現在「働き方改革」が国家的な課題となっています。世界一勤勉ともいわれる日本人ですが、労働環境を見てみると必ずしも世界のトップレベルではないのが現実です。そのような状況下で「多様な働き方をもっと認めよう」というのが「働き方改革」のテーマでもあります。

多様な働き方を認めることは、政府が掲げる「一億総活躍社会」を実現する近道ともいえるでしょう。これまで、企業がどのような働き方を導入してきたのか、いくつかの事例を紹介します。

多様な働き方を導入する理由

少子高齢化に伴い、労働力人口が著しく減少している昨今、どの企業にとっても人材確保は深刻な問題です。しかし、これまでは結婚、出産、介護などを機に退職せざるを得ない企業も少なくありませんでした。

離職者の後任がなかなか見つからない時代です。それぞれのライフスタイルに合わせた多様な働き方を認めることで離職を阻止したい……と、考える企業も増えつつあります。多様な働き方の導入は、労働者のワーク・ライフ・バランスを整え、企業にとっては人件費節約になるといっても過言ではありません。まさに、互いにとってWin-Winの効果を期待できるといえるでしょう。

多様な働き方を早くから導入し、成功をおさめている事例としては以下のような企業の取り組みがあります。

イケア・ジャパン株式会社

イケア・ジャパンでは次のような働き方改革を2014年から行っています。

  • 7割近くを占めていたパートタイマーを「短時間勤務の正社員」にする
  • 「短時間勤務の正社員」から「フルタイムの正社員」になる機会を設ける
  • 全社員を「期間の定めがない無期雇用」にする

このような改革によって、それまで3割だった離職率を半減させることに成功しました。また、全員が正社員になったことでコスト意識や責任感を持つようになるなど、労働者のモチベーションアップにもつながっています。

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味の素株式会社

社長が短時間労働で高い生産性を上げている海外の事例を目の当たりにし、次のような改革がスタートしました。

  • 一日の労働時間を短縮
  • 管理職を含めた社員全員の基本給を1万円アップして残業時間短縮
  • 会議資料をデータベース化してタブレット端末で閲覧するようにして、資料作成、コピーなどに費やしていた時間をカット

これにより、これまで2時間かかっていた会議を1時間15分に短縮することに成功。その他、全体的に労働時間が短縮され、子育て中の社員からも「保育園の送迎に余裕ができた」と好評です。

エヌビーエス株式会社

福岡でエンジニアリング事業を行う中小企業ですが、以下のような先進的な働き方改革を行っていることで知られています。

  • 育児などを理由に退職した社員、定年退職した社員を再雇用する制度を導入
  • どの部署の社員でも育児休暇を取りやすくするため、全社員がすべての業務に精通するよう、2年ごとに業務内容のローテーションを行う

全社員が会社全体の業務を理解できるようになり、著しく仕事の効率化が進みました。また、再雇用制度により高い能力を持つ社員を失わずにすむようになったのは、社員数が少ない中小企業にとって大きな意味があるといえるでしょう。

多様な働き方導入に役立つ助成金

「多様な働き方を導入したいが、コストがかかるし……」とためらっているならば、助成金を使うのもひとつの方法です。たとえば、厚生労働省では次のような助成金を用意しています。

時間外労働等改善助成金

生産性を維持しながら時間外労働を短縮したいと考えている中小企業・小規模事業者が利用できます。多様な働き方に対する職場意識の改善、テレワークの導入などに活用可能です。1企業あたり年間25万円~500万円までを上限としています。

業務改善助成金

設備投資をして生産性を向上させ最低賃金をアップさせたい中小企業・小規模事業者に支給されます。助成の上限額は50万円~100万円です。賃金を下げずに働き方改革をしたいと考えている企業におすすめです。

キャリアアップ助成金

非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇改善したりしたいと考えている企業を対象としています。多様な働き方を認めることで労働者の意欲、能力を向上させ、優秀な人材を確保して業績を伸ばしたい企業は利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

多様な働き方を導入することで生産性向上に成功している企業も少なくありません。働き方改革は業務効率化、従業員のモチベーション向上がなければ遂行できないことです。それに伴って生産性がアップするのは当然のことともいえます。

しかし、多様な働き方を認めるには設備投資、従業員の意識改革教育などコストがかかるのも事実です。「取り組みたくても費用がない」という企業もあるでしょう。そんな時には助成金を使うのもひとつの方法です。ぜひ、多様な働き方を導入してみてはいかがでしょうか。

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弊社担当のご紹介
佐藤亜樹
佐藤亜樹(助成金コンサルタント)
入社7年目。採用コンサルティングを担当後、中小企業の助成金申請のサポートに従事する。2018年からは助成金を活用した働き方改革関連法に対応するノウハウを提供するセミナーを開催するなど、精力的に活動中。