中小企業が事業の拡大や成長を目指すためには、新商品・サービスの開発、販路拡大、生産性向上にかかる投資が不可欠です。しかし、十分な資金の確保が難しい企業も多いでしょう。
こうした中小企業を支援するために2025年から新設された「中小企業成長加速化補助金」が注目を集めています。一定の条件を満たす必要はあるものの、受給できれば事業の拡大や成長のための取り組みを実現できるでしょう。

そこで、この記事では、中小企業成長加速化補助金の概要や支給対象、補助率・補助上限額、審査基準をわかりやすく解説します。

中小企業成長加速化補助金とは

中小企業成長加速化補助金とは、売上高10億円以上100億円未満の中小企業のうち、将来的に「売上100億円超」を目指すと宣言した企業を対象に、賃上げの推進、外需獲得、地域経済への波及効果をもたらすような1億円以上の大胆な投資を支援する制度です。

多くの中小企業は、物価高や人手不足などの経営課題に直面しています。そのため本制度では、中小企業全体の「稼ぐ力」の底上げや、地域にインパクトのある成長企業を創出することを目的としています。

対象となる事業者

中小企業成長加速化補助金の対象となる事業者は、「中小企業等経営強化法に規定する中小企業者に該当する事業者」です。

一般的な会社または個人の場合、以下の表に該当することが求められます。

業種 定義(以下のどちらにも該当すること)
資本金額または出資総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業、 その他 3億円以下 300人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) 3億円以下 900人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下

参考:100億企業成長ポータル|中小企業成長加速化補助金(公募要領)

この他、企業組合や事業協同組合、水産加工業協同組合、商工組合、商店街振興組合なども該当しますが、定義の詳細については公募要領をご覧ください。

助成金申請を完全サポート 助成金申請を完全サポート

中小企業成長加速化補助金の支給要件

中小企業成長加速化補助金の主な支給要件には、以下の4つの要件が挙げられます。

  • 日本国内で補助事業を実施すること
  • 補助対象経費のうち、投資額が税抜1億円以上であること
  • 「100億円宣言」を行うこと
  • 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画を策定し、実施すること

ここでは、4つの要件のうち「100億円宣言を行うこと」「一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画を策定し、実施すること」について解説します。

100億宣言を行うこと

100億宣言とは、中小企業が「売上高100億円」という目標を立て、実現に向けた取り組みを行うことを宣言するものです。

宣言の公表は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するポータルサイトに掲載することで適用されます。ただし、どの企業でも100億円宣言ができるとは限らず、主に以下のような事項を遵守することが求められます。

  • 売上高10億円以上100億円未満の中小企業
  • 役員に暴力団員などがいないこと
  • 暴力団員などが企業の事業活動を支配していないこと
  • 風俗営業などの事業を行っていないこと
  • 公序良俗に反する行為や法令違反を行っていないこと

100億円宣言を行うことで、企業は補助金・税制の活用や経営者ネットワークへの参加などが可能になります。
中小企業成長加速化補助金を申請するうえでも、100億円宣言が必須であるため、まずは公募要領を確認しましょう。直近3年分の決算書類を添付し、申請様式に「企業概要」「売上高100億円実現の目標と課題」「売上高100億円実現に向けた具体的措置」などを記入する必要があるため、早めに取り組むことが大切です。

賃金要件を満たすこと

賃金要件とは、補助事業完了後3年の「給与支給総額」または「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が、基準率(補助事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率)を超えることを求めた要件です。

具体的には、応募申請時に基準率以上の目標を掲げ、その目標を従業員などに表明したうえで、目標を達成することが必要です。応募申請時に、「給与支給総額」と「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」のどちらを目標に掲げるかを選択できます。

交付決定までに目標を従業員などに表明できなかった場合、または目標未達の場合には、補助金の返還となる可能性があります。

参考:100億企業成長ポータル|中小企業成長加速化補助金(公募要領)

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

中小企業成長加速化補助金の対象経費・補助率

ここでは、中小企業成長加速化補助金の対象経費や補助率・補助上限額を解説します。

対象経費

中小企業成長加速化補助金の主な補助対象経費について以下にまとめました。

・建物費
補助事業の実施に不可欠と認められる建物の建設。増築、改修、中古建物の取得にかかる経費のことです。単価100万円(税抜)以上のものに限られます。

例えば、事務所や生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫などが対象経費として挙げられます。ただし、土地代や建物における建築物(門、堀、フェンスなど)、撤去・解体費用などは対象外となります。

・機械装置費
補助事業のために使用される「機械装置本体にかかる経費」や「機械装置の導入と一体で行う作業にかかる経費」のことです。機械装置本体にかかる経費は、単価100万円(税抜)以上のものに限られます。

例えば、機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具)、それらの導入と一体で行う改良・修繕、据付、運搬費などが対象経費として挙げられます。ただし、構築物や船舶、航空機、車両および運搬具などは対象外となります。

・ソフトウェア費
補助事業のために使用される「ソフトウェア・システムなどの本体にかかる費用」や、「ソフトウェア・システムの導入と一体で行う作業にかかる経費」のことです。ソフトウェア・システムなどの本体にかかる経費は、単価100万円(税抜)以上のものに限られます。

例えば、専用ソフトウェア・情報システムなどの購入・構築、借用、クラウドサービス利用費、それらの導入と一体で行う改良・修繕費などが挙げられます。ただし、パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用は対象外となります。

・外注費
補助事業の遂行に必要な加工や設計、検査などの一部を外注(請負・委託)する場合の経費が該当します。ただし、「外注費+専門家経費」の合計額は、「建物費+機械装置費+ソフトウェア費」の合計額未満に抑える必要があります。

また「事業計画の作成に要する経費」「外注先が機械装置の設備やシステムなどを購入する費用」、「外部に販売・レンタルするための量産品の加工を外注する費用」は対象外となります。

・専門家経費
補助事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費のことです。具体的には、専門家に依頼したコンサルティング業務や旅費などの経費が対象です。
ただし、「外注費+専門家経費」の合計額は、「建物費+機械装置費+ソフトウェア費」の合計額未満に抑える必要があります。

また、「事業計画の作成に要する経費」は対象外となります。

補助率・補助上限額

中小企業成長加速化補助金の補助率・補助上限額をまとめました。

補助率 補助上限額
1/2 5億円

参考:100億企業成長ポータル|中小企業成長加速化補助金(公募要領)

助成金申請を完全サポート 助成金申請を完全サポート

中小企業成長加速化補助金のポイントとなる審査基準

中小企業成長加速化補助金では、主な審査基準として「経営力」「波及効果」「実現可能性」の3つを公募要領で公開しています。ここでは、それぞれの審査基準について解説します。

経営力

経営力は、以下のような観点から審査されます。

  • 中長期的なビジョンや計画をもっているか
  • 外部環境や内部環境を分析したうえで、論理的な事業戦略を構築しているか
  • 適切な成果目標を立てたうえで、効率的に管理する体制が構築されているか

具体的なポイントとしては、「今後5年程度における売上高成長率と、その実現に向けた事業戦略が適切か」「企業の収益規模に応じたリスクを見込んだ投資となっているか」などが確認されます。

波及効果

波及効果は、以下のような観点から審査されます。

  • 利益を賃金として従業員へ還元する賃上げ計画が具体的かつ妥当か
  • 域内仕入れの拡大や地域における価値創造などにつながる事業か
  • 地域のモデル企業としての取り組みを進めているか

具体的なポイントとしては、「ものづくりの高度化やイノベーションの創出など産業競争力を強化し新たな価値創造に資する事業か」「下請取引先等に対する適切な取引姿勢、女性活躍や仕事と子育ての両立などに配慮した職場環境整備などを行っているか」などが確認されます。

実現可能性

実現可能性は、以下のような観点から審査されます。

  • 経営を実施可能な経営体制が構築されており、確実に効果が得られると見込まれるか
  • 財務状況が十分に確保されているか
  • 金融機関のコミットメントが得られているか

具体的なポイントとしては、「ローカルベンチマークによるスコアリング」などが確認されます。

参考:100億企業成長ポータル|中小企業成長加速化補助金(公募要領)

まとめ

この記事では、中小企業成長加速化補助金の概要や支給要件、補助率・補助上限額、審査基準を解説しました。

中小企業成長加速化補助金は、中小企業全体の「稼ぐ力」の底上げや地域に成長企業を創出することを支援します。機械装置やソフトウェア・システムなどの投資のための資金調達が可能となるため、将来的に売上高100億円を目指したいと考えている企業は、本制度を活用すると良いでしょう。

その際には、プロのコンサルタントに申請サポートを依頼がおすすめです。採択される確率を高められるため、まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
無料相談はこちら

助成金申請を完全サポート 助成金申請を完全サポート
弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。