、支給要件を満たすには各コースや訓練メニューの内容をよく理解することが欠かせません。

そこで、この記事では人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の概要や支給要件、助成金額などを詳しく解説します。

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人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは

そもそも人材開発支援助成金とは、企業の人材育成を促進するために、労働者の体系的な職業能力開発を支援する制度のことです。

人材開発支援助成金には、取り組み内容によって以下の6つのコースに区分されています。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース

関連記事:【2024最新】人材開発支援助成金とは?わかりやすく各コースを解説

上記のうち、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは、雇用している労働者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させる訓練を計画・実施した場合に助成するコースです。

人手不足の解消のために、社内にすでに在籍している従業員の人材育成を進めたい企業におすすめのコースです。

人材育成支援コースでは、訓練の内容により以下の3つの助成メニューに分類されています。

  • 人材育成訓練
  • 認定実習併用職業訓練
  • 有期実習型訓練

ここからは、それぞれのメニューにおいて支給要件や対象となる労働者、助成額・助成率について解説します。

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人材育成支援コース「人材育成訓練」の支給要件・助成額

人材育成訓練とは、「職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を、事業主もしくは事業主団体などが実施する場合の助成メニュー」です。

支給要件

人材育成訓練では、以下の支給要件を満たす必要があります。

1 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練「職務関連訓練」であること
2 OFF-JTであること
3 訓練の実施方法が「通学制」「同時双方向型の通信訓練」「eラーニング」「通信制」のいずれかであり、加えて以下のいずれかに該当すること

  • 【通学制または同時双方向型の通信訓練の場合】1コースあたりの実訓練時間数が職業訓練実施計画届の届け出時及び支給申請時 において10時間以上であること
  • 【eラーニングによる訓練等および通信制による訓練等の場合】1コースあたりの標準学習時間が10時間以上であること、または1コースあたりの標準学習期間が1か月以上であること
    ※一般教育訓練等の指定講座の訓練の場合は、この要件を要しません
4 「事業外訓練(社外の機関による訓練)」または「事業内(自社内での訓練)」のいずれかであること

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1 助成金を受けようとする事業主の事業所または事業主団体等が実施する訓練等を被保険者に受講させる事業主の事業所において、以下のいずれかに該当する労働者であること

  • 訓練実施期間中において、被保険者であること
  • 従来から雇用されている有期契約労働者等または新たに雇い入れられた有期契約労働者等であり、訓練の終了日または支給申請日に被保険者であること
2 職業訓練実施計画届時に提出した「対象労働者一覧」に記載のある労働者であること
3 以下のいずれかに該当する労働者であること

  • 【通学制および同時双方向型の通信訓練の場合】訓練等の受講時間数が、実訓練時間数の8割以上の者であること
  • 【eラーニングによる訓練等および通信制による訓練等の場合】訓練実施期間中に訓練等を修了した者であること
4 【育児休業中訓練の場合】育児休業期間中に訓練の受講を開始するものであること

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金」

助成額・助成率

人材育成訓練の助成額・助成率は以下のとおりです。

対象労働者 経費助成 経費助成への加算措置 賃金助成
(1人1時間あたり)
賃金助成への加算措置
正規雇用労働者など 45%
(30%)
+15% 800円
(400円)
+200円
(+100円)
有期契約労働者など 70% +15%

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

ただし、eラーニング、通信制による訓練は経費助成のみとなり、賃金助成は対象外となることに注意が必要です。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

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人材育成支援コース「認定実習併用職業訓練」の支給要件・助成額

認定実習併用職業訓練とは、「訓練開始前に厚生労働大臣の認定を受けた、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練である実習併用職業訓練(認定実習併用職業訓練)を実施し、ジョブ・カードによる職業能力の評価を実施した場合の助成メニュー」です。

厚生労働大臣の認定要件

主な厚生労働大臣の認定要件を以下にまとめました。

  • 訓練対象者が15歳以上45歳未満の者であること
  • 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
  • 総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
  • 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
  • 訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1 「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下の要件をすべて満たすことが必要です。

1 助成金を受けようとする事業主の事業所において被保険者であり、訓練実施期間中において被保険者であること
2 職業訓練実施計画届時に提出した「対象労働者一覧」に記載のある被保険者であること
3 OFF-JTを受講した時間数がOFF-JT実訓練時間数の8割以上であり、かつ、OJTを受講した時間数がOJT総訓練時間数の8割以上である労働者であること
4 訓練開始日において、15歳以上45歳未満の労働者であること
5 以下のいずれかに該当すること

  • 新たに雇い入れた被保険者
    (雇い入れ日から訓練開始日までが3か月以内である者に限る)
  • 大臣認定の申請前にすでに雇用している短時間等労働者であって、引き続き、同一の事業主において、新たに通常の労働者に転換した者
    (通常の労働者への転換日から訓練開始日までが3か月以内である者に限る)
  • すでに雇用する被保険者
6 【新規学卒予定者以外の者である場合】

  • キャリアコンサルタント(職業訓練に付帯して作成する場合は職業訓練指導者も含む)などによるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを受けること
  • このキャリアコンサルティングの中で、認定実習併用職業訓練への参加が必要と認められる者であること
7 【業務独占資格に係る業務(理美容等)を対象とした訓練である場合】業務独占資格に係るOJTを実施する前までに、当該資格を有している者であること

助成額・助成率

認定実習併用職業訓練の助成額・助成率は以下のとおりです。

対象労働者 経費助成 経費助成への加算措置 賃金助成
(1人1時間あたり)
賃金助成への加算措置 OJT実施助成
(1人1コースあたり)
OJT実施助成への加算措置
雇用保険被保険者 45%
(30%)
+15% 800円
(400円)
+200円
(+100円)
20万円
(11万円)
+5万円
(+3万円)

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

ただし、eラーニング、通信制による訓練は経費助成のみとなり、賃金助成は対象外となることに注意が必要です。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

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人材育成支援コース「有期実習型訓練」の支給要件・助成額

有期実習型訓練とは、「正社員経験が少ない有期契約労働者などを対象に、正規雇用労働者などへの転換を目指すOFF-JTと適格な指導者によるOJTを組み合わせて実施する助成メニュー」です。

支給要件

助成金を支給されるには、以下の要件を満たす必要があります。

1 正規雇用労働者等に転換することを目的に、職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練であること
2 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練「職務関連訓練」であること
3 OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
4 訓練実施期間が2か月以上であること
5 総訓練時間数が6か月あたりの時間数に換算して425時間以上であること
6 総訓練時間数に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
7 OFF-JTは「通学制」または「同時双方向型の通信訓練」であり、1コースの実訓練時間数が、職業訓練実施計画届の届け出時および支給申請時において10時間以上であること
8 OFF-JTは、「事業外訓練」または「事業内訓練」のいずれかであること
9 OJTは、適格な指導者の指導のもとで、計画的に行われるものであること
10 OJTは、原則、対面で行うこと
11 OJTは、OJT実施日ごとに、訓練受講者が「OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)」を作成すること
12 訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1「職業能力証明(訓練成果・実務成果) シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下の要件をすべて満たすことが必要です。

1 有期実習型訓練を実施する事業主の事業所において、訓練の終了日または支給申請日に被保険者であること
2 助成金を受けようとする事業主に従来から雇用されている有期契約労働者等または新たに雇い入れられた有期契約労働者等であること
3 訓練実施期間中において、有期契約労働者等であること
4 職業訓練実施計画届時に提出した「対象労働者一覧」に記載のある 被保険者であること
5 OFF-JTを受講した時間数がOFF-JT実訓練時間数の8割以上であり、かつ、OJTを受講した時間数がOJT総訓練時間数の8割以上である労働者であること
6 キャリアコンサルタントなどにより、職業能力形成の機会に恵まれなかった者で、一定の基準を満たし、かつ、ジョブ・カードを作成したうえで、事業主が実施する有期実習型訓練への参加が必要と認められた者であること
7 正規雇用労働者等として雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと
8 事業主が実施する有期実習型訓練の趣旨、内容を理解している者であること
9 【業務独占資格に係る業務(理美容等)を対象とした訓練である場合】業務独占資格に係るOJTを実施する前までに、当該資格を有している者であること
10 他の事業主が実施した公共職業訓練、求職者支援訓練、実習併用職業訓練または有期実習型訓練を修了後6か月以内の者でないこと
11 同一の事業主が実施した公共職業訓練、求職者支援訓練、実習併用職業訓練または有期実習型訓練を修了した者でないこと

助成額・助成率

有期実習型訓練の助成額・助成率は以下のとおりです。

対象労働者 経費助成 経費助成への加算措置 賃金助成
(1人1時間あたり)
賃金助成への加算措置 OJT実施助成
(1人1コースあたり)
OJT実施助成への加算措置
有期契約労働者など 70% 10% 800円
(400円)
+200円
(+100円)
10万円
(9万円)
+3万円
有期契約労働者を正規雇用労働者などに転換した場合 75% 15%

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

ただし、eラーニング、通信制による訓練は経費助成のみとなり、賃金助成は対象外となることに注意が必要です。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)申請時の注意点

ここでは、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)申請時の注意点について解説します。

支給要件をよく確認する

人材育成支援コースには、3つの助成メニューが用意されており、それぞれの支給要件は詳細に定められています。

例えば、対象となる訓練・経費であっても、支払い方法によって支払い時期が遅れたり、従業員自身に費用を負担させたりした場合には受給できない可能性があります。

そのため、支給要件をよく確認し、事業プロセスに合わせてやるべきことを明確化することが大切です。

事前に就業規則や労働協約などを整備する

人材開発支援助成金の公募要領には、就業規則や労働協約に規定したのちに訓練の実施、手当の支払いなどを行うことを示しています。

例えば、賃上げに係る要件を申請する場合には、資格等手当の支払いについて、就業規則や労働協約などに規定したうえで、 訓練終了後の翌日から起算して1年以内に全ての対象労働者に対して実際に当該手当を支払う必要があります。

このため、人材開発支援助成金を活用する際には、就業規則や労働協約の整備が必要になることも留意しておきましょう。

手続きの期日を遵守する

人材育成支援コースに限ったことではありませんが、各助成メニューにおける申請プロセスには段階ごとに期日が設定されています。期日を守れないと、助成金を受給できなくなるため、スケジュール管理は非常に重要です。
申請プロセスをよく理解し、各プロセスにおける手続き期日を守って必要書類を提出しましょう。

「書類作成にどの程度の時間が必要かわからない」「多忙であり、スケジュール管理する時間を捻出できない」などの場合には、申請サポートを行っている助成金コンサルタントに相談することもおすすめです。

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まとめ

この記事では、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)について解説しました。
人材育成を行う際には、人材開発支援助成金を活用することで、かかる経費を低減できます。ただし、訓練メニューにより支給要件や助成額などが異なるため、よく確認することが大切です。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。