キャリアアップ助成金とは、非正規雇用者などのキャリアアップを促進する取り組みを実施した事業主を支援する制度です。人材育成が急務となっている企業にとっては、キャリアアップ助成金を活用できれば、キャリアアップにかかる負担を低減しつつ人材育成を実現できる非常に有効な制度です。

しかし、受給金額の大きさから不正に受給しようとする企業があるのも事実です。「少しウソをついても良いだろう…」と軽い気持ちで書類に虚偽の内容を記載するなどの不正をしてしまうと、思った以上のペナルティを受けることとなります。

そこで、この記事ではキャリアアップ助成金の不正受給の実態や不正受給が発覚する理由を解説します。また、不正受給した場合のペナルティについても詳しく紹介しますので、ぜひご覧ください。

キャリアアップ助成金についてはこちらをご覧ください。
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キャリアアップ助成金の不正受給件数

キャリアアップ助成金の不正受給件数を検査しているのは、各都道府県の労働局、及び会計検査院という機関です。不正受給が発覚した件数は、令和3年度は22件で支給額は4,300万円、令和4年度は5件で支給額は399万円でした。

キャリアアップ助成金の要件を満たしていないにもかかわらず、申請内容を偽り、支給を受けていたという事例が多くあります。また、事業主に代わって代理人が支給申請手続きを行った場合にも、不正受給につながってしまった事例もあるようです。

参考:会計検査院「令和3年度決算検査報告」
参考:会計検査院「令和4年度決算検査報告」

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キャリアアップ助成金の不正受給が発覚する理由

それでは、なぜキャリアアップ助成金の不正受給が発覚するのでしょうか。ここでは不正受給が発覚する4つの理由を解説します。

提出書類と実情の照合が行われる

不正受給ケースに多いのが、実情では要件を満たしていないのに申請書類を偽って申請するケースです。

例えば、「昇給の要件を満たしたように見せかけるために、実際には支給していない手当を支給したかのように賃金台帳に記載した」「時間外労働を行っていないように見せかけるために、実態と異なる始業・終業時刻を出勤簿に記載した」などの事例が挙げられます。

そのため、申請書類と実情に矛盾がないかどうかを厳密な書類確認と実地調査が行われます。

事業所の訪問による抜き打ち調査が行われる

実地調査は都道府県の労働局により、事業所の訪問により行われます。予告なく抜き打ちで行われる事もあります。調査では助成金の要件にかかわる出勤簿や賃金台帳などの原本のほか、それらを裏付ける税務・会計に関連する書類提出が求められます。

実地調査を拒否した場合や、支給申請時に提出した書類と実地調査の結果に矛盾や不整合があった場合、助成金は支給されず、既に受給している場合は返還を求められます。

従業員に聞き取り調査が行われる

実地調査では、書類の提出だけでなく従業員への聞き取りによる事実確認も行われます。

一見、書類上に整合が取れているようであっても、社員への聞き取りにより矛盾や取り組みの不備が発覚します。

内部告発する仕組みもある

キャリアアップ助成金は、対象労働者、給与支給担当者、その他、多数の人員が関係することがありますが、。その関係者、又は関係者の知人による内部告発により不正受給が発覚することもあります。

なお、労働局では、ホームページ等により情報提供の呼びかけ及び通報の受付を行っています。

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キャリアアップ助成金を不正受給した場合のペナルティ

それでは、キャリアアップ助成金を不正受給した場合にはどのような罰則があるでしょうか。ここでは、不正受給した場合のペナルティを解説します。

助成金を受け取れず、事業者名が公表される

まず、当然ですが助成金を受け取ることはできません。審査に通過したあとであっても、不支給となります。

また、労働局やハローワークにおいて、不正受給をしたとして事業者名が公表されます。公表されるのは、以下の内容です。

  • 会社名
  • 代表者名
  • 会社の所在地
  • 事業の概要
  • 不正受給された助成金名
  • 不正受給の金額
  • 不正受給の内容

誰でも情報を閲覧できるようになるため、取引先や消費者、就職者などあらゆるステークホルダーに知られることになります。その結果、事業継続が難しくなる可能性もあるでしょう。

助成金の返還と違約金の支払い

助成金の受給後に不正が発覚した場合には、全額返金しなければなりません。

それだけでなく、ペナルティとして受給日の翌日~返還の終了日までの期間における年3%の延滞金と返還額の20%の違約金が請求されます。

5年間、雇用関係の助成金を受給できなくなる

キャリアアップ助成金を不正受給すると、その後5年間は雇用関係助成金を受給できなくなります。

雇用関係助成金には、キャリアアップ助成金以外にもトライアル雇用助成金や人材開発支援助成金、両立支援等助成金などさまざまな助成金があります。これらの助成金すべてで受給が不可になるのです。

そのため、企業が自社の人材開発や職場環境の改善、人材育成などの取り組みを行い、各助成金の要件を満たしたとしても助成金制度を利用できないため、事業活動の痛手となるでしょう。

刑事告発される場合がある

キャリアアップ助成金の不正受給により、実際に逮捕、書類送検のうえ、刑事告発された事例があります。罪状には例えば、詐欺罪や有印私文書偽造罪などが挙げられます。

逮捕、送検され、有罪が確定すれば、企業だけでなく代表者や申請に関わった担当の個人の信用にも、ずっとつきまとう問題となります。

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キャリアアップ助成金で不正受給しない方法

キャリアアップ助成金で不正受給してしまうと、その後の事業活動に悪影響を及ぼします。

決して不正受給しないようにしましょう。ここでは、不正受給しない方法を紹介します。

信用できるプロの助成金コンサルに依頼する

不正受給しないためには、助成金について深い理解をもっていることが欠かせません。そのため、信頼できるプロに申請サポートを依頼することが最もおすすめできる方法です。

ただし、実際に代理人による申請でも不正受給は発生しているため、信頼できる代理人かどうかを見極めることが重要です。
信頼性を確認するには、助成金コンサルのホームページや担当者から、これまでの実績を確認しましょう。多くの企業の助成金申請に携わっている場合には一定の信頼ができるでしょう。

また、助成金コンサルを依頼することで、申請にかかる手間も大きく削減できるでしょう。コンサルによっては助成金申請に向けた経営のアドバイスをしてもらえることもあります。そのため、何かしら取り組みを始める際から、助成金コンサルに依頼しておくことで、ムダのない経営戦略を立てることにもつながるでしょう。

助成金コンサルの選び方の詳細は以下の記事で解説しています。
関連記事:助成金申請はコンサルに依頼すべき?サポート内容や費用相場、選び方を解説

まとめ

この記事では、キャリアアップ助成金の不正受給について解説しました。

キャリアアップ助成金にかかわらず、不正受給をした場合には相応のペナルティが待っています。決して行ってはいけません。
場合によっては、申請サポートを依頼した代理人に不正受給を提案されることもあります。しっかりと知識をもっておくことで、そうした不正な提案を受けた際にも断れるでしょう。

はじめて助成金を利用する場合には、信頼できるコンサルティング業者に申請サポートを依頼することがおすすめです。まずはプロのコンサルティング業者が行う無料診断を受けてみてはいかがでしょうか。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。