人材不足に悩む企業が多い中、従業員の柔軟な働き方と企業の生産性向上を両立させる「働き方改革」の重要性はますます高まっています。そのため、厚生労働省では、時間外労働の削減や有給休暇の取得を促進し、働き方改革の実現を後押しする制度として「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」を制定しています。
ただし、「勤務時間を削減したら資金援助してもらえる」という制度ではありません。正しく理解したうえで、計画的に事業に取り組まなければ、不支給になる可能性があります。
そこで、この記事では働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の概要や対象事業主、支給要件、助成金額についてわかりやすく解説します。
働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金とは、「生産性を高めながら、働き方改革に向けた取り組みを行う中小企業事業主・小規模事業主を対象に、その実施にかかる費用の一部を助成する制度」です。
取り組み内容に応じて、以下の4つのコースが設置されています。
・業種別課題対応コース
生産性を向上させ、時間外労働の削減や週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入や医師の働き方改革推進に向けた環境整備に取り組む、建設業・運送業などの特定の業種に該当する中小企業事業主を支援するコース
・労働時間短縮・年休促進支援コース
生産性を向上させ、時間外労働の削減や年次有給休暇・特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するコース
・勤務間インターバル導入コース
勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業事業主を支援するコース
・団体推進コース
中小企業事業主の団体やその連合団体が、その傘下の事業主のうち、労働者を雇用する事業主の労働者の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引き上げに向けた取組を実施した場合に、その事業主団体等に対して支援するコース
本記事では、このうち「労働時間短縮・年休促進支援コース」について詳しく解説します。その他のコースの支給要件や助成額などの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025年拡充予定】働き方改革推進支援助成金とは?各コースを徹底解説


労働時間短縮・年休促進支援コースの対象となる事業主
労働時間短縮・年休促進支援コースの対象となるのは、以下のすべてに該当する中小企業事業主です。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること
- 交付申請時点で、選択した成果目標の要件を満たしていること
- すべての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則などを整備していること
対象となる中小企業は、小売業で資本額5,000万円以下かつ従業員数50人以下、サービス業で5,000万円以下かつ100人以下、卸売業で1億円以下かつ100人以下に該当する場合に限定されます。また、その他の業種の場合は、3億円以下かつ300人以下が対象となる企業規模です。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説労働時間短縮・年休促進支援コースで設定必須の「成果目標」とは
労働時間短縮・年休促進支援コースを申請する際は、厚生労働省が定める「成果目標」を必ず設定しなければなりません。
また成果目標とは、助成対象となる取り組みを行った結果、「どのような労働環境改善を実現するか」を示す具体的な数値・制度目標であり、実際の改善効果が求められます。
労働時間短縮・年休促進支援コースでは、以下の3つのうち、1つ以上を選択して達成を目指す必要があります。
- 月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
- 年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入
- 時間単位の年次有給休暇制度と、交付要綱で規定する特別休暇を1つ以上新規導入
また、3つの成果目標に加えて、指定する労働者の時間当たりの賃金額を「3%以上」「5%以上」「7%以上」のいずれかに引き上げることを成果目標に加えることも可能です。


労働時間短縮・年休促進支援コースの対象となる取り組み一覧
労働時間短縮・年休促進支援コースの対象となる取り組みについてまとめました。以下のいずれか1つ以上を実施する必要があります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定などの作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
※研修には、勤務間インターバル制度に関するものや業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
また、長時間労働恒常化要件(自然災害などの外的要因によって労働時間の改善が難しい場合)に該当する場合には、「労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新」の対象となる経費が一部緩和されます。
労働時間短縮・年休促進支援コースの助成額
労働時間短縮・年休促進支援コースの助成額は、取り組みの実施にかかった経費の一部が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。
具体的には、以下のいずれか低い方の金額が助成額となります。
- 成果目標1から3の上限額および賃金加算額の合計額
- 対象経費の合計額×補助率3/4
※常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取り組みで6~9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
ただし、成果目標によって上限額が設定されており、時間外労働の設定時間によって金額が変わります。
- 成果目標1の上限額:50万~150万円
- 成果目標2の上限額:25万円
- 成果目標3の上限額:25万円
また、賃金額の引上げを成果目標に加えた場合の加算額は、指定した労働者の賃金引上げ数の合計に応じて、以下の表のとおり、上限額に加算されます。
※引き上げ人数は30人が上限
【常時使用する労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合】
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
---|---|---|---|---|
3%以上引上げ | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 1人当たり2万円 (上限60万円) |
5%以上引上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 (上限240万円) |
7%以上引上げ | 36万円 | 72万円 | 120万円 | 1人当たり12万円 (上限360万円) |
【時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合】
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
---|---|---|---|---|
3%以上引上げ | 12万円 | 24万円 | 40万円 | 1人当たり4万円 (上限120万円) |
5%以上引上げ | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 1人当たり16万円 (上限480万円) |
7%以上引上げ | 72万円 | 144万円 | 240万円 | 1人当たり24万円 (上限720万円) |
参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
さまざまな要素が複雑に設定されているため、「自社の助成金額がいくらになるのかわからない」という場合には、助成金コンサルタントに相談することがおすすめです。申請サポートだけでなく、取り組み内容についても経験豊富なプロの視点からアドバイスがもらえます。


まとめ
この記事では、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の概要や対象要件、助成額を解説しました。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、労働時間の短縮や年休取得促進に取り組む中小企業を支援する制度であり、計画的かつ確実な実行が求められます。申請には十分に支給要件を確認したうえで、漏れやミスがないように申請書類を準備する必要があります。
そこで、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントへの依頼がおすすめです。確実な受給を目指すためにも、まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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