障がい者雇用は、企業の社会的責任の一環としてだけでなく、社内の多様性を高め、チームワーク強化、企業イメージの向上などにつながる可能性があります。しかし、障がい者採用後の教育・訓練、スキルアップのフォローに悩む企業も多くあるでしょう。

その際に活用できる助成金に「障害者能力開発助成金」があります。障がい者のスキルアップのための職業訓練にかかる費用負担を軽減できるため、多くの企業が本助成金を活用しています。

そこで、この記事では障害者能力開発助成金の概要や支給要件、助成額について解説します。

障害者能力開発助成金とは

障害者能力開発助成金とは、「障がい者能力開発訓練事業を行うための施設・設備の設置や整備または更新を行う事業者」もしくは「障がい者能力開発訓練事業を行う事業者」に対して、その費用の一部を支給する制度です。

障害者能力開発助成金は、取り組み内容によって以下の2つの種類に区分されています。

  • 第1種(施設設置費)助成金
  • 第2種(運営費)助成金

2つの種類の詳細は、のちほど詳しく解説します。

なお、本制度は「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」が令和6年度を境に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行う障害者雇用納付金制度に基づく助成金に移管したものです。
そのため、障害者能力開発助成金の助成対象や助成額・助成率は「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」から引き継いだ内容になっています。

対象となる事業主

第1種・第2種共通の障害者能力開発助成金の対象事業主の主な要件をまとめました。

  • 「事業主または事業主団体」「専修学校、各種学校を設置する学校法人または法人」「社会福祉法人」「その他障がい者の雇用促進にかかる事業を行う法人」のいずれかに該当すること
  • 能力開発訓練施設等の設置・整備または更新を行った後、障害者職業能力開発訓練を5年以上継続して行う事業主などであること
  • 実施する障害者職業能力開発訓練において、就職支援責任者の配置を行う事業主などであること
  • 訓練対象障害者の個人情報を取り扱う際に、訓練対象障害者の権利利益を侵害することのないよう管理運営を行うものであること

参考:厚生労働省「障害者職業能力開発コース」P304

対象となる障がい者

第1種・第2種共通の障害者能力開発助成金の対象となる障がい者の主な要件をまとめました。

  1. 公共職業安定所に求職申し込みを行った障がい者
  2. 障害者能力開発訓練の受講が必要であると公共職業安定所長が認める以下のいずれかの障がい者
  • 身体障がい者
  • 知的障がい者
  • 精神障がい者
  • 発達障がい者
  • 難病などにかかっている方
  • 高次脳機能障がいのある方

対象となる訓練

第1種・第2種共通の障害者能力開発助成金の対象となる障がい者能力開発訓練は、以下の厚生労働大臣が定める教育訓練の基準に適合している必要があります。

運営管理者
  • 障がい者の能力開発や向上に関する教育訓練について必要な知識を有していること
  • 厚生労働大臣が定める基準に適合する教育訓練の事業、または当該事業と同等と認められる教育訓練の事業にかかる経験をおおむね5年以上有すること
訓練期間 教育訓練の期間は、6か月以上2年以内であること
※訓練期間は、実施しようとする訓練の目標、カリキュラムの内容などに整合性を有するものであること
訓練時間
  • 訓練期間が6か月以上の場合、700時間(1日5~6時間)を標準とすること
  • 訓練コースは、訓練全体の時間数のうち、実技はおおむね5割以上と実技を中心とした訓練カリキュラムであること
訓練科目 労働市場などの状況から判断して雇用機会の大きいものであって、対象とする障がい者の職業に必要な能力を開発し、および向上することが必要なものでなければならないこと
訓練施設以外の実習 訓練施設以外で実習を行う場合は、以下の要件をすべて満たしていること

  • 実際に営業活動などを行っている事業所において、雇用関係を結ばずに行う実習形式による実践的な訓練内容であること
  • 実習先事業所において、実習指導者、訓練評価者および管理責任者を配置していること
  • 安全衛生に関する技能およびこれに関する知識の習得を目的とした実習を含むものであること
  • 安全衛生その他の作業条件について、労働基準法および労働安全衛生法の規定に準ずる取扱いをするものであること
訓練人員 教育訓練を行う1単位の受講者の数は訓練科目ごとにおおむね10人とすること
※身体障害者(重度身体障害者を除く。)以外の障害者にあってはおおむね5人~10人とすること
訓練担当者 教育訓練の訓練科目ごとに、受講者おおむね5人につき1人の専任の訓練担当者を置かなければならないこと
※受講者が5人を超えるときは2人以上(助手を含む)の配置を標準とすること
訓練施設など 障がいの種類などに十分配慮して、その教育訓練の目的を実現するために必要な施設および設備を備えたものであること
安全衛生
  • 受講者の安全衛生について、十分な配慮すること
  • 災害が発生した場合の補償のために、必要な措置を講ずること
費用 教科書やその他の教材にかかる費用としてあらかじめ明示したものを除き、無料であること

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」

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障害者能力開発助成金(第1種:施設設置費)

ここでは、障害者能力開発助成金(第1種:施設設置費)の支給要件や助成率・助成限度額について解説します。

支給要件

障害者能力開発助成金(第1種:施設設置費)の支給要件は、障がい者能力開発訓練事業を行うための施設などの設置・整備、更新を行うことです。

以下に、対象となる施設についてまとめました。

  • 能力開発訓練施設:教室、実習室など
  • 管理施設:能力開発訓練の事業を管理するための施設
  • 福祉施設:能力開発訓練受講者寄宿舎、食堂などの給食施設、託児施設など
  • 能力開発訓練施設用設備:上記の施設の目的を達成するための設備

助成率・助成上限額

障害者能力開発助成金(第1種:施設設置費)の助成率・助成上限額を以下にまとめました。

助成率 助成上限額
対象費用の3/4
  • 5,000万円
  • 施設または設備の更新は1,000万円
Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

障害者能力開発助成金(第2種:運営費)

ここでは、障害者能力開発助成金(第2種:運営費)の支給要件や助成率・助成限度額について解説します。

支給要件

障害者能力開発助成金(第2種:運営費)の支給要件は、厚生労働大臣が定める教育訓練の基準に適合し、運営管理者、訓練期間などの各種要件を満たす障がい者能力開発訓練事業などの運営を行うことです。

助成率・助成上限額

障害者能力開発助成金(第2種:運営費)の助成率・助成上限額を以下にまとめました。

助成率 助成上限額 支給期間
対象費用の3/4
※重度障がい者などが対象の場合は4/5
対象障がい者1人あたり運営費用額月16万円まで
※重度障がい者1人あたり月17万円まで
認定された訓練期間

また、さらに重度障がい者などが就職した場合には、1人あたり10万円を乗じた額を請求に応じて支給されます。

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障害者能力開発助成金の申請の流れ

障害者能力開発助成金の申請の流れをまとめました。

  1. 高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部に認定申請書を提出する
  2. 申請書をもとに審査が行われる
  3. 審査の結果が通知される(認定もしくは不認定決定通知)
  4. 認定後、支給要件となる措置を実施し、施設や設備、運営にかかる費用を支払う
  5. 支部に支給申請書を申請する
  6. 支給申請書をもとに請求内容の審査が行われる
  7. 審査の結果が通知される(支給もしくは不支給決定通知)
  8. 指定した銀行口座に助成金が振り込まれる

認定申請・支給請求のどちらにも期日が設定されています。高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページを確認するか、助成金の申請サポートを行うコンサルタントに依頼するかをして、申請期限を必ず守るようにしてください。

まとめ

この記事では障害者能力開発助成金の概要や支給要件、助成額について解説しました。

障害者能力開発助成金は、障がい者の能力開発・向上を行う事業主などに向けて、施設設置費や運営費の一部を助成する制度です。申請することで、事業の費用負担を軽減できるでしょう。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。