雇用している労働者の人材育成には、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)を活用することがおすすめです。訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されるため、企業の負担を低減できます。

しかし、教育訓練といってもさまざまな訓練があるため、支給要件を満たすには各コースや訓練メニューの内容をよく理解することが欠かせません。

そこで、この記事では人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の概要や支給要件、助成金額などを詳しく解説します。

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人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは、雇用している労働者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させる訓練を計画・実施した場合に助成するコースです。
人手不足の解消のために、社内にすでに在籍している従業員の人材育成を進めたい企業におすすめのコースです。

人材育成支援コースでは、訓練の内容により以下の3つの助成メニューに分類されています。

  • 人材育成訓練
  • 認定実習併用職業訓練
  • 有期実習型訓練

ここからは、それぞれのメニューにおいて支給要件や対象となる労働者、助成額・助成率について解説します。

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【人材開発支援助成金(人材育成支援コース)】1.人材育成訓練

人材育成訓練とは、職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を、事業主もしくは事育業主団体などが実施する場合の助成メニューです。

支給要件

助成金を支給されるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • OFF-JTにより実施される訓練であること(事業内訓練または事業外訓練)
  • 実訓練時間数が10時間以上であること
  • OFF-JTをオンラインで実施する場合、テレワーク勤務を制度として導入したうえで、労働協約または就業規則に定めること

対象となる労働者

対象となる労働者は、被保険者と有期契約労働者のどちらを対象とした訓練かどうかにより異なります。

【被保険者(有期契約労働者などを除く)を対象とする訓練の場合】

  • 助成金を受けようとする事業所または事業主団体等が実施する訓練等を受講させる事業主の事業所において、被保険者であること
  • 訓練実施期間中において、被保険者(有期契約労働者等を除く)であること
  • 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載された被保険者であること
  • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること

【有期契約労働者などを対象とする訓練の場合】

  • 事業所において、従来から雇用されている有期契約労働者等または新たに雇い入れられた有期契約労働者等であること
  • 訓練期間中において有期契約労働者等であり、訓練の終了日または支給申請日において、被保険者であること
  • 正規雇用労働者などとして雇用することを予定して雇い入れられた労働者ではないこと
  • 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載された有期契約労働者などであること
  • 人材育成訓練の趣旨及び内容を理解している者であること(育児休業中訓練である場合を除く)
  • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること

助成額・助成率

人材育成訓練の助成額・助成率は以下のとおりです。

対象労働者 経費助成 経費助成への加算措置 賃金助成
(1人1時間あたり)
賃金助成への加算措置
雇用保険被保険者(有期契約労働者などを除く。) 45%
(30%)
+15% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
有期契約労働者など 60% +15%
有期契約労働者など→正規雇用労働者などに転換した場合 70% +30%

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

加算措置とは、すべての対象労働者に対して、要件を満たす賃上げまたは資格等手当を支払った日の翌日から起算して5か月以内に割り増し分の支給申請をした場合に、加算措置が適用されます。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

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【人材開発支援助成金(人材育成支援コース)】2.認定実習併用職業訓練

認定実習併用職業訓練とは、訓練開始前に厚生労働大臣の認定を受けた、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練である実習併用職業訓練(認定実習併用職業訓練)を実施し、ジョブ・カードによる職業能力の評価を実施した場合の助成メニューです。

厚生労働大臣の認定要件

主な厚生労働大臣の認定要件を以下にまとめました。

  • 訓練対象者が15歳以上45歳未満の者であること
  • 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
  • 総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
  • 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
  • 訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1 「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下の要件をすべて満たすことが必要です。

  • 「1.雇用してから3か月以内である労働者」「2.大臣認定の申請前にすでに雇用されている短時間等労働者、かつ同一の事業主において通常の労働者に3か月以内に転換した者」「3.すでに雇用している被保険者」のいずれかに該当する15歳以上45歳未満の労働者であること
  • 上記対象者1のうち新規学卒予定者以外の者、上記対象者2.3の場合、キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを交付されること
  • キャリアコンサルティングの中で、認定実習併用職業訓練への参加が認められること
  • 事業所において、被保険者であること
  • 訓練実施期間中において、被保険者であること
  • 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載された被保険者であること
  • OFF-JTを受講した時間数が実訓練時間数の8割以上、OJTを受講した時間数が総訓練時間数のうちOJT部分の時間数の8割以上であること

助成額・助成率

認定実習併用職業訓練の助成額・助成率は以下のとおりです。

対象労働者 経費助成 経費助成への加算措置 賃金助成
(1人1時間あたり)
賃金助成への加算措置 OJT実施助成
(1人1コースあたり)
OJT実施助成への加算措置
雇用保険被保険者 45%
(30%)
+15% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
20万円
(11万円)
+5万円
(+3万円)

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

加算措置とは、すべての対象労働者に対して、要件を満たす賃上げまたは資格等手当を支払った日の翌日から起算して5か月以内に割り増し分の支給申請をした場合に、加算措置が適用されます。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

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【人材開発支援助成金(人材育成支援コース)】③有期実習型訓練

有期実習型訓練とは、正社員経験が少ない有期契約労働者などを対象に、正規雇用労働者などへの転換を目指すOFF-JTと適格な指導者によるOJTを組み合わせて実施する助成メニューです。

支給要件

助成金を支給されるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
  • OFF-JTの実訓練時間数が10時間以上であること
  • 訓練実施期間が2か月以上であること
  • 総訓練時間が6か月当たりの時間数に換算して425時間以上であること
  • 総訓練時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
  • 訓練終了後にジョブ・カード「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下の要件をすべて満たすことが必要です。

  • 助成金を受けようとする事業所において、「従来から雇用されている有期契約労働者など」または「新たに雇い入れられた有期契約労働者など」であること
  • キャリアコンサルタントなどにより、職業能力形成機会に恵まれなかった要件※に該当する者として事業主が実施する有期実習型訓練に参加することが必要と認められ、ジョブ・カードを作成した者
    (※過去5年以内におおむね3年以上通算して正規雇用されたことがない者であることなどの要件を満たす)
  • 正規雇用労働者等として雇用することを予定して雇い入れられた者ではないこと
  • 事業主が実施する有期実習型訓練の趣旨、内容を理解している者であること
  • 事業所において、訓練の終了日または支給申請日に雇用保険被保険者であること
    訓練実施期間中において、有期契約労働者などであること
  •  職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載のある有期契約労働者などであること
  • OFF-JTを受講した時間数が実訓練時間数の8割以上で、OJTを受講した時間数が総訓練時間数のうちOJT部分の時間数の8割以上であること
  • 他の事業主が実施した公共職業訓練、求職者支援訓練、実習併用職業訓練または有期実習型訓練を修了後6か月以内の者でないこと
  • 同一の事業主が実施した公共職業訓練、求職者支援訓練、実習併用職業訓練または有期実習型訓練を修了した者でないこと

助成額・助成率

有期実習型訓練の助成額・助成率は以下のとおりです。

対象労働者 経費助成 経費助成への加算措置 賃金助成
(1人1時間あたり)
賃金助成への加算措置 OJT実施助成
(1人1コースあたり)
OJT実施助成への加算措置
有期契約労働者など 60% +15% 760円
(380円)
+200円
(+100円)
10万円
(9万円)
+3万円
有期契約労働者を正規雇用労働者などに転換した場合 70& +30%

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

加算措置とは、すべての対象労働者に対して、要件を満たす賃上げまたは資格等手当を支払った日の翌日から起算して5か月以内に割り増し分の支給申請をした場合に、加算措置が適用されます。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

まとめ

この記事では、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)について解説しました。

人材育成を行う際には、人材開発支援助成金を活用することで、かかる経費を低減できます。ただし、訓練メニューにより支給要件や助成額などが異なるため、よく確認することが大切です。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。